お金の本質   索引  

                    

 第2回 お金の機能とは何か
    (世界戦略情報「みち」平成20年(2668)5月15日第272号)

「お金」という言葉をさまざまな意味や思いを込めて人は使う。「カネ」や「ゼニ」などといったぞんざいな単語をあえて用いて否定的なニュアンスを伝えるのもその一例である。
 これらは慣習的な呼称であり、経済専門用語では「貨幣」と呼ばれる。
辞書では貨幣を、例えば次のように定義している。
「商品の価値尺度や交換手段として社会に流通し、またそれ自体が富として価値蓄蔵を図られるもの。鋳貨・紙幣のほかに、当座預金などの信用貨幣を含めていう場合が多い。」(大辞泉)
「商品の交換価値を表し、商品を交換する際に媒介物として用いられ、同時に価値貯蔵の手段ともなるもの。歴史的には貝殻・布などの実物貨幣にはじまり、金銀が本位貨幣とされるようになり、現代では鋳貨・紙幣・銀行券が用いられている。」(大辞林)
 右に挙げた辞書の定義からもわかるように、貨幣は一般的に、@決済手段、A価値尺度、B価値貯蔵手段という三つの機能をもつとされている。
 @決済手段(支払手段)としての機能とは、広く社会で行なわれるさまざまな経済取引に際し、その取引の決済が貨幣の移転を通じてなされることを意味している。
 A価値尺度としての貨幣の機能とは、取引される多様な財やサービスの価格を円やドル等の貨幣の単位で表示することによって、それらの財やサービスの交換比率を統一的に表現することを可能にするものである。
B価値貯蔵手段としての貨幣の機能とは、人々が保有する財やサービスに対する購買力を将来へ持ち越すための手段として貨幣が役立つことを示している。
 以上の各機能について、さらにもう少し具体的に見てみることにしよう。
 @決済手段
 決済手段は、財の交換・流通にかかわる交換手段(購買手段)と支払手段とに分けることができる。
 交換手段(購買手段)は、お金の機能について考えるとき真っ先に思い浮かぶものであろう。
 貨幣が交換手段のはたらきをすることによって、貨幣が存在しなければ偶然にしか起こりえない、あるいはまったく起こりえないであろう広範かつ大規模、そして複雑な財の組合せの交換が貨幣によって媒介される。
 また、さまざまな関係から生ずる責務や債務を決済したり、それとは逆に人の歓心や労働奉仕、神聖性や人々の誉望を生じさせるために、貨幣が用いられることがある。
 この場合、貨幣は人と人の関係に直接関わり、はたらきかけることになる。
 信用売買や賃貸借契約から生じた債務の決済、納税、賠償、招宴、饗応、冠婚葬祭、賃金支払、供物・寄進など多様な場面で貨幣が用いられる。
「現物支払」という言葉があるように、一般の財がこうした目的で使用されることもあるが、通常は貨幣による支払が多用されている。
 支払手段とは,このようなかたちで貨幣が使用されることをいう。
 A価値尺度
 経済を構成している事物はそれぞれ何らかの評価を得て、経済を成り立たせる構成要素となっている。
 貨幣は事物それぞれが各人においてどのように評価されているかを表す共通のものさし・尺度として用いられ、社会的に評価を統合する手段となっている。
 財物の評価だけでなく、支払手段を通じてさまざまな人間関係の評価にも貨幣のものさしを用いる。
 こうした場合、貨幣は量的な尺度として用いられることが多いが、これと並行して、貨幣では評価できない、あるいは貨幣では手に入らないといったかたちで、質的な評価の尺度ともなる。
 また、交換や支払の場を通さないような、貨幣によって現実に尺度されることのない事物でも、貨幣による尺度は人々の観念作用に陰に陽にはたらいている。
 このように社会的評価のものさし=価値尺度として貨幣は使われる。
 B価値貯蔵手段
 天災や不慮の事故、外的侵入や内部対立などから起こる社会秩序の混乱、老後の不安などに対して、人々は財を備えおく。
 また、高価な財を手に入れるために貨幣を貯めておく。
 あるいは,人はこれといってはっきりした外的な目的もなく、ただ手元にもっていること自体に心理的な充足感を覚えるがゆえに、すなわち自己目的化して財を貯めおく。
 この貯めおかれる財は身の安全性や自由の証しであったり、達成感の印であったりする。
 これらを財の貯蔵と呼ぶが、貨幣は貯蔵されることのある財の中でも有力なものである。
 今日、貨幣と呼ばれるものは、ほとんどすべてが、これら三つの機能を併せもっている。
 以上、教科書的な説明で恐縮だが、お金の本質を検証するのに欠かせない前提なので是非抑えておきたかった。御寛恕下さい。