お金の本質   索引  

                    

 第15回 お金の功罪 4 ── 収奪システムの水先案内人
               (世界戦略情報「みち」平成20年(2668)12月15日第285号)

 マルグリット・ケネディ女史が指摘する「お金の機能に関する基本的な四つの誤解」の二つ目は、「お金を借りたときだけ利子を支払う」という考えである。
 借金さえしなければ利子を支払う必要はないと多くの人々は信じているが、これは思い違いだと彼女はいう。
 われわれが支払うすべての物価には利子部分が含まれているからだ。
 企業は通常、土地や建物、機械の購入などに必要な設備資金や製造販売に必要な原材料費、人件費、販売管理費などに必要な運転資金を、銀行からの借入、資本市場での社債や株式発行などで賄っている。
 企業はこれらの調達にかかる費用を利子または配当金の形で銀行や投資家、株主に支払うが、それをどこかから捻出しなければならない。
 そこで、彼らは商品やサービスの価格に利子部分を上乗せすることで、消費者であるわれわれに肩代わりさせているのだ。
 無借金企業の場合は借入に伴う利子を支払う必要はないように思える。
 しかし、事業資金に投入した自己資金を銀行預金や株式、投信、不動産などに投資した場合に得られたであろう逸失収益を利子として商品やサービスの価格に上乗せすることで、間接的に利子を支払っている。
 これは民間企業に限った話ではない。公益企業や特殊法人、国や都道府県、市町村などの地方公共団体はたいてい、銀行借入や国債や地方債の発行で資金調達しているためだ。


 上に掲げた図3は西ドイツのアーヘン市における公共料金に占める利子支払いコストの、四つの具体例を示している。
 1のゴミ回収事業では一一〇リットルのゴミの回収費用の一九四マルクを一〇〇%とした場合、減価償却費、修理費、人件費、雑費が八八%、利子支払いコストが一二%を占める。
 2の上水道事業では一立方メートルの使用料金一三六マルクを一〇〇%とした場合、減価償却費三〇%、人件費一八%などに対し、利子支払いコストは三八%となっている。
 3の下水・汚水処理事業では一立方メートルの使用料金一・八七マルクを一〇〇%とした場合、減価償却費二七%、修理費一九%であるが、利子支払いコストは四七%かかる。
4の公共住宅事業では一平方メートルの使用料金である一三・四〇マルクを一〇〇%とした場合、減価償却費の一一%などに対し、利子支払いコストはなんと七七%にも及ぶ。
 価格における利子部分の絶対額は、借入額とそれに対する利子によって決まる。一方、価格における利子部分の相対額は、物価に含まれる利子以外の費用、特に人件費や減価償却費によって決まる。
 ゴミ処理事業のように労働集約的な生産やサービスでは価格における利子の割合はさほど高くない。
 ところが、設備投資のコストが高い上水道事業や下水・汚水処理事業などでは、必然的に利子は高めになる。
 資本集約的な公共住宅事業にいたっては、利子の割合が価格の四分の三を超えてしまう。
 平均すれば、われわれは日常生活に必要な商品やサービスの価格のうち、三〇%から五〇%もの利子または資本コストを支払っているという。
 したがって、もし有利子金融をやめて別の有効な流通メカニズムを採用すれば、多くの人々は所得が二倍になる。あるいは、現在の生活水準を維持するには、いまよりはるかに少ない労働時間で済むという。
 われわれは、お金の貸し借りさえしなければ有利子金融という過酷な収奪システムとは無縁の人生が送れる、と考えてしまいがちだ。利子のもつ影響があまりにも巧妙に隠されているので、無理からぬことではある。
 だが、利子は収奪システムの水先案内人としてはたらき、われわれは否応なくその中に組み込まれていく。
 お金の貸借という直接的行動だけでなく、商品やサービスの購入という間接的行動によって、寄生体に富を吸い取られ続けていくのだ。(つづく)