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コーラン焚書と第二の河豚計画 
    (世界戦略情報「みち」皇紀2670[平成22]年9月15日第323号)

米国「茶会党」運動活発化
一一月二日の米中間選挙まで三ヶ月を切り民主党が苦戦を強いられているなか、保守系の草の根運動「ティーパーティー」(茶会党)の動きが活発化している。
 八月二八日、首都ワシントンのリンカーン記念堂で「ティーパーティー」が、「米国の名誉回復」を掲げた集会を開き、数万人が参加した。同日は、米公民権運動の指導者キング牧師が同記念堂前で「私には夢がある」と人種差別撤廃を訴えた演説をしてから四七年目に当たる。
 集会は、米FOXテレビのトーク番組の人気司会者で反オバマ色を鮮明にするグレン・ペッグが呼びかけたもので、実質的には反オバマ集会であった。二年前の大統領選で、共和党の副大統領候補だったペイリン前アラスカ州知事も挨拶。彼女は、「米国の根源を誰かの思いどおりに変えてはならぬ」と、オバマ大統領を強く批判した。
「茶会党」は連邦議会下院に「ティーパーティー議員連盟」という橋頭堡を築き、左翼的な言動を行なう加盟組織を追放するなど支持拡大の基盤を着々と整えている。すなわち七月下旬、ミネソタ州選出のバックマン下院議員(共和党)ら有志議員二四名が「ティーパーティー議員連盟」を結成、全米各地のティーパーティー指導者らを議会に招いて意見交換し、責任ある財政運営や小さな政府の実現を目指して反オバマ連携を強めていくことを誓った。
米国の独立運動につながった、一七七三年の「ボストン茶会事件」に因んで名付けられた「茶会党」は、オバマ政権の経済・社会保障政策に反対する保守系の市民運動。昨年春から全米各地で集会を開きはじめ、今年春には全米ティーパーティー連盟(NTPF)という緩やかな連合体として発足して注目を集めた。だが、明確な指導者はおらず、中間選挙への独自候補擁立もしていない。傘下に八五の地方組織を抱えるなど組織が拡大したことを受け、お家騒動も起きている。
「茶会党」がリンカーン記念堂前で集会を開いたことに対し、黒人指導者らが近くで開催した集会では「キング牧師への侮辱だ」との批判が続出した。
 黒人運動指導者のアル・シャープトン師らは、「夢を取り戻せ」と題した集会を開き、同記念館近くに建設されるキング牧師記念館の予定地まで行進した。演説した黒人活動家らは、「茶会党」の集会には記念日にふさわしいメッセージがなく、歴史を冒涜していると批判。「夢はわれわれのもの」「乗っ取りは許さない」と、保守派への反感をあらわにした。
 また、シャープトンは、黒人運動の成果と課題を挙げるとともに、今秋の中間選挙に言及。初の黒人大統領を誕生させた二〇〇八年の大統領選と同じように投票所へ足を運ぼうと支持者らに呼び掛け、「時計の針を後戻りさせるわけにはいかない」と、黒人大統領擁護を強調した。
 ふたつの対照的な集会は、米国社会に内在している人種差別意識が顕在化している内実を浮き彫りにしている。同時に、米国が国家分裂に歯止めがかからない実情をも象徴しており、最悪の場合は内戦状況にまで陥る危険性をも予感させている。また、その矛先が、黒人大統領を非法・強権的に排斥する気運の高まりに転化する危険性も内包している。
 米政界ではオバマとクリントン国務長官の鞘当てを激化させ、クリントンを大統領にする動きが蠢動している。その布石として、一一月の中間選挙での民主党敗退を受けてバイデン副大統領が辞任し、後任にヒラリーを昇格させる密謀が進められている。ヒラリーの副大統領昇格は、オバマ排斥を前提とした策謀である。メディア主導の世論調査でも民主党の支持率が低迷し、オバマ不信気運が高まっている。
八月三〇日、米ギャラップ社が発表した世論調査によると、民主党の支持率は四一%、共和党は五一%。この差は中間選挙の年の共和党のリードとしては一九四二年の調査開始以来最大。共和党が民主党に対し過去に最も差を広げたのは、一九九四年と二〇〇二年の五ポイント。この時の下院選はいずれも共和党が勝利している。下院(定数四三五)は現在、民主党が二五五議席と過半数を大きく上回っているが、オバマブームは急速に萎えている。
 九月八日、オバマは中間選挙の激戦州のひとつオハイオ州を訪れ、投資減税や研究開発費の税控除などを柱とする追加景気対策を発表するなど、民主党が全国的に苦戦している状況をはね返そうと躍起である。だが、厳しい雇用情勢などを背景に、会場は熱気に欠け、二〇〇八年の大統領選挙でオバマを選んだ同州には、もはや熱烈な支持の機運はなかった。 
同時に、州知事選、上院議員選ともに、最新の世論調査では共和党候補が優勢に立ち、下院議員選でも民主党の新人が苦戦している。オバマはオハイオ州を選挙区とする共和党のベイナー下院院内総務を標的にした演説を行なった。ベイナーはクリーブランドでの演説でオバマ政権の景気対策を「雇用喪失策」と批判し、経済閣僚の更迭を迫った(八月二四日)。オバマ演説にはそれに対する「意趣返し」の意味もあったが、絶望的な選挙戦を強いられている苦境を象徴するものでもある。
連邦離脱すら公言する「茶会党」運動に勢い付き、米国社会の二分化現象に拍車がかかるなか、米キリスト教関係者がイスラム教を冒涜する動き見せ国際問題化するなど、オバマを苦境に陥れる動きも活発化している。

米国でコーラン焼却騒動
「九・一一事件」をイスラム過激派勢力による同時テロだったとの認識を再確認させるため、事件から九年目に当たる九月一一日にフロリダ州のキリスト教会がイスラム教の聖典コーランの焼却集会の計画を予告した。
 コーラン焼却を計画しているのは、フロリダ州ゲインズビルの教会「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」。同センターは、九月一一日を「国際コーラン焼却デー」とし、犠牲者をしのんで反イスラム集会を開くと予告(八月三一日)。インターネットでキリスト教徒に参加を呼び掛け、数千人が賛意を寄せたとされている。
 九月六日、アフガン駐留米軍のペトレイアス司令官は、そのような集会が実施されればアフガン駐留米軍にとって「重大な問題につながりかねない」と、批判する談話を発表した。
 ペトレイアスは「(イスラム武装勢力の)タリバンはまさにそうした行為を利用しており、アフガンのみならず、われわれがイスラム社会とかかわっている世界各地で重大な問題につながりかねない」と警告。さらに、NATOアフガン治安部隊のコールドウェル中将も、この問題がアフガンで「大きな議論と懸念」を巻き起こしていると指摘した。
 コーラン焼却集会をめぐっては、米国内外で批判が高まっている。
 九月五日、インドネシアの首都ジャカルタでは、米国大使館前に数千人が集まって抗議集会が開かれた。米国でもイスラム教やキリスト教の宗教団体がコーラン焼却の中止を要求。地元ゲインズビルではキリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教の指導者が、コーラン焼却予定前日の一〇日に「平和と理解、希望のための集会」を計画していた。
 また、今年の九月一一日はイスラム教のラマダン(断食月)明けの祭日「イード・アル・フィトル」と重なることもあり、米国のイスラム教徒に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)への懸念も高まっている。クリントン国務長官も、国務省で開催されたラマダン記念行事で演説し、「尊重しがたい、恥ずべき行為だ」と教会の計画を強い口調で批判した(九月七日)。
九月八日、イランの高位聖職者サアフィハメダニ師は、「もしコーランが焼却されれば、米国政府、特に大統領に責任がある。大統領は裁判にかけられるべきだ」と話した。同師は、「このような提案をした牧師を逮捕し、彼の教会を閉鎖すべきだ」と述べ、焼却計画はイスラム教徒への侮辱だとも指摘して、米政府の責任にも言及した。
 また、中東各地でも「イスラム教徒への宣戦布告だ」(ヨルダン野党、イスラム行動戦線)などと反発が広がっている。サウジアラビア英字紙アラブ・ニューズは「この教会が米国やキリスト教を代表していないことは明白。抗議は平和的であることを望む」としている。各国政府も反応を示し、バーレーン外務省は「恥ずべき行為」と非難。クウェート外務省も「イスラム教徒に対する悪質な侮辱」と反発した。
 オバマは九月九日放映の米国ABCテレビのインタビューで、「コーラン焼却計画宣言」について、「イラクやアフガンにいる米兵を危険に曝す莫迦げた行為で、米国の価値観と完全に相容れない」と述べた。大統領はまた、コーランを燃やせば、「(国際テロ組織)アルカイダが(メンバーを)勧誘する口実に利用される。パキスタンやアフガンで深刻な暴力が巻き起こる可能性もある」との懸念を表明した。
九月九日、国際刑事警察機構(ICPO、本部フランス・リヨン)は、声明を発表、イスラム教の聖典コーランの焼却が実施されれば、各国で暴動などを触発する恐れがあると加盟各国に警告した。
九月九日、アフガンのイスラム武装勢力ヒズブ・イスラミの報道担当者が「(コーラン焼却は)十字軍の一環だ」と非難。報道担当者は「国際的な迫害者がイスラム教を攻撃するのは初めてではない。アフガンのバグラム米空軍基地や、キューバのグアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容施設でもコーランは汚された」と指摘した。また「イスラム教徒の支配者らが無知でなければ、敵はこれほど高慢にならなかっただろう」とも述べた。
九月九日、「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」のジョーンズ牧師は、コーラン焼却計画を中止すると発表した。その理由として、九・一一事件で倒壊したNYの世界貿易センタービル跡地(グラウンド・ゼロ)近くにモスク建設を計画しているイスラム教聖職者と、建設予定地の移転で合意したことを挙げた。だが、イスラム教聖職者側はこれを否定しており、同牧師は新たな混乱を巻き起こしている。
 一連の狂想曲は、九・一一事件からアフガン・イラク戦争にいたるまで暗躍した米ネオコン系勢力と、彼らを熱烈に支持してきた米国内「シオニスト・クリスチャン」勢力による、同床異夢的な「大イスラエル主義」「ハルマゲドン到来」の妄想心理の頑迷な一端を浮き彫りにしている。
 米軍戦闘部隊のイラク撤退は、「大イスラエル主義」野望の挫折と、米国権威の喪失を象徴している。だが、その内実を認めたくないとする妄想のさらなる拡大で、米クリスチャンに内在する独善的な偏見を強く印象付けて、オバマ政権のイスラム対話戦略に寄せる関係国の不信感を増大させた。
 イスラエル離れを公言するオバマ政権は、国際世論の後押しを受けて中東和平構想に着手したが、その構想を無為化する成果に、右派シオニスト勢力は無言の賛辞を送っているであろう。

中東和平直接交渉再開
 イスラエルとパレスチナの首脳が、九月二日にワシントンで開かれる直接和平交渉を前に期待と牽制の発言を行なった。八月二九日に、イスラエルのネタニヤフ首相は、「パレスチナ指導部が(われわれと)同様の真剣な姿勢で交渉に臨むなら、双方の人々に平和と安全を保証し、地域の安全と安定をもたらす確固たる合意に向けて前進できるだろう」との見解を表明した。
 また、合意はユダヤ人国家としてのイスラエル承認、対立の終結、安全保障合意の形成を含む原則に基づかなければならないと指摘し、交渉には前提条件を設けないとも述べた。
 一方、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、アラブ各国政府による支持の下でワシントンを訪問すると述べ、「われわれに国家としての権利を保障し、アラブの全占領地で占領を終わらせて、この地域のすべての国に安全と自由、真の平和をもたらす」ための合意形成を目指すとした。
 具体的にはイスラエルによる東エルサレム支配の終結とヨルダン川西岸の入植住宅建設中止を挙げ、「イスラエルにとってもわれわれにとっても治安確保は重要だが、治安を名目に入植活動を継続し、われわれの土地を奪い、われわれの権利を否定することがあってはならない」と牽制。もし交渉が決裂すれば、その責任はイスラエル政府のみが負うことになると強調した。
九月一日、オバマは、ワシントンで開催される中東和平直接交渉を前に「この好機を逃してはならない」と強調し、ネタニヤフ、アッバスと個別に会談し、一年以内の和平合意を目指すよう促した。
 三首脳は同日夜、ホワイトハウスで顔を合わせ、夕食会を前に演説。直接交渉による和平合意の重要性で一致した。だが、ネタニヤフは治安問題の重要性を強調、アッバスはイスラエルに入植活動の全面停止を求めるなど、協議内容をめぐる双方の思惑の違いも改めて浮き彫りになった。夕食会には三首脳のほか、エジプトのムバラク大統領、ヨルダンのアブドラ国王、中東和平特使のブレア元英首相、クリントン米国務長官が出席した。
 九月二日、イスラエルとパレスチナ自治政府首脳による中東和平の直接交渉が再開した。一年以内の和平合意を目指し、将来的なパレスチナ国家の国境画定やエルサレムの帰属など未解決の諸問題を協議。和平合意の必要性で一致しているものの、各論の主張に隔たりが大きく、交渉の進展には曲折が予想される。仲介役のクリントンは交渉の冒頭、合意達成に自信を示したが、「米国は解決策を押しつけることはできない」とも述べ、双方が抱く「疑念と懐疑」を「忍耐と指導力」で乗り越え、交渉を前進させるよう求めた。
 当面の焦点となるのが、イスラエルの入植地拡大問題。九月二六日に、ネタニヤフ政権が昨年一一月に発表した、東エルサレムを除く占領地ヨルダン川西岸での入植停止措置が期限切れを迎えることから、自治政府はその延長を要求。これに対し、イスラエル側は入植再開の構えを崩していない。入植推進のユダヤ教超正統派宗教政党シャスなどと連立を組むネタニヤフ政権としては、安易な譲歩は不可能である。
 イスラエル側が自治政府に対し、イスラエルを「ユダヤ人国家」として認めるよう求めていることも、障害となっている。これを認めると四七〇万人に上るとされるパレスチナ難民の帰還権放棄につながりかねず、自治政府を担うパレスチナ解放機構の存在意義にもかかわるためである。
 米国が仲介する中東和平の直接交渉で、イスラエル、パレスチナ双方は、直接交渉を二週間ごとに定期実施していくことで合意した。次回交渉は九月一四、一五の両日に開催し、クリントンが出席する。また、隔たりの大きい諸問題の解決を目指し、双方の譲歩が必要な課題を明確にするための「枠組み合意」を構築することでも一致した。
 しかし、イスラエルの入植活動の全面停止については、議題に上ったかも含め、詳細は明らかにされなかった。次回の交渉は中東で開催する予定で、開催候補地としてエジプト東部シャルムエルシェイクが有力視されている。さらに、三回目の会談を九月中にも開催する方向で調整が進められている。イスラエルによる入植活動の凍結期限が二六日に迫っていることを考慮し、その前に行なわれると見られる。
中東和平交渉再開直後の九月四日、イスラエル軍は、物資の密輸などに使われていたとして、パレスチナ自治区ガザのトンネル三ヶ所を空爆した。パレスチナ側は、イスラエルが本気で中東和平に取り組む意志がないことを今回の空爆に託したと非難している。
 また、米国は、イスラエルに中東和平交渉再開を促す反面、トルコと距離を置く姿勢を滲ませていた。

米・トルコ関係に軋み
八月三一日、ナームク・タン駐米トルコ大使は、記者会見を行ない、米国がトルコに対する武器売却停止に踏み切ったことに関する見解を表明した。
 その骨子は、@米政府は米国議会におけるユダヤ人ロビーの影響を受け、トルコに対する武器売却を停止した A米政府は、トルコ政府によるイランの核問題に関する制裁決議への反対やトルコ・イスラエル間の関係悪化を受け、リーパー無人機やコブラ型急襲ヘリコプターの売却に関する合意を米国議会に送らなかった Bトルコは米国務省に対し、本件に対する懸念を伝えた C先週、米国を訪問していたシニルリオウル・トルコ外務次官は米当局に対し、北イラクのPKK指導者の拘束に向けてより確固とした方策をとること、米国が欧州各国に対してPKKとの戦いに協力するよう促すことを求めた……である。
一連の見解は、イスラエルが必死のロビー活動を行なうことで、米国とトルコ政府の間に楔を打ち込んだ結果、オバマ政権がユダヤ系勢力に屈服した内実を浮き彫りにしている。また、PKK問題に言及したのは、PKKにイスラエル情報機関が武器を供与している内実を米国が熟知していることを示唆している。
 駐米トルコ大使は、文明地政学的位相における「オスマン帝国」の復建で、中東地域における存在感を高めているエルドアン政権と、イスラエル離れを模索するオバマ政権が密接な関係を構築しないよう、イスラエルが必死なロビー活動を展開している内実をさり気なく暴露した。同時に、オバマ排斥気運が強まっている米政界の動向を注視していることも示唆した。
 トルコのエルドアン政権は、九月一二日に憲法改正をめぐる国民投票を行ない、大多数の国民が賛同すれば、来年二月には憲法改正に踏み切る意向である。すなわち、「聖俗分離」(政教分離)を国是と定めたケマル・アタチュルク国体(近代トルコ政体)を根本から改め、名実共に「オスマン国体」への本卦還りを目指している。
アタチュルクはドンメイ(イスラム教に偽装改宗したユダヤ人)で、ケマル政体を護持するため、エルゲネコンと呼ばれる秘密結社的な特権階層を育成した。彼らは、経済界だけでなく、軍や検察、警察、裁判所など治安・司法分野の上層部を支配して近代トルコ政体の護持をはかり、イスラム回帰気運が強まると憲法で保障されたクーデタでその動きを封殺してきた。
 しかし、エルドアン政権は、エルゲネコン勢力の牙を抜きながら軍のクーデタ決起を不可能にするだけでなく、闇の勢力の摘発に踏み切ることで、イスラム回帰志向を強めてきた。大多数のトルコ国民もエルドアン路線を支持しており、憲法改正にも弾みがつく勢いとなっている。
 皮肉なことに、エルドアン路線を国民が幅広く支持したのは、イラク戦争の勃発にある。同戦争の本質が、右派シオニスト勢力による「大イスラエル主義」願望にあり、イラク戦争は中東大混乱構想の第一段階にあることを察知したからである。同時に、中東イスラム諸国がトルコへの期待感を高めているのも、エルドアン政権への追風になっている。すなわち、天啓宗教文明世界内部の「神々の争い」が、トルコのイスラム本卦還りを覚醒させたのだ。逆の焦りが、米国キリスト教徒による「コーラン焼却計画」に現われている。
米国キリスト教徒の焦りは、イスラエルの孤立感の裏返しでもある。駐米トルコ大使は、右派シオニスト勢力が米国を使嗾してエルドアン政権を抑圧する意志を熟知している内実を明らかにして、その策謀に振り回されないとの認識を公にした。同時に、変則的な「中東ハルマゲドン」が誘発される危険性を世界に発信した。
九月一日付トルコのヒューリエット紙は、トルコ政府が一〇月に行なわれるアナトリアン・イーグル多国間空軍演習にイスラエルを除く数ヶ国に参加を呼びかけたのに対し、米国はトルコ政府に、イスラエルが招待されないのなら米国は参加しないと伝えたと報じた。逆に、米国はイスラエルとの軍事協力を増大させるだけでなく、大規模な合同軍事演習を開催した。
 八月一四日、イスラエル軍はレバノン・シリア国境沿いの占有地パレスチナにおいて、演習の一部としてレバノン南部に似た地形で演習を行なった。この種の演習は初めてで、イスラエルのテレビは、占領軍がヒズボラとの市街地戦をする演習の一部を放映した。また、イスラエル部隊との演習に参加している米海兵隊員を映した。
 同演習には、二〇〇人の米海兵隊員が三週間の合同演習の頂点としてネゲブ砂漠を通る終夜行進のため、イスラエル軍大隊に加わった。米当局によると、今回の演習は約二〇人の米海兵隊員だけが参加した昨年の同じ演習に比較して、これまで最大の合同歩兵演習だった。秋には、戦車や装甲車両を含むさらに大規模の合同歩兵演習があるとされている。すなわち、米国は中東和平を積極的に仲介する反面、トルコへの締め付けを強化するだけでなく、イスラエルとの合同軍事演習を強化することで、中東への軍事介入意志を明確に打ち出している。
ロシアは、米国仲介の中東和平交渉再開を歓迎しているが、イスラエルの反対にも拘らず、シリアへの武器売却を継続する方針を明らかにしている。

シリアへのロシア製武器売却継続
イスラエルの八月二七日付ハアレツ紙は、ネタニヤフ首相がロシアのプーチン首相に対し、長距離巡航ミサイルをシリア軍に売却することをキャンセルするよう要請したと報じた。また同紙によると、セルゲイ・プリホドゥコ大統領主席補佐官はノーボスチ通信に対して、「ロシア政府は外国との合意事項は履行するだろう」と語ったとも伝えている。
 プリホドゥコは「最近、イスラエルのいくつかのメディアは、ロシアのシリアに対する義務の履行に関して、その立場を捻じ曲げた情報を撒き散らしている。そこには、軍事的・技術的分野での協力事項も含まれている」と語り、「自分は、ロシア連邦政府はロシアとシリア間に締結されたすべての合意を尊重するということを強調しておきたい」とも語った(八月二九日)。つまりロシアはイスラエルの要請するシリアへの武器売却合意をキャンセルしない意向を明確に打ち出したのだ。
 問題となっている合意は、PB800ヤホント・ミサイルに関するもので、高性能精密兵器で、三〇〇qの射程を持ち、二〇〇sの弾頭を搭載できるミサイル。イスラエルの海軍艦船を標的とするシリアの軍事力を向上させるこのミサイルにイスラエルは懸念を表明している。さらに、イスラエル政府は、更に高性能兵器がシリアとイランが支援しているレバノンの武装組織ヒズボラに渡ることを恐れている。そうなった場合には、イスラエルの軍港と地中海にあるイスラエル艦船が危険に晒されることになると、警戒している。
九月六日、タス通信などによると、モスクワを訪問中のイスラエルのバラク国防相は、ロシアのセルジュコフ国防相と会談し、両国の軍事協力に関する枠組み合意文書に調印した。セルジュコフは会談後、イスラエルから無人偵察機一二機を購入したことを挙げ、ロシア軍の近代化に際し「イスラエル軍の経験を活用することはとても重要だ」と強調したが、合意の詳細は不明。
 イスラエルは、ロシアによる高性能対空ミサイルシステム「SB300」の対イラン供与に反対。ロシアは六月、国連安全保障理事会の対イラン追加制裁決議を機に、供与を見送ると表明していた。だがロシアは、シリアは別だとの認識を強調することでイスラエルを不安がらせ、最新鋭のイスラエル製無人偵察機の購入に成功した。
 同時に、最終的にはイスラエルを敵視しない姿勢をちらつかせて、国際ユダヤ勢力が推進している新満洲建国権益への参入を画策しており、わが国をその野心のダシにし始めている。
わが国が米戦艦ミズーリ号上で対米降伏文書に調印した九月二日をロシアが今年、事実上の対日戦勝記念日に制定したことについて、複数の露紙が三日までに記事を掲載した。一九四五年当時、有効だった日ソ中立条約を破って対日参戦した事実や、約六〇万人をソ連に連行した日本人抑留問題の存在にはふれず、ソ連の軍事行動を正当化する報道だけが目立った。
 同様の法案は九〇年代後半にも上下両院を通過したが、当時のエリツィン大統領が署名を見送った経緯があり、二日付ブレーミャ・ノボステイは記念日を制定すれば、米国の原爆投下が終戦に決定的な役割を果たしたことを認めることになる、との判断があったと伝えた。
 それが今回、一転して発効した背景として、プーチン首相に近い与党「統一ロシア」に所属するグリズロフ下院議長の発言があったと指摘。議長は党内の会議で「なぜこの法案が長期間、棚上げにされているのか」と発言したとし、立法化に政権上層部の意向が働いた可能性を示唆した。
ロシアがあえて対米降伏調印日を対日戦勝記念日に制定したのは、「第二の河豚計画」ともいわれる「新満洲国建国構想」が現実化しつつある内実を遠望し、その権益に独自の戦略的立場を堅持して参入したいからである。
「第二の河豚計画」構想は、五年前に英国に本部を置くスタンダード・チャータード銀行の最終持株会社である渣打集団有限公司(香港上場、チャータード集団=スタンダード・チャータードPLC)が、満洲の天津にある渤海銀行の株式一九・九%を支那北京政府との合意で取得したことから本格化したものである。
 三年前にハルピンで世界ユダヤ人会議が開かれ、〇七年九月と昨年九月には大連で、〇八年九月と今年の九月一三〜一五日まで天津で世界経済フォーラム主催の「夏期ダボス会議」が必ず満洲で開催されるなど、「第二のイスラエル・新満洲国建国」構想の具体化が急速に進捗している。
支那人民元の発行権を持つスタンダード・チャータード銀行の所有者は、英ロスチャイルド財閥である。ロスチャイルドは、渤海銀行に実質的な新満洲中央銀行的な役割を担わせる構想を推し進めているとされている。また、その構想には、レアアース(希土類)本位制的な通貨の発行が含まれており、覇権力の裏付けがなくても国際基軸通貨的な役割を担う可能性を模索しているともされている。満洲や北朝鮮は、レアアース埋蔵の宝庫である。
 ロシアは、「第二の河豚計画」構想に欠かせない北朝鮮の内実が、「大日本帝国の残置国家」であることを熟知している。そして、日本が最終的に北朝鮮を使嗾して漁夫の利を得るかのように新満洲国に君臨する可能性を懸念している。そのため、日朝独自の関係進捗を阻みたいと、支那をも巻き込んで新満洲建国構想は一度は挫折した日本主導の満洲とは全く異質であるべきだと、ロスチャイルドに歯止めをかけたいとの意向を強く滲ませている。
 九月九日、ロシアのメドベージェフが九月中にも支那を訪問し、第二次世界大戦中での中ソ共闘の歴史認識を再確認する方向で調整されていることが判明した。中露両首脳は、「第二の河豚計画」構想を念頭に置いて、日本や北朝鮮への対応を協議するであろう。

モンゴルの日本重視姿勢
 八月三〇日、訪中を終えたわが国の岡田外相はモンゴルの首都ウランバートルを訪問し、エルベグドルジ大統領ら同国首脳と相次いで会談した。
 岡田はザンダンシャタル外相との会談で、モンゴルの天然資源開発への参入、獲得に対する日本の積極姿勢を強調した。モンゴル側は日本企業の参入を支持し、ウランや石炭、レアアース(希土類)開発などでの協力促進に同意。両国関係を戦略的パートナーシップに格上げすることを提案するなど、日本重視の姿勢を示した。
 モンゴルでは二〇〇六年以降、国内総生産(GDP)における鉱工業の割合が三〇%近くで推移。タバン・トルゴイ鉱山の石炭埋蔵量が世界一といわれるほか、銅やウラン、金、レアアースなどの鉱床が国内に点在、各国がその資源を狙っている。
 現在、モンゴルの最大の貿易相手国は支那で、石油の輸入はロシアに依存している。そして、中露両国は同国に対しインフラ整備を支援することで、天然資源の獲得競争でも猛烈な攻勢をかけている。モンゴルは支那、ロシアの一方に関係が偏ることを懸念。九四年に安保・外交政策に対する基本大綱を採択して「第三の隣国」との関係強化を模索している。〇七年には当時のエンフバヤル大統領が日本、韓国、米国、フランスや英国などを公式訪問し、資源外交を展開している。
 だが、モンゴルは〇八年のリーマン・ショックによる金融危機の発生で、銅の価格暴落の打撃を受けた。八%前後あった経済成長が〇九年にマイナス一・六%まで落ち込むと、今年六月、温家宝が支那の首相として一六年ぶりにモンゴルを訪問。支那は五億ドルの借款の追加供与や無償援助を申し出て、「第三の隣国」との関係強化を進める同国を牽制した。資源獲得競争が激化するほど、支那が「第三の隣国」の前に立ちはだかることになる。
 だが、モンゴルはあえてわが国に期待感を抱いて、日本重視の姿勢を明確に打ち出している。モンゴル政府は、八月下旬、北朝鮮の金正日総書記が満洲を訪問した背景事情(第二の河豚計画構想の進捗)を遠望し、日本もその流れに乗って来るであろうとの期待感を、わが国の外相に託した。
 八月三〇日、支那国営新華社通信は、支那を訪問した金正日と胡錦濤との首脳会談が二七日に吉林省の省都、長春市内で行なわれたことを確認、金正日が、支那と緊密に協力し、六ヶ国協議の早期再開を促進したいと表明したと報じた。同日、北朝鮮の朝鮮中央通信も金正日の訪中を公表した。
 新華社通信は、金正日が二六日から三〇日まで支那を非公式訪問し、同省吉林市、長春市、黒竜江省のハルビン市で、機械製造、鉄道、化学、食品および農業関連の施設を視察したと伝えた。しかし、吉林市にある亡父、金日成主席の母校、毓文(いくぶん)中学など「革命史跡」を訪問したことは伏せており、金王朝三代目後継者とうわさされる三男、ジョンウンが同行していたかについても触れていない。
 九月二日、支那を訪問中の北朝鮮の具本泰貿易次官は、日本海に面した北朝鮮の経済特区、羅先市について「国際的な加工貿易、中継貿易地として発展させるため、必要な法的条件の整備を行なっている」と述べ、外資導入に向け積極的に開発に取組んでいる姿勢をアピールした。吉林省長春市で同日開幕の「北東アジア投資貿易博覧会」のフォーラムで発言したもの。長春は八月下旬訪中した金正日が訪れたばかり。北朝鮮側には地域振興やインフラ整備を進める吉林省など支那東北部との連携を強化し、自国の経済再建につなげたいとの思惑がある。
 中朝双方は、金正日が満洲を訪れ、胡錦濤がわざわざ現地に赴いて金正日と会談した事実を公表した。その直後、北朝鮮の貿易次官が、日本海に面した羅先市を外資受け入れの経済特区をして積極的に解放する意向を打ち出した。羅先が国際的な経済特区として発展すれば、これまで支那やロシアに限られていたモンゴルや満洲の製品・産物、ことに戦略資源であるレアアースの流通経路が、国際的に解放されることになる。
 中露の思惑をねじ伏せながら、羅先解放に先鞭をつける見えざる影響力を行使したのは、国際金融資本勢力の雄ロスチャイルド勢力である。彼らは来るべき金融ハルマゲドン発生を遠望し、その後の世界多極化趨勢の一大拠点として新満洲国(形式的には支那国内の経済特区)を建国する構想を急速に推進している。同時に、イスラエルの崩壊を想定して、同地域を「第二のイスラエル」として同胞安住の地に定めたいともしている。モンゴル政府があえて日本重視姿勢を明確に打ち出したのも、「第二のイスラエル」建国構想の背景事情を熟知し、日本の関与を期待しているからである。
「第二の河豚計画」が支那の了解の下で推し進められているのは、北京指導部が狙う南北経済格差是正、北東アジア安定化戦略と大筋において合致するからである。また、あわよくば、支那人民元が世界基軸通貨になるとの期待感をも抱いている。同時に北京は、独自の東南アジア安保戦略を介して、支那の覇権力拡大に邁進している。

支那海軍艦船がミャンマーに初寄港
八月三〇日、支那海軍の艦船二隻が、ミャンマー最大都市・ヤンゴン近郊のティラワ港に寄港した。一一月のミャンマーの総選挙を前に、初めての支那海軍艦船の寄港は、両国の親密さを改めて印象づける形となった。支那はミャンマーとの関係強化を通じ、資源確保と同時にインド洋側に安定的に利用できる港の確保を目指しており、今回、海軍艦船が初めてミャンマーに寄港したのも、その戦略の一環である。
 両国間では今年六月、支那の温家宝が同国首相としては一六年ぶりにミャンマーを訪問。温は首都ネピドーで、軍事政権トップのタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長らと会談し、原油・天然ガスのパイプライン建設や水力発電事業など一五の経済協力協定に署名した。同パイプラインは、ミャンマー西部の港町シットウェから同国を横断し、支那雲南省昆明へとつながる全長二三八〇q。完成すれば原油を年間二二〇〇万トン、天然ガスは一二〇億立方メートルを輸送できる。
八月三一日、ミャンマー軍事政権トップのタン・シュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長が軍を退役せず、議長のポストにもとどまっていることが、国営紙の報道で明らかになった。
 ミャンマーでは一一月七日の総選挙に向けて、軍政ナンバー3のトゥラ・シュエ・マン国軍総参謀長ら多数の幹部が八月二七日に出馬準備のため一斉に退役、タン・シュエも軍籍を離脱したとの情報が流れていた。選挙関連法などは軍人が現役のまま立候補するのを禁じており、軍にとどまった議長の不出馬が確定的になった。九月に入って、タン・シュエは訪中し、支那の独自外交への肩入れをアピールした。
九月八日、胡錦濤は支那を訪問中のミャンマー軍事政権のトップ、タン・シュエと会談し、エネルギー分野などの協力拡大で一致した。ミャンマーで一一月に二〇年ぶりに実施される総選挙について、同議長訪中を受けて支那側は支援を表明しており、首脳レベルでも意見交換が行なわれた模様。
 中国中央テレビによると、胡は会談で、国交樹立六〇周年を迎えた両国関係を積極的に評価したうえで、「両国指導者の日常的な接触を通じ、重要な問題では直ちに意思疎通を図りたい」と呼びかけた。タン・シュエも「中国と手を携えエネルギー、農業、インフラ建設などで協力を強化していきたい」と応じた。
 ミャンマー総選挙について、両首脳の発言は報じられていないが、支那側は先だって「ミャンマー国内の政治的緊張や地域の平和・安定へのマイナスの影響を避けるため、国際社会は総選挙を建設的に支援していくべきだ」(外務省報道官)と踏み込んだ表現で支援を表明していた。
胡は八月末に北朝鮮の金正日と会談したばかり。米国の主導で国際的に孤立化している近隣独裁国家への影響力を強め、国際社会に対して支那外交の独自性をアピールしている。
 ミャンマーでは一一月、自宅軟禁中のスーチー女史を排除した形で総選挙を実施するが、米欧社会からは軍政批判の声が上がっている。タン・シュエは今回の訪中で、東南アジア地域での存在感が大きい支那から総選挙への理解と支持を取り付けて、双方の立場を認め合う形で支那の存在感昂揚に寄与した。
 支那は、金正日の訪問を受け入れた際にも、北朝鮮の世襲体制を容認する姿勢を見せた。独自外交で国境を接する独裁国家との親密な関係を誇示することで、欧米諸国による両国への制裁の動きを牽制する独自外交に徹し、それなりの成果を挙げている。また、北朝鮮と密接な関係にあるミャンマーが支那の協力を得て経済発展を成し遂げれば、両国をさらに影響下に入れることが出来るだけでなく、支那の国際的な存在感を高めることにもなる。
 民主化を強要する米国が、イラクやアフガンで苦戦し、最終的には敗退を余儀なくされている。米軍敗退後、両国には不安定化、荒廃が残るだけで、米国の正義感覚は地域社会の実情を無視した空念仏だったとの印象を強めている。非欧米圏の後進諸国は、地域事情を惻隠する支那の独自外交を、それなりに評価している。同時に支那は、米国威信の失墜を促進しているのである。   平成二二年九月一一日識