J・P・モルガン損失公表への一考察 
         (世界戦略情報「みち」皇紀2672(平成24)年6月1日第361号)

●二〇〇八年九月一五日、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻、世界的な金融危機と同時不況の引金となった。世界的な金融メルトダウンは現在も進行中で、もはや金融的な対処手段によっては解決できないのではとの不安感が強まっている。その趨勢にあって、米大手金融機関が多額な評価損を自ら計上したことで、世界的な金融危機の新たな波紋となっている。
五月一〇日、米金融大手JPモルガン・チェースは、ヘッジ戦略の失敗により、今年四月以降に二〇億ドル(約一六〇〇億円)の評価損が生じていると明かした。
 損失は、投機的等級の企業に対する融資などのリスクをヘッジするチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)部門で発生した。第2四半期に八億ドルの損失を計上する見通し。
 同社のダイモン最高経営責任者(CEO)は、この損失は「ミス」や「怠慢」、「誤った判断」によるものだとして「問題が山積みなのは明らかだ。戦略が誤っていた。複雑化が進む一方でマネジメントが行き届かなかった」と述べている。
彼はまた、単なる失敗なのか市場の問題なのかとの問いに対し、「方法も戦略も誤っていたが、環境という要素もある。だが、言い訳をするつもりはない」と述べた。
 JPモルガンの巨額損失事件はNY株式市場にも影響を与え、モルガン株は九・三%急落。また金融セクターも軒並み下落し、米シティ四・二%、バンカメ二%、M・スタンレー四・二%、G・サックス三・九%と、それぞれ下げた。投資家の不安心理を映すVIX指数も約五・六%上昇した。さらに、フィッチ、S&Pなどの格付け機関が相次いで格下げに動きだしている。
モルガン社が金融派生商品の取引で多額の損失を出したことを受けて、規制対象となる金融機関の取引の線引き(ボルカールール)をめぐる議論が再び高まっている。そのモルガン社は、二ヶ月前にはFRBのストレステスト(健全性審査)に合格している。

●ボルカールール細目の策定に関わり、デリバティブ規制強化の鍵を握っているFRBは、モルガンに多額な損失をもたらしたトレーディング・ポジションについて情報収集を進めている。FRB当局者は、各銀行の個々の取引を承認あるいは拒否することが自分たちの役割とはみておらず、各行が損失に耐えるに十分な資本を備えるようにさせることが自らの任務だと考えている。
五月一一日、米証券取引委員会(SEC)は、モルガン社が発表した投資損失の一連の情報開示について調査を始めた。SECは、ある会社の情報開示が今回のように株価の急落を引き起こした場合に、通常業務としてこうした調査を行なう。
 同事情筋によると、モルガン社に対する調査はまだ初期的なもので、「捜査」と呼べる段階には至っていないとされている。さらに、米商品先物取引委員会(CFTC)も動き出している。金融当局者が一斉にモルガン社の洗い出しにかかっており、同社は吊し上げ生け贄の様相を呈してきている。
 また、CFTCが動き出したことで、先物市場でも不正が暴かれる可能性が出始めている。モルガン社は先物市場での貴金属取引を牛耳っており、かねてより金、銀、銅などの相場を意図的に操作してきた疑いがもたれている。
これまでは、モルガンの不正経理は、同社の背後にいるロックフェラー財閥の圧力によって表沙汰にならずに当局者らを抑えてきた。一連の動きは、もはや彼らでは抑えが効かなくなってきている内実を浮き彫りにしている。
 また、FRB、SEC、そしてCFTCの調査によって、先物市場での不正が暴かれ、公になれば、先物市場の信認性が失われ、資金が逃避していく危険性が増して、先物市場の閉鎖の可能性も指摘されている。
 ワシントン在住の有力アナリストは、今回の一件で一般の商業銀行に投資業務を禁止する確率は三分の一になったと予測している。さらに「(投資の)自己勘定取引を規制するボルカー・ルールに関しては、緩やかな規制にすることは難しくなった。ボルカー・ルールの修正はまだ可能と信じるが、これでメガバンクが議会からの支援を得ることは難しくなったし、強硬論者たちは、銀行の収益率を悪化させるより厳しいルールを求めだすだろう」と分析している。すなわち、米金融界では、金融規制がさらに強化されるという観測が流れ始めている。
 事実、ダラス連銀のフィッシャー総裁は、「大きすぎてつぶせない」米主要金融機関は規模を大幅に縮小すべきだと公然と主張している。明らかにJPモルガンを意識してのことで、今後JPモルガンを中心に金融セクター株は下落の一途をたどる可能性が高い。
 リーマン・ショック時でも比較的経営基盤が安定的だとされていた米銀の雄JPモルガンが、遂に陥落する時が近づいている。同社は、米国から撤退する準備に入っているとも噂されている。同社が破綻となれば、リーマン・ショックの比ではない金融危機が勃発する可能性が高い。
 同時に、かつてチェース・マンハッタンを率いて銀行セクターに君臨してきたロックフェラー財閥の息のかかった米銀最大手の破綻劇は、米金融界の没落をも意味している。また、今回の危機演出の背後に、米ロックフェラー系勢力対欧州ロスチャイルド系勢力に大別される、国際金融勢力内部の熾烈な抗争があることも暗示されている。
モルガン社がヘッジ戦略の失敗により少なくとも二〇億ドルの損失を出したことについて、ダイモン最高経営責任者(CEO)は、「ロンドンのクジラ」と呼ばれるトレーダーが関与していることを認めた。このトレーダーはロンドンの拠点に勤務するブルーノ・イクシル氏である。
 同氏はフランス人で、九一年に工学・技術系教育機関のエコール・サントラル・パリを卒業。市場では大規模な取引ポジション保有で知られている。関係筋によると、同氏は巨額損失を出したチーフ・インベストメント・オフィスのクレジットデスクを率いていた。

●一連の米欧金融戦争は、FRBの采配をめぐる暗闘でもある。一九一三年に発足したFRBは、同年、米政府と九九年にわたって傘下の連邦準備銀行がドル発行の代理権限を得る契約を交わした。今年はその契約が切れるため、米政府はFRBを存続させるか、新たな中央銀行を創設させるかの決断を迫られている。
FRB傘下のすべての連銀は民間の株式会社で、その株式の大半はロスチャイルドなど欧州系の金融勢力が保持しており、米系の金融機関はロックフェラー財閥が率いるチェース・マンハッタン銀行一行だけである。今回のモルガン騒動は、チェース・マンハッタン銀行を実質的な破綻に追い込むために仕掛けられたものである。
 これまで飛ばし経理操作で損失を隠してきたモルガン社が、あえて自ら損失を公にしたことは、ロックフェラー系が敗北宣言をしなければならないほどに追い詰められている内実を公に発したも同然の仕儀である。チェース・マンハッタン銀行の没落は、今後のFRB運営にも大きな影響を与え、米国の金融支配権は欧州系金融勢力に完全に委ねられることになる。
 この内実を危惧する米共和党の次期大統領候補ロン・ポールは、FRB廃止を訴えており、一部の国民から党派を超えた熱狂的な支持を集めている。彼は共和党の候補戦から撤退したが、大統領戦に独自立候補する意向を宣言しており、今秋の米大統領選に大きな波紋を巻き起こす可能性が高い。
 五月六日、韓国の貯蓄銀行業界一位のソロモンをはじめ韓国、未来、ハンジュなど貯蓄銀行四行の営業が停止された。昨年一月、一回目の貯蓄銀行構造調整で釜山貯蓄銀行など九行、昨年七月の二回目でトマト貯蓄銀行など七行に続き、今度三回目で四行に営業停止処分が下された。韓国における一連の動きは、ロックフェラー対ロスチャイルド系勢力による熾烈な国際金融戦争の余波に巻き込まれたものである。その渦中、わが国は韓国国債五〇〇億円を購入している。
 五月一七日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスはサンタンデールなどスペインの銀行一六行の格付けを引き下げた。景気悪化や一部銀行に対する政府の支援能力低下を理由に挙げた。格下げの幅は最大で三段階となった。一六行すべての長期債務格付けを少なくとも一段階引き下げた。最大手サンタンデールの長期格付けは「Aa3」から「A3」に三段階引き下げた。
 ムーディーズは「ユーロ圏の危機が続くなか、スペイン政府の財政赤字は拡大し、景気の後退も再開しており、政府の信用力が低下している」と指摘。「信用力低下が、今日の銀行格付けの決定原因となった」と述べた。同社は五月一四日にはイタリアの銀行二六行を格下げしている。
米欧金融戦争は、同時に、欧州ユーロ圏の内部矛盾を直撃し加盟国の金融機関の格下げ競争に火をつけている。その背後には、ユーロに加盟していない英国の思惑が見え隠れしている。

●欧米間の金融勢力による熾烈な金融戦争の暗部が公になり始めている最中、英国女王の即位六〇周年式典がロンドンで開催され、わが国の天皇陛下ご夫妻も式典に参加された。
今回の式典に併せて、世界各国・各地域から王侯貴族や彼らに連なる金融資本勢力がロンドンに集まって今後の国際金融秩序を巡る会議が開催され、ロスチャイルド本家筋が仕切ったとされている。その権威付けにこそ、わが国の天皇陛下のご出席が要請された。日銀・宮内庁筋の必死の根回しで、病み上がりの天皇陛下の式典ご参加が急遽決められた。
 陛下ご夫妻が帰国された直後の五月二二日、格付け会社フィッチ・レーティングスは、日本の外貨建ておよび自国通貨建て長期発行体デフォルト格付けを「AA-」に引き下げた。従来はそれぞれ「AA」と「AA+」だった。見通しはともに「ネガティブ」。今後の国際金融秩序再編過程で、わが国が果たすべき役割への威圧的な問いかけと見なすべきであろう。
平成二四年五月二八日識