急激な円高への一考察 
(世界戦略情報「みち」皇紀2672(平成24)年6月15日第362号)

●二〇一二年の六月は、後世の史家が、同月から始まった世界恐慌が大転換点となって人類文明史が書き換えられたと認識される、画期的な一ヶ月になる可能性が高い。
 六月一七日に迫ったギリシアの再選挙で反緊縮派の急進左派連合が勝利した場合、新政府は融資先である欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)に対し緊縮政策の大幅な緩和を要請。それを認められないEUやIMFとの間に亀裂が生じ、ギリシアがユーロ圏から離脱し、ユーロ発の世界金融恐慌が起きる可能性が懸念されている。
また、ギリシアの選挙結果を待ち切れずに、ここに来て一気にスペインの財政危機が火を吹き始めている。スペインの危機は財政規模がギリシアとは桁が違うだけに、EUにとって容易ならざる事態となっている。
 スペインの財政危機は政府自身の抱えた債務の大きさだけでなく、バブル景気に乗って不動産融資をしてきた大手の銀行数行が巨額の不良債権を抱え込んでしまっているだけに、その救済自体が難儀である。
 その代表がバンキア銀行。最近、同行が政府に行なった支援要請が一九〇億ユーロ(一兆九〇〇〇億円)と想像以上に巨額であったことから、同様な不良債権を抱えた銀行群を財政赤字に悩む政府が支援しきれず、連鎖的な銀行破綻が発生して金融恐慌が起きる懸念が取りざたされている。
欧米の専門家の間では、金融恐慌による世界的な経済恐慌は既に始まっているとの認識が一般化している。
 彼らは「すでにわれわれは大恐慌に入ってしまった。世界が繁栄していると思っていたのは実はバブルに過ぎず、過剰になった負債がクラッシュしたことで世界恐慌へ突入している。最悪のシナリオは一九三〇年代の大恐慌の完全な繰り返しで、ファシズムが台頭し、政治対立が生まれる状態にある」との認識を公然と打ち出してる。そして、世界的な恐慌・経済不況は一〇年も二〇年も続くだろうと予測している。
 事実、欧州の失業率は既に一一・四%に達し、緊縮財政の直撃を受けた国々においては、さらにその数値は大きくなると見なされている。二四・三%という高失業率のスペインでは、二五歳以上の若者の半分以上が職に就けない状態が続いており、就職の面から見るとギリシアと同様に既に大恐慌に突入している。
 こうした状況を考えると、欧州の財政危機は夏から秋にかけて、本格的に火を噴くことになる可能性が高い。
 六月一日の米国株式相場は下落、ダウ平均は二七五ポイント安の一二一八、ナスダックは八〇ポイント安の二七四八で取引を終了した。五月雇用統計で非農業部門雇用者数が六万九〇〇〇人増と予想の一五万人増を大きく下回ったほか、失業率も八・二%へと上昇したことが嫌気された結果である。
 一億人を上回る働き手がいる米国で、就業者数の増加が月に一〇万や二〇万人ではリーマン・ショックによって職を失った一〇〇〇万人の失業者をカバーすることなど出来るものではない。景気回復が本格化しつつあるとして、株式市場が新高値に向かって進んでいたのは、幻想の産物に過ぎないことが改めて浮き彫りになっている。
 大卒の就職率が五〇%を大幅に下回り、ブーメラン現象(大学を卒業した後、就職できずに親元に戻る現象)が続いているのに、景気が回復しているはずがないのは明白である。
 米国市場に引っ張られる形で東京市場も急落し、世界同時株安現象の引金になりかねない様相となり、ドル離れに弾みがついている。

●六月一日から日本円と支那人民元の直接取引が東京と上海の両外国為替市場で開始され、東京市場は一元=一二円三二銭で取引を終えた。米ドルを介して取引された前日の上海市場の終値一二円三九銭と比べ、七銭の円高・元安水準だった。
 日中両国の通貨取引がドルを介さなくなることで、日中両国ではドルの需要が大幅に減少することになる。これは、ドル覇権崩壊の第一段階を意味している。
 来るべき第二段階は、日本と同様に米軍占領下にあるサウジなどペルシア湾岸産油国での共通通貨での決済開始であろう。また、円と人民元の直接取引は、ドルが暴落・乱高下して国際基軸通貨の地位を失った後に、東アジアでの域内貿易を決済する中心的役割を果たすことにもなる。 
 冷戦時代の欧州で独マルク・仏フラン・伊リラ・英ポンドの四大通貨の取引が行なわれ域内貿易を主導してきたように、国際金融資本体制の崩壊後の東アジアではブロック経済が成立して、日本円・支那人民元・インドルピー・ロシアルーブルの四大通貨の取引が域内貿易を主導することになる。
 その牽引役となる日中両国が連携することを、国際金融資本や米国は内心では恐れている。だが、その動きを逆手にとって、彼らの存在感を高める動きを強め始めている。
 米欧通貨戦争を仕切る米ロックフェラーと欧州ロスチャイルドは、世界恐慌勃発を想定したうえで、一時的に停戦をし、連携に踏み切ろうとしている。ロックフェラーにロスチャイルドが出資する形態で、事実上ロックフェラーがロスチャイルドに吸収合併されることになる。
 この動きは同時に、一九一三年に米国の中央銀行を国際金融資本が乗っ取り(FRBのドル発行権確保)、その後ドル覇権を世界に押しつけることで成立してきた米国の世界覇権が終焉することを示唆している。
 今後、FRBは、世界統一通貨を発行する世界中央銀行の役割を果たす方向性を模索している。同時に、世界経済体制を、自由主義型から統制型に切り替える意向のようだ。その意向を受けたかのように、支那やインドの経済成長に陰りが出始めている。
 支那経済の急減速、ことにバブル崩壊現象が顕著になり始めている。その結果、悲惨なクラッシュになり、支那の政治・社会の混乱や国際社会での地位低下にまでつながり、支那が国際台頭していた時代が終わる可能性が見え始めている。また、インド経済も同様に減速しており、ブラジルやロシアも悪化しそうで、BRICs諸国は世界経済を牽引できなくなり始めている。

●リーマン・ショックを機にドル威信が急低下し、旧来の欧米先進国中心の世界経済体制が大きく揺らいでいる。その反面、BRICsCS諸国が著しく経済発展を成し遂げたことで米一極世界覇権体制が綻び、世界の覇権位相は多極化の方向に向かっていた。だが、米英はアングロ覇権の蘇生を念頭において、必死の逆襲を模索している。
 同時に、ユダヤ国際金融資本勢力は、米英アングロ勢力の思惑を逆用しながら、彼ら流儀の世界金融の一元化を模索している。日本円と支那人民元の直接取引が実現したのは、彼らの暗黙の支援あってのことである。
 仮に、支那政府が、経済減速を逆手に取り経済構造改革に舵を切り替えれば、時間はかかるだろうが、支那は内需主導の経済成長へとソフトランディングが可能になる。支那が成長を鈍化させたうえで長期的な成長構造を確立出来れば、先進国の仲間入りをする準備を整えられることになり、現代版の「大東亜共栄圏」が実現することにもなる。それを牽引できるのは日本だけで、日本の文明力への期待感が、経済合理主義では説明できない急激な円高を促しているのである。
 五月三一日のニューヨーク外為市場の円相場は一時、一ユーロ=九六円四八銭、一ドル=七八円台まで円が急騰した。同時に、日経平均株価が四ヶ月半ぶりに八四〇〇円台まで下落した。
 六月五日、日米欧の先進七ヶ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、緊急の電話協議を開き、欧州債務危機の再燃や金融市場の混乱に対する危機感を共有し、協調して対応する方針を確認した。だが、G7全体の共同声明が見送られたことで、円高は看過されたも同然である。
同日の東京外為市場は、小幅ではあるが円安に転じた。しかし、円高傾向に歯止めがかかったわけではなく、G7が黙認した円高局面は今後とも続くものと予想される。
円高局面の継続予想を踏まえた外国の投資家勢力は、一時的な緊急避難ではなく本格的な日本投資に転じる姿勢を示し、わが国の優良投資物件を血眼に探し求めている。その中心をなしているのは、「新河豚計画」を推進したいユダヤ金融資本勢力と、支那の金融投資集団である。
 同時に、北朝鮮は、わが国に対する様々な働きかけを活発化している。

●最近のインターネット世界で、横田めぐみさんが密かに来日し、ご両親と面会したとの噂が広まっている。ただし、日時や渡航経路など具体的なことには触れられていない。また、彼女が飯山一郎氏の著書『横田めぐみさんと金正恩』を高く評価し、著者に感謝しているともされている。
 五月下旬、NHKがオウム真理教に関するドキュメンタリー番組を放映した。そのなかで、教祖の麻原彰晃が幹部クラスと会話した録音テープが存在している事実を公にし、その一部を公開した。従来は、そのようなテープは存在しないとされていたが、何故かそのテープが公開された。このテープは北朝鮮に保管されていたものだが、北側の意向でNHKに渡されたとされている。その際、NHKは莫大な謝礼を払ったとされている。
 六月六日付産経新聞は「先の大戦後も朝鮮半島に残った日本人の遺骨をめぐり、北朝鮮が遺骨を発見したとする平壌市内での工事を中断していると説明し、返還に向けた現地調査を急ぐよう日本政府に要求してきたことが五日、分かった」と報じた。
一連の動きは、北朝鮮がわが国との連携を求めて、日朝国交締結を睨んだ活発な働きかけを積極的に始めた一面を浮き彫りにしている。当然その背景には、支那、あるいは一部の米国勢力の暗黙の了解がある。
北側は日朝の連携が単なる政治次元の問題ではなく、人類文明史における遠大な使命に基づいた構想だと確信している。その嚆矢が日朝連携による新満洲建国(新河豚計画)にあるとしているのだ。 
平成二四年六月六日識