世界的異常気象に関する一考察 
       (世界戦略情報「みち」皇紀2672(平成24)年8月1日第365号)

●米国立気候データセンターが六月九日に発表した統計によると、米本土の今年六月までの一年間の気温は一八九五年に統計を取り始めて以来、最高を記録した。
 同センターによると、今年一〜六月の気温も過去最高を記録した。特に三月と六月の気温が高く、六月後半は米本土四八州の各地で過去の記録を突破、コロラド州などで大規模な山火事が発生した。 
六月末から米国を襲っている熱波の凄さは想像を絶するものとなった。あまりの暑さに道路がめくれ上がって走行して来た車が空中高く飛び上がり、鉄道の線路はくねくねに曲がって列車が脱線、空港では旅客機のタイヤが滑走路のなかに食い込んでしまった。
 三〇〇〇ヶ所以上で史上最高気温を記録、二五州で八〇〇〇万人の人々が熱波のなかで悲鳴を上げている。連日四〇度を超す信じ難い暑さに襲われている街では「拷問のような暑さ」「ミサイル級の汗」といった聞いたことのない表現が飛び交い、住民は「毎日こんなに暑くてはエネルギーが吸い取られてしまう」と悲鳴を上げている。
 一方、米国の南部では異常高温だけでなく、風も強く干魃の被害が広まっており、北部で豪雨や洪水被害が出ているにもかかわらず、南部にとってはまったく救いになっていない。
 テキサス州の干魃は過去三番目の酷さで、家畜放牧地が枯れ、数千エーカー(一エーカー=〇・四ヘクタール)の小麦、その他の農作物が壊滅的被害を受けている。さらに山火事が多発し、多数の人々が避難を余儀なくされて数十戸の住宅が焼け、ヒューストン郊外では焼失面積が五二〇〇エーカー以上に達している。アリゾナやルイジアナ、バージニアなど南部諸州にも同様な被害が広がっている。
 記録的な暑さは七月に入っても続き、七月二日と八日は最高気温が過去の記録と並んだり突破したりした回数が米国各地で二一一六回に上った。この暑さによりメリーランド州で一八人、バージニア州で一〇人が死亡。激しい雷雨の影響で数百万世帯が停電に見舞われた。
 七月一六日、米海洋大気局(NOAA)の米国立気候データセンターは、米国は一九五六年代以来最悪の干魃に見舞われているとの報告をまとめた。各地で作物や牧畜への被害が広がり、ミシシッピ川は水位が低下、節水のため猛暑にもかかわらずプールを閉鎖した自治体もある。
 同センターによると、六月に短期間でも中程度以上の干魃に見舞われた地域は全米の約五五%に上った。これは一九五六年一二月に記録した五八%に次ぐ数字。なかでも深刻あるいは極度の干魃に見舞われた地域は、五月の二三%から六月には三三%に拡大。
 中西部イリノイ州のクイン知事は「これほどの干魃は見たことがない」と述べ、州議会に対策強化を訴えた。七月一六日にはこれまでの二六郡に加えて新たに七郡を被災地に指定し、農家が政府の救済金を申請できるようにする方針。
米全土を襲っている干魃は、さらに悪化している。七月一九日の統計によると、米国土の約六四%に干魃が広がり、観測史上最悪を記録した一九三四年に次いで二番目の規模となった。この影響でミシシッピ川の水位も低下し、過去最低に迫っている。
●約五〇年ぶりの干魃に見舞われている米国で穀物価格が急騰し、記録的な高値を付けている。
 トウモロコシの価格は過去五週間で五〇%以上も上昇。七月一九日の先物市場でトウモロコシ一二月物はブッシェル(約二五キロ)当たり七・九九〇ドルを付け、昨年六月に記録した過去最高値の七・九九八ドルに迫った。九月物は約三%上げて八・一六六ドルの過去最高値を付けた。
 大豆は六月初旬から約二五%高騰、七月一九日は一一月物がブッシェル当たり約三%高い一六・七三六ドルとなり、二〇〇八年に記録した過去最高の一六・三六八ドルを上回った。
 干魃が続けば小売価格も高騰する。農務省の専門家によれば、一般的にはトウモロコシの価格が五〇%上昇するごとに食糧価格は一%値上がりする。ただし肉類や乳製品はもっと深刻な影響を受ける可能性があるとされている。業界団体の専門家は、もし干魃が長引けば、牛肉と豚肉、鶏肉は最大で一〇%値上がりする可能性もあると予測している。
 異常気象に見舞われているのは米国だけでなく、世界的なものである。  
●米国の異常気象と同様、ヨーロッパでも冷夏と猛暑という両極端の異常気象が続いている。英国や北欧諸国などは六月から雨の日が多く、気温も上がらない日が多い。
 英国の天気予報は向こう半年間、曇りまたは雨としておけばほぼ間違いないと言われているほど青空が見えない日々の連続で、こうした状況はこれから先も当分続きそうである。そのため、大洪水まではいかないものの、連日降り続く雨のため水嵩が増して道路は水であふれ、家の中まで浸水するというような状況が出てきている。
 気象予報官は「この国の歴史で最悪の夏になるかもしれません。多分、湿って寒い日が続くと思われます。少なくとも、現時点で今年のイギリスの夏は史上最悪です」と語っている。どうやらオリンピックは雨空の下で行なわれる日が多くなりそうである。
●黒海沿岸のロシア南部クラスノダール地方を襲った豪雨による洪水で、警察当局などによると死者は七月八日までに一七一人、被災者は一万二〇〇〇人以上に上った。プーチン大統領は七月九日を服喪の日とすることを決めた。国営テレビによると、大統領は七月七日、現地に向かい、ヘリコプターから被災地を視察。六日夜に洪水が市街地に押し寄せた様子の説明を受けると「津波のようだ」と印象を語った。
 六月のスウェーデンは、ほとんどの地域で多量の雨と低い気温に悩まされた。そのため、多くの人々が暖かい地域への旅行を希望している。首都は毎日毎日、雨ばかりで、ほとんど太陽を見られない。そんななかで、スウェーデンの人々の「南国への旅」の願望が過去最高に高まっている。
 一方、欧州南部の地中海沿岸やイタリアやスペイン 、ギリシアなどは四〇度近い猛暑に襲われている。
こうした欧州の南北の両極端の気候を端的に表わしているのがフランス。北に位置する首都パリでは平年を四〜五度下回る二〇度前後の気温で肌寒い日が続く一方、南部のマルセーユでは三二度近い暑い日が続いている。
 またハンガリーは連日猛暑に襲われ、温泉並になったプールを避け冷たい水を求めドナウ川に人々が集まっている。逆に、ポーランドでは連日各地で雷や暴風雨といった荒れた天気に見舞われ、雹が窓や車に降り注ぎ、屋根に穴が開くなどの被害が出ている。
 この北欧の低温と雨、東欧の高温と晴天といった気象状況の極端な差は、フランスの北部と南部のそれと一緒で、ポーランドの雷や雹、暴風雨は米国のバージニアや南部テキサス州で発生している異常気象と同様である。 
●インド北東部アッサム州で大規模な洪水が発生し、当局の七月五日までの発表によれば九五人が死亡し、二〇〇万人が家を失う被害が出ている。
 当局によれば先週降り続いた雨により州内を流れるブラマプトラ川が氾濫し、二〇〇〇を超える村々が被害に遭ったという。死者の大半は洪水の濁流に飲まれて亡くなったが、土砂崩れによる死者も一六人に上っている。
●一方、六月二三日現在、 洪水災害に見舞われている支那の重慶市では一八〇万人が被災し、二人が死亡、二人が行方不明になり、 約一一万人が避難している。また、家屋は五六〇〇棟が倒壊し、損壊は一万三〇〇〇棟。直接被害額は七億八〇〇〇万元(約八五億円)。
また、北京では七月二一日から二二日未明まで雷を伴った豪雨に見舞われ、建物倒壊などによって数百人が死亡、数十万人が緊急避難した。そして、大災害への対策不手際で市長や市の幹部が引責辞任に追い込まれるなど、政治問題にまで発展している。
こうして見てみると、かつて世界中が経験したことのない異常気象下に置かれていることが良く分かる。

●世界的な異常気象に関して、気象学者は二酸化炭素増加による温暖化を唱えているが、一連の世界各地の状況を見ると、単純な温暖化現象によるものでないのではとの疑念が浮き彫りになってくる。すなわち、地球規模での本格的な気候変動が始まっているものと考えた方がよさそうで、わが国もその例外ではないと判断し、本格的な対策(国づくり)を真摯に考慮すべき時にきている。
 九州の度重なる大雨と洪水の被害やロシア、インド、支那などの洪水のニュースが、その関連性を裏付けている。
 熊本や大分の大雨について、予報官が「これまで経験したことのないような雨」と、異例な表現を使って強い警告を発していることを重く受け止めるべきである。
世界的な異常気象の結果、世界の穀物相場がここに来て一気に上昇し始めている。その影響はすでに日本にも及んでおり、大豆の輸入価格の高騰によって豆腐や醤油などの値上がりは避けられない状況に来ている。また、小麦の生産も落ち込んでいるようなので、いずれパンや麺類などの価格にも影響が出てくることになるであろう。
 日本ではまだ水害の影響が穀倉地帯に及んでいないが、八月に予想される豪雨による大規模水害や九月の台風の襲来が関東から日本海一帯の穀倉地帯に及ぶような事があれば、減収と価格の上昇が懸念される。
わが国は「地震、雷、火事、親父」の例えで、天災はいかにも逆らえない対象と捉えてきた。
 昨年三月の東日本大震災以来、最大の人災であった福島原発事故を契機に、わが国では政府や専門家などの親父的な権威が地に落ち、国民は何に信を置いていいのか戸惑っている。その後も追い打ちをかけるかのように天変地異が打ちつづいているが、自然を無視してきた人間の傲慢を改め、自然を崇める本来の日本的霊性に覚醒せよとの天意と受け止めるべきである。(平成二四年七月二二日記)