韓国社会反日激化への一考察 
     (世界戦略情報「みち」皇紀2673(平成25)年10月1日発行第390号)

●七月三〇日、米国ロサンゼルス近郊グレンデール市の市中央公園に韓国の主張する「旧日本軍従軍慰安婦像」が設置され、除幕式が行なわれた。
 チマ・チョゴリを着た少女が椅子に座るブロンズ像で、一昨年一二月にソウルの日本大使館前に設置された像と同じデザイン。七月九日に市議会が「すべての戦争被害者のために」として設置を決めた。式典には元慰安婦や韓国系市民ら数百人が駆けつけた。
韓国側は、いわゆる従軍慰安婦問題に関して、日本に以下の七項目を突き付け、解決を求めている。

①慰安婦に関して真相を究明せよ
②慰安婦制度が犯罪であったことを認めよ
③日本の国会決議として韓国に謝罪せよ
④法的に賠償せよ
⑤責任者を処罰せよ
⑥日本の歴史教科書に慰安婦問題を明記せよ
⑦慰霊塔を建設し、資料館を設立せよ

 また、韓国政府は日韓条約を反故にする意向も明確に打ち出してきており、その余波で韓国社会に反日気運が急速に盛り上がっている。
 今年の五月、韓国で九五歳の韓国人男性が、「日本の植民地統治は、良いことだったとワシは思うよ」と日本統治時代を「肯定」する発言をしたところ、居合わせた男の怒りを買い、殴られて死亡するという事件が起きた。
九月一〇日、傷害致死罪で逮捕された黄被告は「泥酔しており心神耗弱状態だった」と主張したものの、懲役五年の判決を受けた。だが、韓国内ではこの黄被告への擁護論が少なくない。
 ネット上では、黄被告を「愛国青年」などと称し、「そもそも日帝を称賛した時点でジジイは犯罪者だろ、殺されて当然」「懲役刑? むしろ勲章モノじゃねえか」「正義の審判だ」「裁判官は売国奴」などと殺人を正当化するコメントが多数寄せられている。
「韓国はいつから歴史観が違えば人を殺していい国になったんだ?」と嘆く声もあるが、過激な意見の勢力が強い韓国ネット上では押され気味。
 日本統治時代への評価をめぐっては、韓国では近年一部の研究者から近代化の進展などを重視し、部分的に評価する動きがある。しかしこうした意見が反映された教科書が八月三〇日に検定を通過したところ、国内世論が沸騰、政界も巻き込む大論争に発展するなど、今なおタブー視は根強い。
 八月三一日、韓国の放送通信審議委員会(放通審議委)が日本を称賛し韓国を卑下する内容の親日ブログとネットコミュニティなどを制裁することに決めた。
 放送通信委の調査によれば、六月~八月の間だけで総一万九〇〇〇件以上の親日・韓国卑下を内容とする掲示板とブログが認められた。放通審議委はこれに対し一次的な親日ネットコミュニティ、ブログなど九ヶ所に対し削除、接続遮断などの是正措置を講じた。
「独島は日本の領土だ。どこに行ってもこのように叫ぶ。独島は日本の領土」。あるネットコミュニティに登場して来たこの文は無差別的にインターネットで広がった。他にも「日本の朝鮮植民地支配は幸せだった」「慰安婦は自発的な行動だ」という文もあった。
 放通審議委は問題になった文等を削除措置にして同じ文を反復的にあげた利用者に対して利用解約措置を取った。同委は、「われわれの歴史と伝統性を否定し青少年たちに誤った歴史意識を植え付ける恐れがあるインターネット情報が徐々にその水位を高めている。親日掲示文の集中モニタリングをするつもりだ」と明らかにした。
●韓国の朴槿恵大統領が九月七日から五日間の日程でベトナムを訪問した。訪問中「二枚舌外交」を披露した。
 日本に対しては「正しい歴史認識を持つべき」「責任と誠意ある措置を」などと要求しながら、残虐行為が相次いだ自国のベトナム戦争参戦には沈黙を続けたのである。
 朴大統領は、チュオン・タン・サン国家主席やグエン・フー・チョン共産党書記長、グエン・タン・ズン首相ら同国の首脳陣と会談した。ベトナムの原子力発電開発における協力推進などで一致した。
 長期低迷に陥っている韓国経済活性化のため朴大統領は「セールス外交」を宣言しており、原発などの売り込みを図った格好。両国首脳は良好な外交関係を演出したが、実は重く暗い過去が両国間に横たわっており、ベトナム国民の韓国嫌いは有名である。
 韓国は一九六四~七三年、朴大統領の父、朴正煕大統領(当時)の判断でベトナム戦争に参加、のべ三〇万人を派兵した。韓国軍の残虐行為(住民虐殺や婦女暴行など)は世界的にもよく知られ、韓国人兵士や軍属がベトナム人女性に産ませた子供たち「ライダイハン」は、三〇〇〇人とも一万人ともいわれている。
 ベトナムと韓国は九二年に国交を結んだが、ベトナムは韓国に対してこれらの謝罪や反省、補償を求めなかった。ただ、二〇〇一年に金大中大統領(当時)がベトナムを訪問した際、「不本意ながらベトナム国民に苦痛を与えたことを申し訳なく思う」と「謝罪」した。
 これに対し、当時、野党ハンナラ党副総裁だった朴大統領は「金大統領の歴史認識を憂慮せざるを得ない。参戦勇士の名誉を傷つけるものだ」と厳しく批判した。
●一方、支那のネット掲示板では、二〇二〇年東京五輪の招致活動に対し、官民挙げて「妨害工作」を行なった韓国への批判・疑問が相次いでいる。
 国際五輪委員会(IOC)総会の直前、韓国メディアは東京電力福島第一原発の汚染水問題を取り上げ、東京五輪の招致辞退を求める記事や社説を掲載。韓国政府も、福島県など八県からの水産物輸入を全面的に禁止するなど、徹底した妨害工作を繰り返した。
 こうした姿勢に触発されたかのように、支那のネット検索大手「百度」の掲示板では、「韓国が病んでいる。東京五輪を妨害」と題したスレッドが立てられ、「なぜ東京五輪を邪魔するのか」などと韓国批判が噴出。「一番嫌いなのは韓国人」「われわれは低俗な生物と言い争う必要はない」などとする書き込みも見られた。
 日中関係が悪化するなか、なぜ、支那のネット社会は「反日」韓国を非難しているのか。そもそも、支那当局はネット上の言論を厳しく監視しているが、「嫌韓書き込み」を放置しているというのは、事実上、政府公認なのか。
 支那もベトナムと同様に、政府レベルと草の根の民衆とでは「対韓国感情」は大きく違っているが、支那政府筋は民衆の声を抑圧することなく、韓国への嫌悪感を容認している。
 一連の動きには、韓国の反日姿勢の激化と二枚舌外交の実態、さらには旧宗主国支那へのすり寄りに対する支那民衆の反撥の一部が示唆されている。
 韓国政府や民間勢力が反日教育をして反日感情を煽っているのは、単に外交上の駆け引きによるものではなく、現政権が受け継いできた建国理念に根本的な問題が潜んでいるからである。
 韓国は、対日独立戦争をして独立を勝ち取ったわけではない。韓国は日本が大東亜戦争に敗れた昭和二〇年一〇月、亡命先の米国から帰国した李承晩が大韓民国臨時政府初代大統領に就任し、昭和二三年に米国が支援し正式に建国され、李承晩が初代大統領に横滑りした。李承晩政権は建国の正統性に対する疑義を逸らすため、李承晩ラインを設定するなど反日意識を高めることで国民意志の統一に苦慮してきた。
 韓国では独立が与えられても朝鮮動乱やクーデタ騒ぎが続いて混乱に陥り、八〇年代までは軍政の続いた独裁国家であった。東西冷戦対立構造の弛緩に伴って軍政から民政統治体制に移行したが、対北融和勢力が暗躍するなど国家理念のあり方が問われ、その反動で反日気運が異常なまでに盛り上がっている。
 一方、北朝鮮は、歴史的事実はともかく、抗日パルチザン勢力が建国した国家であることを建国の理念に置いたため、排外民族主義に捕らわれることなく、現在では実質的な金氏朝鮮として国家存立の基盤を強化している。
●現在、韓国では小規模な反日暴動を愛国運動として取り上げているが、それらの暴動は併合当初のものであり、統治が進むにつれて暴動は無くなり、日本軍に志願する朝鮮人が増大し、大東亜戦争では韓国人の志願特攻兵士が日本と命運を共にして散華した。
 九五歳の韓国の老人の発言は嘘ではない。日本統治時代を知る世代よりも戦後教育を受けた世代の方が反日感情が強いのは戦後の反日教育によるもので、古い世代が少なくなった八〇年代後半ぐらいから従軍慰安婦問題や教科書問題などが外交問題化している。
 また、韓国が反日感情ばかりでなく、日本製品不買運動や日本文化の受け入れを拒否するのは、真実を知ることが怖いからであろう。戦前の朝鮮人は日本語が分かったから日本語を通じて世界を知ることができた。だが、現代の韓国人はハングルしか読めないから国際常識を知らない。海外留学をして外国の文化を学んでもそれを受け入れる文化がないから根付かないだけでなく、むしろ情報を統制して遮断してしまう悪弊が定着している。
 反日気運が高まる一方で、韓国社会は根底から揺らぎ始めている。
●八月一五日、韓国ソウルで日本からの独立を祝う「光復節」が行なわれたが、ソウルの中心部で数万人規模の激しい反政府デモが行なわれ、朴政権側は放水銃による鎮圧を行ない、数百人が連行された。
 八月一〇日にも、「国家情報院」が昨年の大統領選挙に介入したことに関して、真相究明を求める数万人規模の抗議集会が行なわれた。
 九月五日、韓国の情報機関「国家情報院」は、北朝鮮の思想を信奉する秘密組織をつくり体制転覆を謀議したとして、内乱陰謀などの容疑で、左翼政党・統合進歩党の李石基議員を逮捕した。同容疑の適用は一九八〇年以来で現職国会議員の逮捕は初めて。だが、対北監視機関でもある「国家情報院」の存続が韓国で問われている。
 九月一三日、北朝鮮関係筋は二〇二〇年夏季五輪開催地の選挙で、同国が東京に投票したと語った。北朝鮮は韓国が妨害工作に奔走したことを揶揄するかのように、わが国に対する微笑外交に転じる意向を示唆している。韓国の反日激化は思わぬ側面で日朝接近を誘発することになろう。 平成二五年九月一六日記