米国デフォルト懸念への一考察 
     (世界戦略情報「みち」皇紀2673(平成25)年10月15日発行第391号)

●過去数ヶ月間に起きた一連の異変を纏めてみた。これらは第二次世界大戦後の資本主義体制を支えてきたブレトンウッズ国際金融体制以降の構造的な綻びを象徴しており、国際金融秩序が全面崩壊(金融ハルマゲドン勃発)しかねない危険な様相を呈しつつある情況を示唆している。同時に、国際決済銀行BISが警告しているように、世界経済もまた世界恐慌に陥る危険な水域に入りつつあることを暗示している。

七月一五日、ハンガリー、IMF事 務所閉鎖の方針決定。
七月二二日、ドイツ銀行破綻の危機と、米・ブルームバーグ報道。
八月四日、  HSBCが、四〇ヶ国以上の大使館、領事館、高等弁務団に口座解約を通知した旨を、
         英日曜紙 ザ・メール・オン・サンデーが報道。
八月一二日、ハンガリー、IMFか らの借金完済。
         この結果、ハンガリ ーはIMF体制から完全離脱へ。
八月二二日、オバマ米大統領、連邦準備銀行や政府の財政金融監督機構、連邦貯金保険会社、
         商品先物取引委員会、証券取引委員会、連邦住宅金融機構などのトップと秘密会談。
八月二四日、米、新一〇〇ドル紙幣 の発行を発表。
八月二六日、JPモルガンチェース銀行、個人口座預金者に九月二二日以降の米国外への送金停
         止を通知。
         米財務長官、連邦債務の上限引き上げを議会に要請。
八月二七日、オバマ大統領、連邦債務の上限引き上げに応じないと表明。
八月三一日、米、シリア攻撃中止。
九月一八日、米連邦準備銀行、量的緩和縮小見送り(量的緩和政策維持)を発表。
九月一九日、国際決済銀行BISが世界経済の破綻を警告。
九月一九日、米財務長官、連邦債務上限の引き上げがなければ、一〇月一七日に政府の手元資
         金がほぼ底を つくとの見通しを表明。
         米議会予算局、一〇月二二日~三一日の間に財務省による緊急措置が限界を迎える
         との見通しを発表。
九月三〇日、米新年度予算案不成立。
一〇月一日、米政府機関の一部閉鎖。
一〇月三日、オバマ大統領東南アジ ア歴訪中止を米ホワイトハウス発表。
一〇月八日、米、新一〇〇ドル紙幣 発行。
一〇月一七日、米、連邦債務上限へ、 デフォルト目前……。

 このような一連の「赤信号」を示す動きに続いて、いま米国のデフォルト(債務不履行)懸念が強まっているのである。
●米政府は議会の対立で予算が組めないまま新年度に入り、一〇月一日から、政府機能が広範囲に停止する事態になっている。貧困対策事業の休止や、公務員の無給の自宅待機、国土のインフラ維持の停止など、機能停止が長引くと深刻な問題になる。CIAなどの諜報機関も、文民正規雇用者の七割が自宅待機。
 一〇月二日、米情報機関を束ねるクラッパー米国家情報長官は暫定予算の不成立に伴う米連邦政府機関の一部閉鎖に触れ、諜報収集活動に極めて大きな障害をもたらしていると警告した。
 これは米上院の会合で述べたもので、「諜報畑で五〇年間働いているが、今回のような事態は初めて」と指摘。国家の安全と治安を守る情報機関の機能に深刻な支障を与えているとの危機感を表明した。この支障は時間とともに深まり、その危険性は広がるとも主張した。
 長官によると、米政府機関が閉鎖された事態でも、情報機関は法により米国民などの生命に対する差し迫った脅威に対処するために必要な人員の確保が認められている。これを根拠に一時帰休を指示されたのは今回、情報機関職員の約七割だった。ただ、長官は情報機関にとって必要不可欠ではない職員はいないとの立場を強調、一時帰休組の職員を決定するのに幹部は極めて苦痛な選択を強いられたと付け加えた。
 政府閉鎖はしばらく続く模様で、一〇月一七日に予定されている米政府の国庫が底をつき、米国債の利払いができなくなってデフォルトが起きる可能性が現実味を帯び始めている。
オバマ大統領が内政に翻弄される形で東南アジア歴訪を取りやめるなど、米外交にも支障が生じ、米国の威信低下を招いている。
●一〇月三日、オバマ大統領は東南アジア歴訪を取りやめ、議会との財政協議に専念する方針を示した。デフォルト危機が迫り、与野党の思惑が交錯するなか、情勢は再び緊迫化している。
 政府機関の再開には、未成立の二〇一四会計年度(一三年一〇月~一四年九月)予算を上下両院で可決する必要がある。上院は与党民主党、下院は野党共和党がそれぞれ多数派で、与野党が合意できるかが焦点。
 攻防の中心は、オバマ政権が「国民皆保険」に向け推進する医療保険改革(オバマケア)の取り扱い。政府機関閉鎖に至ったのも、オバマケアに必要な支出を盛り込んだ暫定予算案を、共和党が「財政を一層悪化させる」と退けたため。ただ、オバマケア法案自体は二年前に成立済みのため、大統領は「この問題で取引しない」と強硬。
さらに、国内迷走に拍車を掛けているのが債務上限引き上げ問題。米国では際限のない国債の発行などで財政が悪化するのに歯止めをかけるため、法律で政府債務に上限を設けている。
 だが、〇八年の金融危機(リーマンショック)を受け、オバマ政権は過去最大の約七八七〇億ドル(約七六兆四〇〇〇億円)の景気対策を実施するなど、財政出動を繰り返した。当然債務は膨らみ、これまでに何度も上限に到達し、そのたびに法改正で上限を引き上げることで凌いできた。
 今回も、債務は現在の上限の約一六兆七〇〇〇億ドル(約一六二一兆円)を一〇月一七日にも超える見通しになっている。そうなれば米国債が史上初のデフォルトに陥り、利払いすら滞って国債市場は暴落。株式やほかの金融市場にも波及し、世界経済が大混乱に陥るのは必至。
 上限引き上げには議会の同意が必要だが、ここでも対立の構図は同じで、オバマケアや無駄な歳出の見直しを要求する共和党に対し、民主党は無条件の引き上げを求めている。
 さらに草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」が、支持する共和党議員への締め付けを強めるなど来秋の中間選挙を見据えた思惑も絡み、状況は一層混迷している。
●茶会勢力は、米国債がデフォルトすれば、それ以上財政赤字を作れず、小さな政府を作らざるを得なくなるので好都合だと思っている。共和党の支持者の中には「連邦政府を閉鎖したままにしておくこと」「これを機に、連邦政府の権限を州政府に戻すこと」を求める署名活動を始めた人々もいる。連邦政府より州、州よりコミュニティと、権力を草の根に近いところに戻し、社会の人間性を回復しようとするのが、茶会勢力の考え方なのである。
 また茶会勢力は「米国の単独覇権が崩壊し多極型の世界体制になった方が、英・イスラエルなど外国勢力に米国の権力を振り回されにくくなる。孤立主義の方が権力を草の根に戻せるので良い」と思っている。
 共和党内には、軍産複合体や金融界などの「穏健派」と呼ばれる勢力もいるが、彼らは党の分裂を恐れ(るという口実で)、茶会派の動きを強く阻止しようとしていない。共和党下院のベーナー議長は「私自身は民主党案に賛成しても良いのだが、茶会派の反発が怖いのでできない」と言っている。
 一連の動きは、建国以来の米国の理想を守ろうとする草の根保守勢力と、グローバル資本主義・ユダヤ型金融資本主義勢力による熾烈な戦いが米国内で行なわれている内実を象徴している。すなわち、オバマ政権は実質的な内戦の狭間にあって、危険な政権の舵取りに苦慮しているである。
●オバマ大統領がアジア歴訪を中止したのは政府機関閉鎖に伴う措置としているが、財政協議を優先する姿勢を示し、議会にプレッシャーをかける戦略なのは明らか。与野党に太いパイプを持つバイデン副大統領が窓口役となり収拾に乗り出すとの観測も出ている。
 バイデン副大統領はやはり難航した今年初めの「財政の崖」をめぐる与野党協議でも仲介役を務め、突破口を開いた実績をもつ。
 今後想定されるシナリオのうち最良なのは、オバマ大統領が求めている通り、政府機関の再開と同時に債務上限引き上げでも合意すること。このため、まずは政府機関の早期再開だけでも合意を目指す可能性がある。ただ、この前途も厳しい。ここ数日の与野党の交渉は不調で、しかも、議会も市場も次第に「より危険」なデフォルト危機へと関心が移りつつある。
 そのデフォルトを回避するため、債務上限の引き上げについての合意を先行させる案が浮上している。だが、与野党はこれまでも妥協しながら小幅な引き上げを繰り返しており、根本的な解決を目指すオバマ大統領が求めているものとは大きな開きがある。
 最悪なのは、政府機関再開も上限引き上げも交渉が決裂し、デフォルトに突入する事態。今後の与野党協議の展開次第で思わぬ妥協案が浮上する可能性もあるが、いずれにせよ時間との闘いになる。
●オバマ大統領は議会対策とは別に、数行のグローバル金融機関の最高責任者と密かに会談し、デフォルト回避策を話し合ったとされている。会談自体が機密であるため会談内容は一切封印されているが、関係筋は何らかの取引が行なわれたのではと推測している。
 米国は一〇月八日に新一〇〇ドル紙幣を発行したが、米関係筋は密かにわが国の関係筋に、新ドル紙幣の信用と権威を担保するよう求めている。その担保とは、わが国の皇室のお墨付きを与えることだとされている。
 一連の動きは、ユダヤ金融資本主義勢力が活動の本拠地を米ニューヨークから東京へと移す計画を本格化させていることを暗示している。
 昭和バブルが発生する数年前から、「東京マンハッタン化計画」なる構想が始動していた。二〇二〇年東京五輪が決まったのも、その仕上げのためだともいわれている。すなわち、世界的な文明の衝突位相にあって、神国日本の存在感が静かに浮き彫りになりつつあるのである。 平成二五年一〇月五日記