世界経済最新動向に関する一考察 
       (世界戦略情報「みち」皇紀2674(平成26)年3月15日発行第400号)

●国際通貨基金(IMF)は世界経済の見通しと課題に関する報告書を二月一九日に発表し、最近の新興国の通貨安といった市場の混乱は「まだ脆弱性は残るが、主要な新興国による信頼強化や政策のテコ入れで最近では安定の兆しを見せている」との見方を示した。報告書は、二二日からオーストラリアのシドニーで開かれる二〇ヶ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に提出される。
 世界経済全体については「主に先進国の牽引力によって上向いてきている」と総括した。最近の国際金融市場の乱高下の影響は長く続かず、国際経済の見通しは一月時点の内容とほぼ変わらないとの見解を示している。
 先進国の金融政策については、国際金融市場の安定と改善を促すため、「時期尚早の金融引き締めは避けるべきだ」と提言した。また、わが国の日銀による大規模な金融緩和策を評価した。そのうえで物価が上がり始め、インフレ期待も高まってきていることから「現時点でこれ以上の緩和は必要ないようにみえる」とした。
 同一九日に米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した連邦公開市場委員会(FOMC、一月二八~二九日開催)の議事録によれば、政策当局者は失業率が利上げを決定する際の目安水準付近まで低下したことに伴い、政策金利の方向性をめぐるガイダンスを近く変更することを検討している。
 議事録では、「失業率が六・五%に迫っているなか、その目安を下回った後のフェデラルファンド金利をめぐる決定についての情報を提供するため、FOMC参加者は金融政策の先行き指針を変更することが近く適切になるとの見解で一致した」と記述した。「幾人か」の金融政策当局者は、「経済見通しに目立った変化がなければ、緩和縮小ペースの維持を支持することが明らかに推測される」と述べた。
 当局者は、低金利と債券購入の縮小による景気支援を続けるうえで、今後の政策を明確に示すことを模索している。議事録によると、当局者の間ではガイダンスの明確な示し方をめぐり意見が分かれていた。
 議事録によると、一部の参加者は既存の目安に沿った量的なガイダンスを支持した。その一方で質的なアプローチが望ましいとする見解も表明され、この場合、FOMCの金融政策決定の指針となる要素についてさらなる情報を提供することになるという。
 FOMC声明は全会一致で賛成が得られたが、利上げに踏み切る時期については異なる見解が示された。議事録によると、「比較的早期にFF金利の引き上げが適切であるとの可能性を挙げた」当局者が「数人」いた。
 二月二二~二三日にG20会議が開かれる。米国が大量のドルを市場に供給する量的金融緩和を縮小し、新興国が資金流出などへの対処に苦慮している。会議では、米国の緩和縮小の影響や新興国問題が主要テーマとなり、参加国や投資家が懸念を深めている支那の「影の銀行」(シャドーバンキング)問題にも、議論が及ぶ見通し。
 二月二一日、ルー米財務長官はG20会議前に行なったシドニーでの講演で、「中国の『影の銀行』問題を世界中が懸念している。会議で議論されるトピックの一つになるだろう」と指摘。支那の経済については「安定確保のためには短期の成長を犠牲にする必要もある」と述べ、構造改革への取り組みを求めた。
 一方、同日、G20議長国を務めるオーストラリアのホッキー財務相は会議で、世界経済の成長率について数値目標を設定し、各国の成長を促す方向で検討していることを明らかにした
 今回のG20会議では、先行きに不透明感が漂う新興国経済が主に議論される。ただ、資源輸入などを通じて新興国の景気を左右する支那の「影の銀行」問題や景気減速懸念が、新興国不安の下地になっているとの見方も根強く、支那の経済運営の舵取りも大きな焦点。
●米メディアが「ミステリアスな『第三者』登場」として紹介をしたのが、今年一月に支那で高利回りの金融商品「理財商品」にデフォルトの恐れが生じた際、全額買い取りを申し出た謎の投資家だ。
 理財商品はシャドーバンキング問題の焦点。一〇%近い高利回りを謳い、投資資金をひきつけてきた。デフォルト懸念が報道されると、名前も明らかにされない「第三者の投資家」が突然現れ、事なきを得るという不可解な展開となった。「混乱を恐れた中国政府の意を受けた救済策だ」(中国経済の専門家)とも指摘されている。
 野村証券によると、二〇一二年以降、同様の商品をめぐる信用リスクの問題が二八件あった。二月一二日にも新たな理財商品の焦げ付き懸念が表面化して、投資家が支那のリスクに気をもんでいる。
 支那をめぐっては統計の水増し疑惑も出ている。二月一二日に発表された一月の貿易統計で、大方の専門家の予想に反して輸出が前年同月比一〇・六%増と大幅に伸びたが、「不自然だ」との指摘が絶えない。大和総研の常務理事は「一年前にも水増し疑惑があった。今回も香港など主要貿易相手の数値を照らし合わせると、不審さが残る」と疑問を投げかけている。
 二〇〇八年のリーマン・ショック以降、支那は拡大する経済力を背景に存在感を増し、インドネシア、タイ、ブラジル、ロシアなど多くの新興国で輸出先の上位三位内に入っている。
 市場では、その支那の景気の先行きへの警戒感が強まっている。製造業の景況感を示す二月のHSBC中国製造業購買担当者景況指数(PMI)が、好不況の分かれ目となる五〇を一月に続いて割り込むと、二月二〇日のアジアの株式市場はそろって下落した。
 一方、支那当局もこうした世界の目を意識した動きをみせている。ロイター通信によると、統計水増し疑惑が出た一二日、国家統計局幹部は「改竄は最大の腐敗だ」として、改竄が判明すれば処罰する方針をすかさず表明。金融市場の運営では、だぶついた資金を短期金融市場から吸収する公開市場操作を約八ヶ月ぶりに実施し、堅実な金融市場の運営をアピールした。
●二月二二日に開幕したG20会議では、新興国が直面する経済課題を議論する一方、先進国の景気回復が世界経済を牽引する見通しが示された。米欧では過去三年、リーマン・ショック後の景気対策で膨らんだ予算規模を縮小したことが世界経済の足かせとなっていた。日本の「アベノミクス」も加わり、経済の成長エンジンが新興国から、「緊縮疲れ」が和らいだ先進国へと移行している。
 IMFによると、先進七ヶ国(G7)の主な政策経費を税収でどれだけ賄えているかを示す「基礎的財政収支」の赤字は、二〇一〇年平均で国内総生産(GDP)比五・二%だったが、一四年には一・六%まで縮小すると見込まれている。
 とくに米国は、基礎的財政収支の赤字が一〇年にGDP比八・九%だったが、一四年には二・六%と大幅に改善する。収支改善に伴い、「フィスカルドラッグ」と呼ばれる財政政策が景気に及ぼすマイナス影響が「確実に減る」との見方は多い。
翌二三日、G20会議は世界経済の成長率を五年で二%以上引き上げることを明記した共同宣言を採択して閉幕した。会議では、新興国に経常赤字などの国内課題を是正するよう求めたほか、米国などの先進国は「金融政策の変更は慎重に進めるべき」との認識で一致した。G20で経済成長率について具体的な数値を明記したのは異例。
 IMFの予測によると、二〇一四年の世界経済の成長率を三・七%、一五年を三・九%としている。一六年以降の予測は示されていないが、二%の成長率引き上げは各国政府にとって容易ではない。
 米国が量的金融緩和を縮小させた一月下旬以降、一部新興国で資本流出などの混乱が起きた。採択された共同宣言は、他国にも影響が及ぶ新興国の金融政策の変更について、「注意深く測定され、明確にコミュニケーションが行なわれる」ことが重要だとする従来の文言を踏襲した。
また同日の共同声明でG20は支那の「影の銀行」によるリスクへの対処を明記し、支那に構造改革を促した。支那はシャドーバンキングや地方債務の膨張など、自国が抱える問題を各国に説明し理解を求めたが、懸念を払拭するまでには到らなかった。
 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁はG20会議で「影の銀行」の拡大を認めたうえで「慎重に対応している」と述べた。各国からは「とくに意見は出なかった」という。
●G20会議では異例の経済成長率に言及したが、焦眉の国債金融秩序の不安定化に対する言及はなかった。ことに、米国の量的緩和(QE)縮小に伴う米国債の不安定な先行きについてはまったく無視された。
 米国は現在、FRBが米国債など債券を買い支えてきた量的緩和策を縮小し始めるため、米国債など債券の金利がいつ高騰してもおかしくない不安定な時期に入っている。今のところ、指標となる一〇年もの米国債金利は二・七%前後で、危険領域である三%を下回っている。しかし、米国債の売り上げが悪化したりすると、短期間で金利が危険領域まで上がってしまう。NYタイムスは「金利高騰と金融危機の危険が増しているのに。世界はリーマン危機の時と同様、何の準備もしていない」と指摘している。
 現在、世界最大の米国債の買い手は支那である。だが、米中間の戦略対峙が激化しているため、支那上層部では米国債の購入を止めよという声が出ている。事実、支那は昨年一二月、米国債の購入量を二年ぶりの低水準まで減らした。すなわち、世界の経済・金融動向をめぐる分野でも米中対峙現象が顕著になっている。
 その趨勢にあって、ウクライナでクーデタ擬きの政変が起き、米露対立が激化している。そして「米軍特殊部隊とロシア正規軍が、ウクライナ・南部クリミアで軍事衝突、第三次世界大戦の発火点になりかねない」という緊急情報が流布されている。第三次世界大戦懸念を煽動する背後には、金融ハルマゲドンを仕掛ける勢力の意図が秘められているのだ。
      平成二六年三月二日記