日露・日支・米支首脳会談開かれる 
        (世界戦略情報「みち」皇紀2674(平成26)年12月1日発行第416号)

●一一月九日、支那を訪問中の安倍晋三首相は北京市内の釣魚台迎賓館でプーチン露大統領と約一時間三〇分、会談した。両首脳は大統領が来年の適切な時期に来日するための準備を始めることで合意した。大統領の来日準備のため、北方領土問題などを話し合う日露外務次官級協議を再開するとともに、岸田文雄外相の訪露についても引き続き検討していくことを申し合わせた。
 日露両政府は今秋に大統領が来日することで合意していたが、ウクライナ情勢の悪化を受けて今秋の実現が困難となっていた。首脳会談では首相がウクライナ情勢に関して現状への憂慮を示すと同時に、ロシアが停戦合意を完全に履行し、平和的解決に向けた建設的な役割を果たすよう強く求めた。
 日本側の説明によると、首相は平和条約締結交渉に関し「双方に受け入れ可能な解決策を作成する交渉を加速させる」と明記した昨年四月の日露共同宣言に基づいて進めたいとの立場を伝えた。平和条約を巡る具体的なやりとりに関しては「率直に意見交換した」とするにとどめた。
 両首脳は北朝鮮を含むアジア情勢についても意見交換したが、日支関係については話題に上らなかったという。
日露首脳会談の要点は以下の四点。

①安倍首相とプーチン露大統領は北方領土問題を含む日露平和条約締結交渉について、双
 方が受け入れ可能な解決策を議論することを確認
②来年の適切な時期にプーチン大統領訪日の準備をすることで一致
③安倍首相はウクライナでの親露派による独自選挙に憂慮を表明
④両氏は岸田文雄外相の訪露について、引き続き検討していくことで一致

 今回の首脳会談で、わが国は日露平和条約を締結する意向を示した。
 わが国は東西冷戦対立の狭間で、米国の強い意向に従ってロシア(旧ソ連)と北方領土問題の解決を主とした平和条約を締結できなかった。
 領土問題は当該地域の統治・施政権問題と表裏一体で、国際社会では施政権が一〇〇年を超すと統治国の固有領土と認定されてしまう。現在戦後六九年で、さらに三一年現状を放置すれば、わが国固有の北方領土の島々もロシアの領土になってしまう。
今回安倍政権が日露平和条約締結に向けて前向きの姿勢を示したことは大いなる決断だと評価すべきである。また、米国の一極覇権が揺らぎつつある趨勢にあって、ロシアとの戦略的提携で支那の覇権拡大を牽制する意義を見いだすこともできる。
 さらに、文明地政学的位相において日本文明のあり方を大いに評価しているプーチン大統領治世下のロシアと平和条約を締結することこそ、わが国の国益となる。領土問題は、歯舞・色丹即時返還、国後・択捉は今後の課題として交渉すべきである。
一方、ロシアは支那北京政府との連携を強化し始めている。
●タス通信が伝えるところでは、一一月九日、ロシアと支那は北京でロシア産天然ガスの支那への供給拡大に関する覚書に署名した。西シベリア経由で支那にガスを供給する内容で、ロシア政府系企業ガスプロムのミレル社長は「年間三〇〇億立方メートル、三〇年間にわたる契約になる」と述べた。
 両国は今年五月、年間三八〇億立方メートルを三〇年間供給することで合意している。ミレル社長は、これと合わせると将来的に「中国への供給が欧州への供給を超える可能性がある」と強調した。プーチン露大統領、支那の習近平国家主席同席の下、ガスプロムと中国石油天然ガス集団(CNPC)が署名した。
 露大統領報道官によると、プーチン大統領は九日、習主席との露支首脳会談で、人民元(支那通貨)建てによる国防分野を含む貿易の可能性について協議した。米ドル依存を低下させる狙いがあるとみられている
日露首脳会談に続いて、危ぶまれていた日支首脳会談が行なわれた。
●一一月一〇日、北京で安倍首相と習近平国家主席による日支首脳会談が実現した。尖閣諸島や小笠原諸島に支那の公船や密漁船が迫る事態は、今回の首脳会談で改善に動くのか。地元関係者の声からは、期待感と警戒感が交錯した複雑な心境がうかがえた。
 支那の公船が領海侵犯を繰り返す尖閣諸島。八重山漁協の上原亀一組合長は、「対立だけでは前に進まない」と首脳会談の成果に期待を寄せる。石垣市の中山義隆市長も「緊張関係が少しは落ち着くのでは」との見方を示した。
 ただ、首脳会談をめぐり支那側は、尖閣諸島の領有権問題の存在を認めるよう日本側に強く迫った。中山市長は、かつての支那の最高実力者鄧小平が持ち出した領有権の棚上げ論を念頭に「棚上げのような形で手を打ち、そのままにしておくとまた一〇年後、二〇年後に支那に押し込まれてしまう」と警戒感をあらわにする。漁師の藤本浩さんも「棚上げとなったとき尖閣へ漁に行けるのか」と疑問視する。
 支那漁船によるサンゴ密漁に揺れる小笠原諸島でも思いは切実だ。小笠原島漁業協同組合の作業場では一一月一〇日、漁師らが会合を開いた。思うように出漁できない状態が続き、苛立ちがピークに達しており、漁師からは政府の対応への不満が続出した。
反日気運を強める韓国では日支首脳会談の実現に警戒感が強まっている。
●日支首脳会談が実現したことで、安倍首相との会談に応じない韓国の朴槿恵大統領への風当たりが国内でも強まってきた。北朝鮮が拘束した米国人を解放したことを受け、頭越しに米朝協議が進むことへの懸念も浮上、原則重視の朴外交は岐路に立たされている。
 韓国大統領府は日支首脳会談について韓国メディアに対し、「わが国の外交戦略に影響を及ぼすほどのものではない」との立場を示している。しかし中央日報によると先週の「日支首脳会談開催へ」のニュースに、外務省幹部は「会談合意は予想外」と語るなど衝撃を隠せなかったとされている。
 韓国メディアも「政府は東アジア情勢の変化に適応しているのか」(左派系紙、京郷新聞)「突破口を開いた米朝・日支関係を見守るだけなのか」(保守系紙、東亜日報)など、左右両派とも社説で朴政権の外交姿勢を批判している。
 背景には、これまで歴史問題を軸に「対日共同戦線」を張ってきた支那の習近平政権が日本に歩み寄ることで、韓国が梯子を外されるとの懸念がある。また、中間選挙に負けたオバマ米政権が外交得点を稼ぐために対北交渉に前のめりになり、韓国が脇役に追いやられるとの焦りもある。
 朴大統領は従来、安倍政権には慰安婦問題での対応を要求し、北朝鮮には譲歩を拒否する外交姿勢を貫いてきた。これを「硬直外交」ととらえ、「行き詰まった状態」(保守系紙、朝鮮日報)とする見方が韓国で支配的になりつつある。
 一方韓国メディアは、日支首脳会談で安倍首相と握手した習近平国家主席が見せた硬い表情について、「日本冷遇」だと強調して報じた。
 一一日付韓国各紙は、日支首脳会談の写真を日本各紙より大きく掲載した。中央日報は安倍首相が習主席に歩み寄り、握手する様子を連続写真で伝え、「会いはしたが、両首脳には笑いどころか微笑もなかった」と説明した。
 朝鮮日報は一面で支韓・日支各首脳会談の写真を並べて載せ、「韓日に対する習主席の二つの顔」と紹介。東亜日報も同様に「習近平、朴槿恵大統領と晴れやかに握手、安倍首相には顔そむけ」との見出しも添えた。両紙は、安倍首相の傍らで無表情な習主席と、その約一時間前に笑顔で握手した支韓両首脳の写真を支韓、日支関係の「対照的な現状」として比較した。
 また朝鮮日報は一三日付の東京発で日本国内の受け止め方について、「笑顔なき握手に日本国民が衝撃を受けている」などと報じた。
 日本語版のサイトには「外交の舞台で、なぜあれほど露骨に不快な感情を示すような状況になったのかについて、安倍首相は悟らねばならない。自業自得ではないだろうか」などとする読者の意見も掲載した。 
 一連の韓国紙の報道は日支首脳会談の実現に対する衝撃を象徴している。だが、日支首脳会談に応じた支那の習政権への批判は控えている。
 同時期米支首脳会談も行なわれた。
●一一月一一日、APEC出席のため北京を訪れたオバマ米大統領は北京の要人居住区の中南海で、習国家主席と私的な夕食をはさんで会談した。
 会談の冒頭、オバマ大統領は「米支がともに有効に取り組むことができれば、世界全体の利益になる」と発言。「関係を新たな段階に引き上げよう」と呼びかけた。習主席も課題に米側と取り組む考えを示した。
 両首脳は、昨年六月の習訪米と同様に、ノーネクタイで会談した。米側によると、会談にはケリー国務長官、ライス大統領補佐官らも同席した。
翌一二日、オバマ大統領と習主席は北京で会談し、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する目標で合意した。
 合意内容によると、米国は二〇二五年までに排出量を〇五年比で二六~二八%削減し、支那も三〇年までに同様の削減に転じることを目指す。
 オバマ大統領は習主席との共同記者会見で、「世界の二大経済大国として、またエネルギー消費大国、温室効果ガス排出大国として、米支両国には気候変動問題への取り組みを主導する特別な責任がある」と語った。
 そして「途上国、先進国を問わず、すべての主要経済国が過去の対立を乗り越え、来年の気候変動パリ会議で強力な枠組み合意を成立させることができるよう願っている」と述べた。
 米ホワイトハウスによると、最終的には五〇年までに温室効果ガスを八〇%削減することを目標とする。米政権高官はこれについて「野心的だが達成可能な目標だ」と語り、議会では野党・共和党の抵抗が予想されるものの、大統領が単独で権限を行使すれば実現できるとの見方を示した。
日露・日支・米支首脳会談は北京で行なわれた。一一月九日には支露首脳会談も行なわれた。
一連の流れは、国際政治における米一極覇権の衰退が多極覇権化する趨勢にあって、支那の存在感を高める結果をもたらしている。  平成二六年一一月二二日記