仏テロ事件への一考察 
   (世界戦略情報「みち」皇紀2675(平成27)年2月1日発行第419号)

●一月一一日、七日に起きたフランスの風刺週刊紙シャルリー・エブド銃撃などの一連のテロ事件で犠牲となった一七人を追悼し、テロに屈しない決意を示そうと、パリで数十万人が参加した大規模デモ行進が行なわれた。国や宗教の違いを超え、言論の自由など普遍的価値の下への結集をオランド大統領が呼び掛け、市民とともに世界各国の首脳が肩を並べた。デモ隊は週刊紙本社に近いレピュブリック(共和国)広場から南東へ約三キロ離れたナシオン広場まで行進した。
 同一一日、フランス内務省はパリの大規模デモ参加者は一二〇万~一六〇万人と発表。このパリを含めた全土でのデモ参加者は計三七〇万人に達し「フランスの歴史上最大」とした。
 パリ以外ではリヨンで三〇万人、ボルドーで一〇万人など各地で数万人から数十万人規模のデモが展開された。
 パリのデモでは犠牲者の家族を先頭に、オランド仏大統領とメルケル独首相やキャメロン英首相、レンツィ伊首相ら欧州首脳をはじめ、イスラム圏のトルコのダウトオール首相、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長のほか、ラブロフ露外相ら外国首脳が四〇人以上参加したと報道された。
 だが、各国首脳は別個に彼らだけの抗議集会を行なったが、メディアは一般の市民デモの先頭に立ったように写真報道を偽造していた。そして各国首脳のなかにはオバマ米大統領の姿は無かった。
 一月一一日、パリで大規模な反テロ抗議デモが行なわれた当日、銃撃事件のあったフランス週刊紙シャルリー・エブドのイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を転載したドイツ・ハンブルクの新聞社ハンブルガー・モルゲンポストが放火された。風刺画転載への反発の可能性がある。
●翌一月一二日、前日の一一日にパリで実施された反テロの大規模行進にオバマ米大統領らが参加しなかったことについて、アーネスト米報道官は「米国からもっと高位の人物を送り出すべきだった」と、判断の誤りを認めた。
 アーネスト報道官は「状況が多少でも異なれば、大統領は参加したい意向だった」と説明。しかし検討が始まったのは行進が三六時間後に迫った九日夜だったため、事前に警備態勢を手配する時間がなかったと述べた。さらに、大統領が参加していればほかの参加者の行動もさらに制限されただろうと指摘した。
 同報道官は一方で、米国の国民と政権がフランスを支援する立場に疑いはないと強調した。
 米国から参加したのはハートリー駐仏大使とヌランド国務次官補。オバマ大統領やケリー国務長官、ホルダー司法長官らの姿はなかった。これに対し、米国内の野党・共和党勢力や国外から批判の声が上がっている。その背景にはスケジュールに問題があったというわけではない様相が滲み出ていた。
 オバマ大統領と政権スタッフ側は、パリで起きたテロ事件の真相をある程度把握していた節が濃厚である。その真相とは、イスラム過激派勢力の蛮行を使嗾することで欧米キリスト教世界に反イスラム気運を醸成して世界情勢を終末・ハルマゲドン状況に陥れ、同時に世界金融恐慌懸念を演出して世界大戦規模の大混乱を引き起こしたいとするユダヤ系国際金融勢力による世界一元化の思惑である。
 オバマ政権はその陰謀的な野望に米国が組み込まれることを忌避すべく、国際金融資本勢力の傀儡と化した議会側と激しい攻防に明け暮れている。
 その内実の一端をトルコ政府が暴露している。
●一月一二日、パリのテロ反対デモにイスラエルのネタニヤフ首相が参加したことを、トルコのエルドアン大統領が批判。「パレスチナ人にテロ行為を行なっている者が、どういうつもりで行進に参加したのか」と発言した。
またトルコのメディアはオランド仏大統領がネタニヤフ首相と握手する写真を掲載し、オランド大統領がいかにも嫌そうに手を握ることでネタニヤフ首相を嫌悪する気持ちを顕わにしていたと紹介している。
 一月一四日、ヨーロッパとアジアに駐在するイスラエル大使を集め、リーバーマン外相が演説。トルコの大統領の反ユダヤ発言に、EU指導者が沈黙しているのはナチが台頭した一九三〇年代と同じだと指摘した。
 一月一五日、トルコのエルドアン大統領に続き、ダウトオール首相も「イスラエル政府のガザでの行為はパリでのテロと同類だ」と発言した。
 トルコの政府首脳は、イスラエルのネタニヤフ政権のパレスチナ勢力への蛮行をテロ行為と批判している。その批判の根拠は、突如として登場し蛮行・テロ戦術を繰り返し始めたイスラム教スンニ派系「イスラム国」(IS)を立ち上げ、彼らを使嗾してキリスト教文明世界とイスラム教世界の対立(文明の対立)を演出している背景には、米国ネオコン系軍産複合体勢力とイスラエルの情報機関モサド、および右派シオニスト勢力による合作連帯の野望がある、と認識しているからだ。
 一月一二日、トルコのチャブシオール外相は、フランス週刊紙銃撃事件に続く連続立て籠り事件でパリ東部の食料品店に籠城し、一月九日に射殺されたアメディ・クリバリ容疑者(三二)の内縁の妻ハヤト・ブーメディエンヌ容疑者(二六)が事件前の二日トルコに入国、八日に隣国シリアに向け出国したことを確認した。仏当局にもすでに通報したとされている。
 一方、トルコ紙ハベルトゥルクは情報当局者の話として、同容疑者は仏人男性メヘディ・ベルフシーヌ氏(二三)とともに入国し、その後シリアの過激派「イスラム国」支配地域に入ったと推測されると報道。一緒に行動していた男性の存在が新たに浮上した。同紙によると、二人は二日にマドリードからトルコのイスタンブールに到着した。
●フランスで週刊紙銃撃事件などテロが相次いで起きたことを受け、一月一一日にパリで開かれた欧米諸国のテロ対策担当閣僚による緊急会合は、航空機など交通機関の旅客に関し、各国間で情報共有を進めることで一致した。人の移動の自由や個人情報保護などの理想を掲げるEUはこれまで、こうした措置を見送ってきた。
 会合の後、記者会見したカズヌーブ仏内相は「すべての民主主義国家が試練に直面している」と、対テロ国際協調の必要性を強調。EU加盟国を中心に、旅券なしに移動の自由を定めた「シェンゲン協定」の規定の見直しにも言及した。
 旅客情報共有の法制化をめぐっては、欧州議会とEU加盟国が過去に折衝を繰り返してきた。英フィナンシャル・タイムズ紙によると、左派系などの一部の欧州議会議員が、「無制限の個人情報の共有は治安の向上に役立たない」などと主張してきたからだとされていた。
 またフランスで発生した風刺週刊紙への襲撃事件と二件の立て籠り事件を受けて、同国当局はテロへの警戒を強め、警官らに武器を携行するよう呼び掛けている。
 仏警察の情報筋によると、同国では九日から一〇日にかけての二四時間に、これまで潜伏していた複数のテロ組織が活動を開始したとされる。警察が標的となる恐れがあることから、警官らにはソーシャルメディアでの発言を中止し、武器を常時携行するよう指示が出た。
●一月一四日、国際テロ組織アルカイダ系の「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)は、フランスの週刊新聞「シャルリー・エブド」襲撃の犯行を認めるビデオ声明を出した。
 声明では、ナセル・イビン・アル・アンシと名乗るAQAP幹部が襲撃計画は数年間練られていたと主張。AQAPで広報担当などを務めていた米国生まれのアンワル・アウラキ師が襲撃の首謀者ともした。同師は二〇一一年に米国の無人機攻撃で殺害された。
 襲撃事件に絡んでは、実行犯の二人がAQAPの拠点がある中東イエメンを訪れた際、アウラキ師と面会した可能性も取り沙汰されている。パリではシャルリー・エブド紙襲撃に呼応する形でユダヤ系スーパーでのテロ事件も発生していた。AQAPの声明はこの事件への関与には触れなかったが、実行犯の行動を称賛した。
●一月一四日、フランスの風刺週刊紙本社銃撃など一連のテロに絡み、オランド仏大統領は仏軍の原子力空母「シャルル・ドゴール」をペルシア湾に派遣する意向を表明した。「イスラム国」掃討のため、米軍など有志連合の軍事作戦を支援すると、仏南部トゥーロンに停泊中の同艦艦上で行なった年頭の演説で述べた。また、シリア内戦への対応の遅れが「イスラム国」の勢力拡大を招いたとして後悔の念を表明、暗に米国を批判した。
 フランスはイラク領内に対象を限定し、イスラム国への空爆に参加。空母の派遣は以前から決まっていたが、バルス首相が「テロとの戦いに入った」と宣言した直後の大統領の発言とあって、「イスラム国」との対決姿勢を鮮明にした形だ。
 また、オランド仏大統領は「国際社会が必要なときに行動を起こさなかった事実を今も悔やんでいる」と強調した。二〇一三年にシリアで化学兵器の使用疑惑が浮上した際、米仏は軍事介入を目指す意向を示したが、米国が方針を転換した。同氏はこの結果、イラクやシリアで「イスラム国」の「支配地域拡大」を許したとの認識を示した。
 オランド仏大統領は週刊紙銃撃事件にふれ、「人を殺せても理念までは殺せない」などと主張し、過激派に対する軍事作戦がテロ封じ込めにつながると訴えた。
 一方、フランスの風刺週刊紙本社などで起きた一連のテロについてロシアの主要メディアでは、欧米が重視する「言論の自由」が事件を招いたのであり、イスラム教を風刺した同紙も咎められるべきだ……と、冷淡にとらえる論調が目立っている。さらに犯行を「米国の陰謀」とする報道も多く、欧米との距離が改めて浮かび上がった。
 パリのテロ事件は天啓一神教世界の神々の争いをさらに激化させている。その趨勢にあって同胞二人が「イスラム国」に捕らわれ、日本もその争いに巻き込まれようとしている。 平成二七年一月二四日記