黒潮文明論    索引  

                   

 27 南洋諸島と黒潮民族日本の責任
           (世界戦略情報「みち」皇紀2670(平成22)年5月15日第316号)

●海兵隊の基地移転問題で日本と米国との戦後関係を再定義する動きが出た。沖縄を占領してベリー提督以来の野心を満足させた米国は、三軍がそれぞれに基地を作り、特殊な外征の軍隊である海兵隊も普天間基地を作った。沖縄返還は成ったが、太平洋の要石に変わりはない。一九世紀末にハワイを併合し、その先の飛び石としてフィリピンを考えていたが、いつまで経っても国内の争乱はなくならず、香港と広東経由で、門戸開放政策の要となるはずの国が汚職と寡頭政治となるばかりの政情不安で、火山の噴火をこれ幸いと航空基地と海軍基地を閉鎖した。その分、沖縄の基地はアジアの地勢からも扇の要のようになって重要になった。米中国交回復の時の取引も、渡嘉敷島の中距離弾道弾のメースBであったことが記憶に残る。「県外」移設と言って、同じ琉球の黒潮の流れで切り取られ、奄美の島のひとつの徳之島に海兵隊の一部の機能を移すとのことであるが、県外の定義に徳之島も含まれるとなると、せっかく去年が一六○九年の薩摩の琉球征伐四〇〇周年で、恨み辛みを時の沙汰として、仲直りの儀式や会合をした甲斐がなくなる。教養や、情念や歴史への畏敬が政策立案者に欠けているようで、ペリー提督も沖縄で海兵隊をまず上陸させ、武力を誇示して、意固地なところを見せつけて脅してから琉米和親条約を結び、江戸湾に乗りんだ歴史など、頭の隅にもないようだ。しかも、海兵隊の機能を全国に分散・展開するなどと言われても、宣戦布告をしないで、大統領命令だけで外国に乗り込み、要人を捕まえたりする外征専門部隊が町中を闊歩する光景はまさに隷従そのものの姿だから、納得する日本人はよもやいまい。外国の大統領の前でエレキを弾く真似をして媚びた総理大臣がいたが、それよりも屈辱的で、なお質(たち)が悪い。沖縄の米国総領事館は那覇にはなく琉球王朝の墳墓のある浦添にあるが、徳之島を含む奄美の島々も元は琉球の版図であるから管轄下に入り、昭和二八年の奄美群島の祖国復帰があっても、変わっていない。領事館員がダイビングの趣味と称して、沖縄よりも手づかずの奄美の海岸で、北朝鮮からの不審船の形跡を調べ神経を尖らせる可能性も不思議ではない。
●南洋諸島も東京から飛行機で行けば近いのであるが、日本の外交組織は、領事館を置いても担当者が一人二人で、なおざりにしている気配で、国連の信託統治と称して、日本の敗戦で、南洋群島を事実上領有してしまった国の首都の大使館を経由する情報交換を正式にするというばかげた現実である。浦添の米国総領事館が、奄美まで兼館している歴史の認識とは大違いではないだろうか。
 北マリアナのテニアン島から普天間の代替になってもいいという話がある。テニアンから、広島に投下する原爆を乗せたエノラゲイが飛び立ったことを知っているのだろうか。テニアンには産業がないので、基地移転もそうした生き残りのための画策であり、カジノも誘致はしたが、客は少ない。日本領土であったところ、しかも日系人が残っているところ、そこを「海外」に仕立て上げて、カネをばらまいて、外国の海兵隊の基地を引っ越しさせるというのは、何とも見識のない話である。日本の思いやり予算と称する移転費用の大盤振る舞いが、移転に期待を持たせ、かつ助長しているのではないか。北マリアナに続いて、パラオ共和国のアンガウルが普天間代替基地に手を挙げて、四月下旬に議会で決議を採択したという。アンガウルは、日本統治の時代に四五〇万トンもの燐鉱石を採掘して、戦後も肥料の原料を供給し続けた。ペリリュー玉砕の足場となった約三千メートルの滑走路が米軍により建設され本土爆撃の拠点となったが、使用されていないし、もう人口も三百人になってしまったから、米軍基地に転用できないかとのカネの思惑が出た。燐鉱石採掘による被害賠償請求が日本に対して出されているとの話もある。世界的な根拠のない市場原理主義のグローバリゼーションで、島のわずかな産業も壊滅的になったから、グアムのように米国直轄地ではなく、より自治権の強い立場から、連島化ならぬ連邦化が進められる中で、沖縄の海兵隊移設は、ミクロネシア大統領サミット等でも毎回議案に取り上げられ、経済波及効果と環境への影響を議論している。島嶼経済が逼迫する中での苦渋に満ちた議論である。日本は戦争に負けたことを理由にして、南洋諸島を置き去りにしたのである。
 基地移転の現実的な可能性だが、島に水があるかどうかが鍵だとすると、グアムには水があるが、テニアンはない。アンガウルでは、水はあるのか。栃木の部隊が玉砕している。いつまで米国は支那と日本とを天秤にかけるのか。日本はいつまで、依存を続けるのか。黒潮の民の日本が大陸に無理に進出したのは、名誉白人として米国の先導役をしたのではないのか。そろそろ、普天間基地を閉鎖し沖縄を全面返還して、米軍は日本から撤退する。日本の自主防衛強化こそ、日米の安定と共通の利益のために必要である。片務的な主従関係などやめよう。
(つづく)