黒潮文明論    索引  

                   

 

   112 南米起源の古代人類は存在するか
              (世界戦略情報「みち」皇紀2674(平成26)年4月1日第401号)

●モアイ像は、長頭・長耳の人面が彫刻された巨石で作った人像のことで、南太平洋の絶海の孤島であるイースター島にある。モアイ像はマルケサス諸島やオーストラル諸島といった南太平洋の島々の遺跡からも発見されている。日本でもモヤイ像が伊豆の新島の石で創作され、東京の渋谷駅の西口に、待ち合わせの場所の目印として置かれている。ヘイエルダールというノルウェーの冒険家が、南米大陸先住民がイースター島に移住したとする説を証明しようとして、エクアドル沿岸のジャングルからバルサ材を切り出して筏をつくり、ペルーのカヤオの港から出航して南東貿易風に沿う南太平洋を循環する海流に乗りイースター島を目指したことがあった。南米の海岸を北側に流れるフンボルト海流を横切る必要があったので、ペルー海軍の引き船に引っ張られて陸地から八〇キロ離れた所から出発したことが裏目になって、イースター島の北側を通過し違う環礁に着いてしまったが、筏で南米の大陸から南太平洋の島まで航海することが可能であることが実証され大いに話題となり、記録映画『コン・ティキ』も製作されてハリウッドの長編ドキュメンタリー部門の一九五一年度アカデミー賞をとった。筏の名前はインカ帝国の太陽神アプ・コン・ティキ・ピラコチャの名前にちなんでつけられた。ところが、ヘイエルダールは海洋冒険家としての評価は得たものの学者としての評価は定まらなかったので、イースター島の南米起源説を補強しようとして、学術調査隊を編成してモアイ像を発掘したり、イースター島に残るロンゴロンゴ語と呼ばれる古い文字の書かれた木片を収集したり、その他の遺跡や人骨の発掘調査などを行なった。これまた、『アクアク』というドキュメンタリー映像にまとめて評判をとった。探検記は世界的なベストセラーになった。ところが、ヘイエルダールの主張とは逆に、イースター島の文明の起源は南米ではなくポリネシアとする説が学会では有力となり、一九八〇年代に至って遺伝子研究が盛んとなってから一層有力となった。その結果、ヘイエルダールの仮説は退けられるに至った。皮肉なことに、英国の学者が遺伝子分析の試料に使った人骨は、ヘイエルダールが発掘してサンチアゴの博物館に保存していたものだった。
●天眼鏡をあてて、骨相を見て人品を判断するだけではなく、世界各国の交流がどんどん進んでくると、髪の色から顔形を見ただけで、どこのお国の人かを推測する技量が必要である。四〇年以上前の米国横断のバス旅行で、前席に座っているのが、日本人なのか支那人か、朝鮮・韓国人であるのか、その他のアジア人であるのか、白人の運転手に皆目見当はつかなかったのであるが、アジア人の間では、頭骨形の微妙に異なる特徴から、何人らしいと言う推測はできる。頭長幅指数とは、頭を上から見た形の長さと幅との比を数値化したもので、超長頭型六四・九以下、過長頭型六五・〇~六九・九、長頭型七〇・〇~七四・九、中頭型七五・〇~七九・九、短頭型八〇・〇~八四・九、過短頭型八五・〇~八九・九、超短頭型九〇・〇以上の区分がある。現代の日本人は短頭型が主流であり、支那人は中頭型、朝鮮・韓国人は過短頭型が多いとされる。白色人種群では北方人種と地中海人種が長頭から中頭、アルプス人種が短頭、黄色人種群では古モンゴロイドに長頭が多く、新モンゴロイドに短頭が多く、黒色人種群では長頭が多いとされる。人種偏見の根拠にされた時代もあり、同じ白人でもドイツ人は長頭、フランス人は短頭が主流であるから、どちらが優勢か争いがあった。日本人は古墳時代頃からどんどん長頭化して、鎌倉時代に長くなったことが、当時の人骨の計測でわかっている。頭が特に長い人のことを昔は「才槌(さいづち)」と呼んだが、今は死語である。絶壁頭とは短頭化した頭だからだ。徳之島松原地区では頭頂の出っ張りを「みにしゅし」と名付けている。
●頭の形で分類すると、タスマニア、マレー川、クィーンズランド、ニューサウスウェールズなどに居住する豪州の原住民と、メラネシアに属するバヌアツ、ニューブリテン、セピック川、ビアク島、ニューアイルランド、フィジーの人々が比較的長頭の一群となり、その次が、ポリネシアのトンガ、サモア、ニュージーランドのマオリ、タヒチ、ハワイ、マルケサス、ミクロネシアのグアム、キャロライン群島などが一群となり、ベトナム、小スンダ、ボルネオ、ジャワ、スラベシ、カンボジア、ラオス、フィリピン、スル海の人々が一群をなし、次に比較的短頭の一群が、台湾の原住民、バンチェンの遺跡のあるタイ、そして日本人などを一群にまとめることができる。支那や北アジア住民はより短頭の一群となる。
●さて、ヘイエルダールの仮説は遺伝子分析で退けられたが、モアイ像は、東アフリカを出自とする現在の人類の像ではなく、ポリネシアから渡ってくる前にイースター島にいた南米起源の古代人類で、今は死に絶えた超長頭の人々の像と考えることはできないだろうか。 (つづく)