黒潮文明論    索引  

                   

 

 118 急げ独自の深海探査技術開発
         (世界戦略情報「みち」皇紀2674(平成26)年7月1日第407号)

●メタンハイドレートを真剣に調査するばかりでなく、採掘を目指して技術開発や調査を行なっている国は、今のところ日本だけである。北極海にもメタンハイドレートが存在することは確認されているが、カナダもロシアもメタンハイドレートに対する関心をほとんど見せていない。資源大国であり、他のエネルギー資源が潤沢にあるからという理由だろう。もちろん諸外国は鵜の目鷹の目で日本の動きを注視・観察している。ドイツは、キールに海洋調査のセンターを設けて、メタンハイドレートの埋蔵量予測などを行なうばかりではなく、二酸化炭素を海底に戻す、即ち、二酸化炭素ハイドレートを海底の地層に閉じ込めて、メタンから生じる地球温暖化の副作用を抑制しようとする、シュガー(砂糖)と名付けた実験を今年中にも朝鮮半島沿岸で実行する予定だ。韓国を巻き込んで日本近海のメタンハイドレート開発に関与しようとのドイツの魂胆が窺える。
 日本は海底地層の探査技術について、ノルウェー王国の技術に頼っていることをここで特筆しておきたい。例えば、コングスベルグ社などと契約して調査を行なっているが、調査技術は全くブラックボックスの中にあり、日本は調査船の建造技術は自前になったにしても、海底地層探査技術はノルウェーの企業の技術に遠く及ばず、ノルウェーは契約以外のデータは、当然のことではあるが、決して日本側に提供しない。海底地層の三次元探査の新しい基礎技術を日本は保有していないのだ。ヨーロッパのエネルギー消費はここ数十年先を展望して、ロシアの天然ガス生産に依存し続ける実態にあるが、ノルウェーは、北海油田の天然ガスと産油国の立場を維持する観点から、日本のメタンハイドレートの探査に一定程度協力して、世界的な資源保全を効率的かつ慎重に進めている。ノルウェーは、二〇〇七年に、長期的な協力関係をつくるとして、地震探査船と技術一式を、七万平方キロに及ぶ大陸棚を調査するために二億一三〇〇万ドルの価格で日本側に提供すると発表した。ノルウェーでは、実に八〇〇〇年前には大地滑りが発生して、北ヨーロッパ全体に波及するような大津波が発生したことがあるから、メタンハイドレートが採掘された場合に、大陸棚と深海との境界線にあるメタンハイドレートが接着剤の役割をしなくなって大陸棚の大地滑りを引き起こす可能性についても注意を喚起している。日本とノルウェーの協力で日本に提供された、ノルウェー船籍であった地震探査船ラムフォーム・ビクトリー号が東支那海で調査を行なったとき、支那の海洋警察はスパイ行為として、海洋調査の中止を求め、追尾するなどの威圧行為をしたことは記憶に新しい。この探査船は後に日本の公有船に登録して日本の責任を明らかにしたが、その探査データを基に、当時の故中川昭一経済産業大臣は関係者の面前で、ジュースを入れた一つのコップに二つのストローを差し込み、東支那海の日本側大陸棚資源を支那が横取りしていることに抗議している。
●支那は三〇〇〇メートルの深海で天然ガスの採掘を行なう能力を有するが、実は、東支那海よりも南支那海の資源埋蔵量の方が遙かに大きい。南支那海は一番深いところで四五〇〇メートル程度であるので、その深度を目標にして海底掘削技術を開発してきている。二〇一二年六月一五日マリアナ海溝で水深六六七一メートルまで、「蛟竜」という名称の有人潜水艇を潜水させることに成功し、日本の潜水艇「しんかい六五〇〇」が達成した六五二七メートルの記録を抜いた。翌週二四日には、七〇一五メートルまで潜水することに成功しているが、これは、日本の技術を抜いたと誇示するための国威発揚の為の潜水であった。もちろん、実態はロシアの技術協力を受けて開発され、外見もロシアの深海潜水艇ミールと同じように上面だけを赤く、それ以外を白色に塗装している。国産技術が六割になっていると主張しているが、それは、ロシアの技術を国内で製造するために用いたことも含めての数字である。支那の潜水艇の耐圧殻は、側板六枚、反対側六枚、天板、床板一枚ずつの計一四枚の板が手で溶接されており、その技術が、ロシアからの供与なのか、支那の独自技術なのかは判然としない。潜水の記録を超された日本の対応としては、例えば一万二〇〇〇メートルの深海に潜水できる潜水艇の開発を目指し「しんかい一二〇〇〇」を立ち上げるにしても、これまでの潜水艇のように海底に達するまでに一〇時間近くも時間がかかる潜水艇ではなく、もっと早く潜れる、例えば電池の推進力で勢いよく深海に突っ込む潜水艇など、新しい概念に基づく開発が必要であり、従来の気球型の潜水艇の開発はそれほど意味がないとの見方がある。無人の海中ロボットを支那はカナダから調達しているが、カナダは国際世論に配慮してわざわざ旧式のロボットを売却している。海底情報については、無人ロボットの発達により、海底に高さ三〇メートルもある煙突状の熱水噴出孔(チムニー)があったり、紅(べに)ズワイガニが集まっていること等、新たな知見が続々ともたらされている。(つづく)