常夜燈索引 

                

    改めてツランを想ふ 
    (世界戦略情報「みち」平成16年(2664)9月1日第190号) 

▼世界地圖を廣げ「ツラン平原はこのあたり」と指し示せる人が居たらよほどの通であらう。地圖にはそんな地名など載つて居ないものがザラにある。アジアからヨーロッパにまたがる大陸をユーラシア大陸と呼ぶ。ユーラシア大陸の面積は五千五百萬平方キロメートルで、世界の陸地の三分の一におよぶ。この廣大な地域に生活する人々がツラン民族と呼ばれる黄色人種である。
 日本人も廣い意味でのツラン民族に入るが、ツラン民族の系統・分類については學者により異見が多い。ドイツ生れの英國の比較言語學者・宗教學者マックス・ミューラー(一八二三ー一九〇〇)は、初期にツラン民族を北ツラン民族と南ツラン民族の二派に分け、前者をウラル・アルタイ民族として五つに分ち、後者を四つに分けたが、後にはウラル・アルタイ語族のみをツラン民族と呼ぶに至つた。北ウラル・アルタイ民族の五派とは、ツングース、モンゴル、トルコ・タタール、フィン・ウゴール、サモエードであり、南ツラン民族の四派とはタマル(タミル語族)、ボーチャ(ティベット・ブータン語族)、タイ(シャム)、マライである。
▼これに對し、ハンガリーのツラン協會會長チョーノキ・イェノ博士は①フィン・ウゴル族、②トルコ・タタール族、③アルタイ族、④日本人、⑤蒙古人、⑥支那人と分類する。また金田一京助博士も獨自の分類を試みた。北川鹿藏は、①ツングース族、②蒙古人、③トルコ・タタール族、④フィン・ウゴル族といふ分類を提示してゐる。
▼ハンチントンで名高い「文明の衝突」は、あたかも世界にはイスラム文明と歐米文明としかなく、その〝二大〟文明の最終戰爭が起こることを豫言した。歐米文明はとりもなほさずキリスト教文明であり、文明は宗教の名を冠せられて強大となる。これに對してツラン文明には冠せられる宗教がない。あえて言へばもう亡び去つてしまつたゾロアスター教であり、今なほ現に行なはれてゐる地方があるシャーマニズムである。
 シャーマンはトルコでは「カム」と呼ばれてゐる。カムは一人で祈祷者・預言者・醫師を兼ねる。危險・病氣・死・家畜の病氣等が起こると、家長はカムを招く。トルコ人は先祖の諸靈と同樣、太陽・月・火・空氣・土地・水のやうな自然物を禮拜すると西歐の學者は述べて居る。だが、西洋人にとっては、シャーマニズムは〝魔術〟(呪術)であり、迷信であつて宗教ではないのである。
 トルコではシャーマニズムはアルタイ地帶の溪谷に生活する二,三の種族に傳はるのみで、東は佛教に、北と西はキリスト教に、他の地方はイスラム教に影響されシャーマニズムは撲滅されてしまつた。だが、ツングース人の間では全種族がシャーマニストであり、蒙古人やバイカル湖畔のブリヤート人、カザック・キルギースの間等々では、この古代宗教の明白な痕跡が見られるのである。
▼ツランを愛する人々は、近代文明の先駆となつた世界最古の文明シュメール文明はツラン民族圏に栄えたツラン民族の所産であり、ユダヤ人あるいはアーリア人はあたかも自分たちの祖先の創建にかかるものであるかのやうに執拗に宣伝して居るけれども事実はその反対で、ツラン文化を継承したものに過ぎないと主張する。
 だが、この主張は妥当ではない。ユダヤ人ゼカリア・シッチンが明らかにしたところによれば、シュメール粘土板の研究によりシュメール文明なるものは、惑星ニビルより飛来した高度の知性を有するアヌンナキが構築したものである。ただしアヌンナキ(旧約全書ではネフィリムといふ)は知性のみを有する特殊な異星人であり、遺伝子操作により、神に奉仕する奴隷を開発、繁殖させた。そしてより快適に自分たちがこの地球で生きて行くために、シュメール文明といふシステムを奴隷人間に与えたのである。シュメール文明は最初から支配のシステムであつた。
▼シュメールは間違なくツラン圈であつた。そこでアヌンナキが奴隸人間を造り出したといふことも間違のない事實であつた。彼等はロボットを開發したのではなかつた。生身の人間に遺傳子操作を加へ子供を産ませて勞働の場で働かせたのである。多數の奴隸を生産するための〝原料〟をどこから得たのか。ツラン民族がその原料であつた。
 ツランといふのは、シュメール語で、天子・天の保持者・天の帝などを意味した。ツラン神話學者によれば、ツラン神話にほぼ共通する物語は次のやうなものである。
 太陽の神が最初地球を創造した。そして太陽の子が地上に降下した。ある日、彼は地球の乙女と出會ひ夫婦の契りを結んだ。その子孫が繁榮して、太陽の血統者である黄金色の民族すなはち黄色人種となつた。
 黄色人種の幸福な生活に羨望の念に堪へなかつたのが、月であつた。月も子供を地球に降下させ地上の乙女と結婚し、子孫を殖やした。その子孫が白色人種である。
 太陽は善美の基である。その熱は冬の寒さを追ひやり花を咲かせ果實を實らせる。すべての美、すべての善は太陽から生れる。故に、太陽の子は善良で恩情がある。月は冷やかで妖怪の横行する夜、現れる。故に、月の子は冷酷で猜疑心が強く、異種族を敵視し壓迫し搾取する……、すなはち白色人種である。
 シュメールで生活してゐた人のよいツラン民族は、突然進入してきた知惠の長けたアヌンナキに物の見事にしてやられた。このアヌンナキの末裔がユダヤ人である。
▼ツラニズムはわが國へは昭和一七年に今岡十一郎著『ツラン民族圈』(龍吟社)によつて紹介された。英國が植民地支配の網を全世界に廣げ、それに對してハンガリーを初めツラニズムの波が澎湃として起こつた時期だつた。植民地支配のノウハウに長けてゐる英國はすでに詳細なるツラニズム分析を試みてゐた。そしてツラニズム怖るるに足らずと見通してゐた。眞にツラニズムを掲げうるのは、わが國だけだつたのであるが……。 (赤不動)