常夜燈索引

              

   「薬づけを防ぐために」 
   (世界戦略情報「みち」平成18年(2666)12月15日第241号) 

▼體の具合が惡ければ醫者に診て貰ふか藥屋に行つて藥を買つてくる。現在は醫學が進歩してゐて金さへ出せば、進んだ治療を受けることができる。ところが世の中からは病人は無くならないどころか、ますます新手の病氣が増えてゐいる。治つたと思つた病氣が、ここでもかしこでも再發してゐる。
 そこへ一册の本が現れた。爪を二分もむだけで多くの病氣が治るといふ『奇跡が起こる爪もみ療法』(マキノ出版・ビタミン文庫、平成一四年刊)である。著者は日本自立神經免疫治療研究會〔編〕、新潟大學大學院醫學部教授安保(あぼ)徹(とほる)+福田醫院醫師福田稔(みのる)〔監修〕である。
▼爪もみ療法といふのは、爪の兩脇の生え際を一日二,三囘、反對側の親指と示指でギュッともんで刺戟するといふだけのことを何ヵ月か續けるだけのことだが、これにより、糖尿病、高血壓、子宮内膜症、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、腦梗塞後遺症、自律神經失調症、突發性難聽、ドライマウス、ガン、圓形脱毛症等々が治るといふ實際例が收録されてゐる。さらになぜ爪もみ療法で病氣が治るのかが、明快、丁寧に解説されてゐる。
▼ここのところ健康法に關する本が、いろいろと出てゐる。足裏叩き(足叩壓(そくこうあつ))のやうに高い效果を擧げてゐるものがあるが、漢方や東洋醫學は系統的でなくてなじめないといふ人には、自立神經免疫療法理論を前提とする爪もみ療法に目を向けるべきではないだらうか。一方で、この療法は、二千年前の漢の時代から重要視されてゐた治療法でもあつたのだ。
▼著者の一人・安保(あぼ)徹(とほる)氏は、一九四七年に青森縣に生れ、東北大學醫學部卒業後、一九九六年、白血球の自律神經支配のメカニズムを初めて解明し、國際的な場で精力的に研究成果を發表『「藥をやめる」と病氣は治る』『ガンは自分で治せる』『免疫革命』その他多數の著書がある。
 もう一人の福田稔(みのる)氏は一九三九年に福島縣に生れ、福田醫院の醫師で、新潟大學醫學部卒業後、一八九六年に井穴(せいけつ)・頭部刺絡療法研究會を主宰する淺見鐵男氏と出會ひ獨自の研究を重ね、注射針やレーザーで皮膚を刺戟して病氣を治す自立神經免疫療法を確立し、アトピー性皮膚炎、膠原病、パーキンソン病、ガンなど難病の治療に著しい效果をあげた。『難病を治す驚異の刺絡療法』『ガンはここまで治せる』等々の著書がある。
このお二人が共同で發見されたのが、「福田─安保理論」である。
▼人間の體は精妙である。相拮抗する力がバランスをとつて働いているから、健康でいられるのである。すなはち、免疫と呼ばれる自己防衞システムが備はつてゐて、ウィルスや細菌、ガン細胞などの攻撃から守つてゐるのである。その免疫システムのなかで主役となってゐるのが、血液中を流れる白血球であるが、白血球は内臓や血管の働きを調整してゐる自律神経の支配を受けてゐることを発見したのが、福田―安保理論であった。
▼自律神経には、正反対の働きをする「交感神経」と「副交感神経」とがある。この二種は、シーソーのようにお互いに正反対の働きをしながら、バランスをとり生命を維持存續させてゐる。とても人間業とは思へない働きである。
 交感神経は、主に昼間の活動時やスポーツを行ふときに優位に働き、心臓の拍動を高め、血管を収縮させて血圧をあげ、消化管の働きを鎮めて、活動にふさわしい状態に整える。
 一方の副交感神経は、休息時や食事をするときなどに優位に働き、心臓の動きや呼吸をゆるやかにし、血管を拡張して血流を促し、心身をリラックスさせる。さらに、副交感神経には、細胞に分泌や排泄を促す働きがあり、消化液の分泌や排便が促進される。
▼自律神経は白血球をどのやうな形で調整するのか。
白血球には、顆粒球(くわりふきゅう)とリンパ球とがある。顆粒球はサイズの大きな細菌や死んだ細胞を食べて処理する細胞で、リンパ球はウィルスなどの小さな異物をとらえて処理する細胞である。自律神経は、この顆粒球とリンパ球の數や働きを調整する。
 自律神経には、日内リズムがあって、日中は交感神経が優位になって顆粒球が増え、夜は副交感神経が優位になってリンパ球が増えることが分かっている。人間は、こうして自律神経と白血球を連携させて、環境に順応し命を存続させる最良の状態を保っている。
▼大切なのは。すべての病気は自律神経の乱れによって引き起こされるということである。
 福田醫師が福田─安保理論發見によって氣付いたことは、手術は眞の治療法ではないといふことだつた。病氣が起る仕組と治る仕組とは共通であり、すべてはストレスによる自律神經の亂れが原因であった。
 そこから、藥をやめれば病氣は治るという主張が生れる。また、爪もみは自立神經免疫療法の家庭版と言ひ得るのである。今こそ醫療界あげての藥物依存、對症療法依存の呪縛を斷たねばならないのではないか。(赤不動)