常夜燈索引

                 

   『不都合な真実』の真実 
     (世界戦略情報「みち」平成19年(2667)4月1日第247号) 

▼米国のアルバート・ゴア元副大統領が主演した映画『不都合な真実』がアカデミー最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞し、わが国でも安倍首相はじめ多くの政治家や経済人が競って鑑賞するなど、国内外各界各層で話題となっている。映画を見た、ごく普通の人の感想がネット上に掲載されている。

 見終えて呆然。これは絶対に見なきゃダメと、声を大にして叫びたくなるほど、ここで我々に知らされる内容は怖い。そして切実だ。元副大統領のアル・ゴアが、環境問題に関するスライド講演を世界中で開く姿を追ったドキュメンタリー。まさかこんな地球滅亡が目前に迫っているとはーー。(中略)二酸化炭素がどれだけここ数十年で増加したか、それによって引き起こされる環境破壊の様子が、手に取るように理解させられる。二酸化炭素の増加、気温の上昇、北極が縮小して海面の上昇、ハリケーンや竜巻、副次的にSARSなど新たな疾病の出現……。全て地球温暖化に起因し、互いに連鎖していく真実が、膨大なデータによるグラフや表、写真によって次々と映し出される。誰もが絶句するだろう。(後略)

 まじめで正直な人々が、地球の滅亡が目前に迫っていると驚き、ゴアの唱える地球を救うため二酸化炭素を削減し生活や意識を変えようという訴えに共感、真剣に行動しようと考えている。
▼二〇〇四年一一月、ゴアはゴールドマン・サックス関連会社の経営者だったデイビッド・ブラッドと共同でロンドンにジェネレーション・インベストメント・マネジメントという投資ファンドを設立した。両者の姓をとって「Blood and Gore」(血と血糊)ファンドと呼ばれている。同ファンドの投資目的は二酸化炭素排出と温室効果を削減するための金融取引を行なうこと、つまり、排出権ビジネスへの投資だ。
 二〇〇六年十月、ゴアは英国政府の特別顧問に任命された。ゴードン・ブラウン英大蔵大臣から、「気候変動に関する助言」役として有給で委嘱を受けている。英国政府は同時に七〇〇ページにわたる気候変動に関する報告書を発表した。同報告書の結論は排出権や温室効果を取引する国際的な取決めを早急に締結すべき、というものだ。
 二〇〇七年二月、英国政府は同国の中学校全てに映画『不都合な真実』のコピーを配布し、地球温暖化問題の教育に使用させることを発表した。ゴアは「気候大使」として英国各地、欧州各国を講演して廻っている。二月二三日の英地方紙「スコッツマン」は七歳から一一歳までの児童のうち半数が、「地球温暖化の恐怖」によって不眠症に陥っている、と報じている。
▼数年前からブラウン英蔵相は、ロンドン・シティを国際炭素取引市場の中心地にして、現在九〇億ドル程度の市場規模を、数年後には一千億ドル規模にまで拡大させたいと発言している。さらに英国政府は今年四月、国連安保理事会に「気候変動」問題を議題として提出する予定だ。
 三月八日EU議長のメルケル独首相は、二〇二〇年までにEUは温室効果ガス排出を二〇%削減し、一九九〇年水準に戻す、そのためには風力、太陽、水力などを活用すると述べた。
 フランス、チェコ、スロバキア等の諸国から、二〇%削減は事実上不可能であり、経済活動を停滞させると抗議が出ているが、英独伊など主要国は沈黙したままである。
 この目標を達成するには排出権市場で、排出する権利をお金を払って購入し、自国の排出分と相殺しなければならないことになる。
▼米国シカゴにも二〇〇〇年から任意法人として「シカゴ気候変動取引所」(CCX)が設立、ロンドンと連携して二〇〇三年から取引が始まっている。出資者はゴールドマン・サックスやブラックストーンなどのファンド。役員の一人には「環境マフィア」の異名を持つモーリス・ストロングが就任した。国連アース・サミットをはじめとした環境プログラムの主宰者で、ゴアとは環境ビジネスを通じて親密な関係だ。
 ゴアは三月二一日、米議会公聴会で証言し、「二酸化炭素の排出量をただちに現状凍結させ、二〇五〇年までに九〇%削減する必要がある」と指摘。「京都議定書が悪霊に取りつかれてしまっている。(中略)われわれには、より強力な国際条約が必要だ」と同議定書後の新たな条約の締結へ向けた努力と、温暖化防止を図る法令の制定を議会側に求めた。
▼そもそも地球温暖化の主張には根拠がなく、地球上の断片的様相を都合良く繋ぎ合わせたに過ぎない。これを知るブッシュ政権は京都議定書への署名を拒否した。強力な国際条約をというゴアの訴えは、排出権ビジネスを国際的に認知しろ、という要求だ。
 アカデミー賞受賞の翌日、ゴア家の一ヶ月の電力消費量は一般米国家庭の一二倍と伝えられた。ゴアは「その分の排出権を買っている」と答えて失笑を買った。
 英国で環境問題を管掌するのは大蔵省だ。環境をマネー化して市場取引の対象とするためのプロパガンダ、それが『不都合な真実』の真実なのである。(青不動)