常夜燈索引

                 

  「主食は芋」の時代が近い 
   (世界戦略情報「みち」平成19年(2667)12月15日第263号) 

▼芋焼酎の故郷、鹿児島県では近年の焼酎ブームに原料であるサツマイモの生産が追いつかず、中国産の芋を輸入して間に合わせているという。県内でサツマイモ増産も進められているが、コストの安い中国産を冷凍保存して、端境期に使っている。
 平成一三年、農林水産省は「不測時の食料安全保障マニュアル」を食糧危機に備えて決定した。これによると、食料輸入が完全に途絶えた場合、面積当たりの収穫量が多い芋類を主食にするため供給を四~五倍に増やし、食料にならない花卉・工芸作物、飼料作物、カロリーの少ない野菜、果樹の順で作付面積を減らし、芋類などの栽培に転換する。さらに政府が主食を買い上げて価格統制し、割当・配給を実施、河川敷やゴルフ場も活用して作付けするという。芋焼酎ブームの裏側には食料危機を想定した芋増産の思惑が秘められているのかもしれない。
 農水省は国内生産の農産品だけで国民一人当たり一日二〇二〇カロリーを供給する場合の食事メニュー例を発表している。

 朝食=精米茶碗一杯、蒸芋二個、糠漬一皿
 昼食=焼芋二本、蒸芋一個、リンゴ四分の一個
 夕食=精米茶碗一杯、焼芋一本、焼魚一切れ
 調味料(一日分)は砂糖小さじ六杯と油脂小さじ〇・六杯
 これに捕食が次のようになる。
 うどん=二日に一杯
 味噌汁=二日に一杯
 納豆=三日に二パック
 牛乳=六日にコップ一杯
 鶏卵=七日に一個
 食肉=九日に一食

 ということになる。
 昭和二九年当時の供給熱量が、一日一人当たり一九五一カロリーだったので、だいたい当時の水準に戻る計算だ。エネルギーのほとんどを芋類でまかなうことになる。
▼わが国の食料自給率は供給熱量ベースで四〇%であり、個別品目で見ても日本人の伝統的食物の原料をほとんど輸入に依存している。
 個別品目の国内自給率の一例である。

食パン(小麦)   一%
うどん       六二%
そば        二一%
醤油(大豆)     〇%
味噌        三五%
小麦粉        七%
ごま         〇%
納豆        一三%
鶏肉(餌輸入換算)七%
豚肉(同)     五%
牛肉(同)    一〇%
鶏卵(同)     九%
豆腐       三一%

 空恐ろしいばかりの食料海外依存度の高さであり、飽食日本の底がいかに浅いかが分かる。
▼小泉政権時代の平成一七年四月に、経済財政諮問会議は「日本21世紀ビジョン」を発表した。二〇三〇年までに直面する時代の大きな潮流を踏まえ、変化に対応しなければ潜在化する危機とその対策を論じている。
 避けるべきシナリオ、として四点を挙げている。

①人口が減少し、生産活動が縮小。優れた人材が海外に流出、生産性が停滞し経済が縮小。暮らし(一人当たり消費)が貧しくなる。家計蓄積に依存した資本形成は困難になり、国内資本不足、民間投資が停滞。
②成長減速、超高齢化の中、公共サービスの提供が維持できなくなり、財政赤字の放置、政府債務残高の累増から国債価格の急落による財政破綻が生じる。増税に頼る財政再建で個人や企業への負担増。
③グローバル化に取り残され、自由貿易協定(FTA)など地域経済統合の流れに遅れると成長機会を失い閉ざされた元経済大国に。世界経済に占める日本の比重が急速に低下し、日本企業の国際競争力が脅かされる。国際政治の動きに受動的にしか対応できず発言力が低下。
④経済停滞、縮小の中、不安定な低賃金雇用社会となり格差は固定化。希望を持てない人々が増加、社会が動揺し、大都市近郊地域がゴーストタウン化する。

 避けるべき、とは言いながら実際はこうした国家社会に日本が変化するという予言である。
 わが国の経済力の低下や中国、インド、南米など新興諸国の勃興で、いままでのように世界から食料を買うことができなくなり、米と芋を主食とする国家に転換する先行準備が農水省によって行なわれているのである。
▼新興国の経済拡大と人口増により、飢餓や食糧難とは永遠に別れたと思っていた日本人に農業を崩壊させたツケが回ってきた。農業の健全性が維持されることは工業や商業が繁栄するための前提条件である。
 サブプライム問題の発生以降、世界のマネーは石油をはじめとした物資に向かっている。人類にとって最重要物資は食料・農産物である。
 世界最大の農業大国である米国は紙の上の数字を無かったものとして、その食料供給能力を最大限活用する国家戦略に切り替えようとしている。ペーパーマネー「ドル」がどうなろうと、生活必需品の石油や食料を抑える者が勝者となる、古くて新しい経済原則の時代に突入しているのだ。  (青不動)