常夜燈索引

                    

  拉致問題は日本人自身で解決せよ 
         (世界戦略情報「みち」平成20年(2668)7月1日第275号) 

▼六月二六日、ブッシュ米大統領は北朝鮮に対するテロ支援国家指定を二〇年ぶりに解除すると発表した。北朝鮮が六ヶ国協議の合意に基づき核計画申告書を議長国の中国に提出したことを受けてのことだった。
 北朝鮮が申告した核計画には核兵器の数量や核兵器関連施設などに関する情報は含まれておらず、当初六ヶ国協議で合意していた「すべての核計画の完全かつ正確な申告」にはほど遠い内容であった。今回の申告書とは別に濃縮ウランを使った核兵器開発とシリアへの核開発支援について「米国が懸念を示し、北朝鮮がその懸念を認める」という一節が入った文書が北朝鮮から米国に渡されている。
 ブッシュ政権は、北朝鮮自体の核開発や核保有は米国にとって脅威ではなくこれを容認した。しかし北朝鮮の核兵器やその技術が第三国、とりわけイラン、シリアなどに輸出されることは、イスラエルや米占領下のイラクへの脅威となるため、北朝鮮に中東などへの核不拡散を確約させ、見返りとしてテロ支援国家の指定解除を行なったものである。
▼米NGO「科学・国際安全保障研究所」(所長デビッド・オルブライト国際原子力機関・IAEA元査察官)は六月一六日、リビアやイラン、北朝鮮に核兵器関連情報や部品を売り渡した国際的武器密輸グループが小型核兵器の設計書を入手した、とする報告書を公表した。
 設計書にはイランや北朝鮮などが保有する中距離弾道ミサイルに搭載可能な小型弾頭の製造方法なども含まれていたという。この設計書は二〇〇六年、パキスタン核開発の父アブドル・カーン博士が組織した密輸グループ「核の闇市場」に関係するスイス人実業家のコンピューターから発見されている。
 オルブライト氏は設計書がすでに「世界で最も危険とされる複数の国家に売却された恐れがある」と警告している。
 六月二三日付の独シュピーゲル誌は、ドイツ情報当局は昨年九月にイスラエル空軍の空爆で破壊されたシリア東部アル・キバル近郊の核施設は、イランの核兵器開発に向けたイラン、シリア、北朝鮮三国の合同プロジェクトによるものだったとの報告書を提出していると報じた。
 三国は核爆弾の原料となるプルトニウムの生産が可能な原子炉を建設することで合意していたという。ウラン濃縮を中心に核開発を続けてきたイランはプルトニウム生産についての技術力に欠けるため、経験のある北朝鮮の支援を受けていたようだ。
 イランのアフマディネジャド大統領が二〇〇六年にシリアを訪れた際、同プロジェクトについて協議したと同誌は伝えている。三国は化学兵器開発でも協力し、昨年の七月にシリア北西部アレッポ近郊の化学兵器工場で起きた爆発事故で、三国の科学者や軍関係者約三〇人が死亡したとも報じている。
 これらの報道の真偽は不明だが、米朝合意の直前に公表されたタイミングからこう推測できる。ブッシュ政権としては北朝鮮が核拡散の元凶であり、これを抑止するために米朝交渉を行ない、その結果北朝鮮にイラン、シリアなどへの核協力を断念させる「成果」を挙げることができた、という米国側の米朝合意の正当性を傍証するものとなっていると言える。
 核拡散問題は、現在原子力ビジネスを石油生産に代わる巨大産業として育成し、世界に展開しようとするロシアにとっても喫緊の課題である。今回の米朝合意が米露原子力協定交渉と平行して進んでいたことに、米露による北朝鮮抑え込みの構図が見てとれる。
 北朝鮮が第三国への核拡散を本当に止めるかどうかは分からない。しかし金正日政権は自国の核保有を容認され、テロ支援国家指定解除により国際金融機関からの借入れや世界との貿易取引が可能となり、経済的苦境から脱出できる目途がついたことで満足しており、米国との約束を破る挙に出ることは当面考えられない。各国が自国の利害で動くのは当然である。拉致問題が置き去りにされたと日本が米国などに抗議しても、それはお門違いと嘲笑されるのがオチである。
▼北朝鮮は朝鮮総督府の密偵だった畑(はた)中(なか)理(おさむ)(朝鮮名金策)など抗日パルチザンが金日成を擁立、壇君神話を元に創設した大日本帝国の残置国家であり、今も大東亜戦争を一人で戦っている。七〇年代に起こした日本人拉致事件は、米国の妾となって大東亜戦争の大義を忘れた日本人を覚醒させるものだった。
 そうであれば、今こそわが国は米国の意向を慮ることなく、独力で日本人を攫った北朝鮮を征伐する時である。残置国家北朝鮮は日本の手にかかって死を迎えることで成仏するのである。
「なぜ私たち皆が、自分たち共同社会の出来事として、この人々の不在をもっと強く意識し続けることができなかったかとの思いを消すことができません」(拉致問題についての皇后陛下のお言葉)
 拉致問題を日本人が「我がこと」としてみずからの力で解決しない限り、民族のもっとも大切な紐を喪失し、わが社稷=共同体はただ空しく消えるほかあるまい。(青不動)