常夜燈索引

                    

  イスラエル製音声分析ソフト 
     (世界戦略情報「みち」平成20年(2668)7月15日第276号) 

▼昨年九月九日APEC首脳会議後の記者会見で、安倍総理はこう発言した。

 米豪両国首脳から、テロとの闘いについて、日本の貢献に対して高い評価、謝意が表明されました。私からは、日本として、テロとの闘いを継続していく意志について説明をいたしました。これは、ブッシュ大統領との日米首脳会談においても、説明をしたところでございます。国会の状況は大変厳しい状況ではございますが、このように国際的な公約となった以上、私には大きな責任があるわけでございます。テロとの闘い、現在行っている自衛隊の補給活動を継続させるためには、あらゆる努力を行わなければならない、このように決意をしているところでございます。民主党をはじめ、野党の皆様のご理解をいただくために、職を賭して取り組んでいく考えでございます。

 この会見をモニターしていたあるハイテク企業は、「安倍総理の声調は重度の鬱病患者のそれで、自殺の恐れがある」と分析した。その三日後、安倍総理は辞任を表明した。同社は音声分析を専門にする企業で、言語の種類、音声の意味、性別、年齢、環境とは関わりなく、声だけで話している人の思考や感情を分析することが可能なソフトを開発し、実用に供している。
▼実際は三〇〇以上のパラメーターに分けて音声を分析する複雑な手法だが、簡単な図示例で説明しよう。感情度、集中力、感情安定度、慎重度、繊細度、想像度、好奇心、愛情度、という八つの指標を頂点とする八角形の図形を思い浮かべていただきたい。
 ごく平常な精神状態の人の声は、この八角形の真ん中あたりに同心円を描く、安定した姿になる。
 先の安倍総理の発言で、「私には大きな責任があるわけでございます」という部分で、感情度と繊細度の二極だけが極大化して八角形の枠を飛び越し、感情安定度、想像度、好奇心の極はゼロとなり、八角形が上下二極の、まるでキリのような歪な姿に変形した。この形は、末期鬱病患者の声調がつくる形と相似であり、安倍総理の精神状態が異常だったことを示している。
▼人間の言葉を運ぶ声から様々な感情を読み取ることができる。
 喜び・幸福感、動揺・悲しみ、怒り・焦燥感、愛情・好感、困惑・当惑、強い思考、想像度、ためらい・後悔、不確かさ、興奮・高揚、集中・懸命、心配・期待、などの感情がわずかな連続した会話や話から判別可能なのは、われわれの日常的な経験からもある程度理解できるだろう。
 これらが数値化され、指標化されてグラフとなり、その人が話しているその瞬間、瞬間に一目瞭然でコンピューター上に映し出されるとしたら、その人の言葉の信憑性はもとより、感情の起伏や好悪、体調の好不調まで丸裸にされることを意味する。
 この音声分析ソフトは、モスクワのドモデドボ国際空港のセキュリティシステムに導入されている。乗客に英語、露語、タジキスタン語、トルキスタン語などで質問、その答を分析することで普通旅客とテロリストや犯罪者を見分けているという。すでに武器の密輸、毒ガスの機内持ち込みなどを計った人々が音声分析で嘘や心の動揺を見破られ、逮捕されるケースも出ている。
 英国では保険金詐欺に悩む保険会社が保険請求の事情聴取の際、音声分析ソフトの導入により請求者の嘘を見抜き、保険支払額を三〇%削減できたという(二〇〇三年一〇月三〇日BBC)。
 そのほか、ドイツのミュンヘン空港、米国防総省、フロリダ州麻薬不正取引監視区、ブラジル警察など政府機関をはじめ、コールセンターや医療機関でも使われている。
▼わが国でも犯罪防止や心の病の治療のため導入が検討されているが、ある閣僚は「われわれ政治家は日ごろ嘘ばかりついているから、こんなソフトを入れられたら何も発言できなくなる」と言って導入に反対している。
 世界の主要な政治・経済のリーダー達の発言、音声がすべてモニターされているとすれば、音声分析ソフトを使うことでその発言の真偽から体調(ことに心臓の好不調)まで分析され尽くされることになる。
 安倍総理のように、音調から「自殺寸前」と判定されるのはリーダーとして資質以前の問題だが、指導者は一挙手一投足に神経を尖らす必要があるといえよう。
 ちなみに、音声分析ソフト泣かせの指導者はロシアのプーチン前大統領だそうだ。公式の場での演説、会話にほとんど感情が表われず、安定した図形を維持し続けるという。KGB在籍中、敵に捕らえられ自白を強要されても吐かない訓練を受けているのだろう。
 意外なのが米国のブッシュ大統領で、ほとんど感情的になることがなく、うわべとは異なり相当強靭な精神力を持っていると分析されている。CIA元長官だった父ブッシュ元大統領がある時期から息子をプロの手で訓練したといわれている。この音声分析ソフトを開発したのはイスラエルの企業である。「言葉の民」らしい発想といえよう。 (青不動)