常夜燈索引

                    

   今こそ「妖怪退治」の好機 
      (世界戦略情報「みち」平成20年(2668)10月1日第280号) 

▼いま地球に、正体不明の、しかも国家も、宗教も、企業も、人種も性別も、差別なく根こそぎ揺さぶり、不安に怯えさせる巨大な妖怪が横行している。それはマネーである。この妖怪は姿を見せることなくコンピューターの中の電子記号となって地球を一秒間に七回り半するスピードで移動し、為替相場、石油相場、農産物相場を混乱させ、インフレ、物価騰貴、重税の不安を人々に与え続けている。
 人間を一番喜ばせるものはお金だが、また一番苦しめるものもお金であり、人間を一番不幸にするのもお金である。なくても不幸、あっても不幸、ありすぎてもなお不幸という魔物がマネーである。
 天動説、アリストテレスの通説など、人々が疑っていなかった常識が、コペルニクスやガリレオ・ガリレイによって覆されて科学が発達し、一神教の神は死んだ。共産主義クレムリン法王庁も崩壊し、資本主義社会にはマネーという新たな神が現れた。
▼マネー神社の本殿を日銀という。この大きな神社の周囲には都銀とか地銀というお社が建ち並らび、大企業から吸い上げた利子というお賽銭の一部を本殿に奉納する。その下の方には信金とか信組という小型の社もあり、庶民がもってくる利子というお賽銭を徴収して都銀や地銀に上納する。参道の両側には、株屋、ファンド、サラ金・高利貸し、税務署とかいう祠が軒を連ね参詣者の懐中を狙っている。もちろん、その蔭には振込め詐欺師、マルチ商法、ドロボーたちも隠れて参詣者を狙っている。本殿には昔、金無垢のご神体があったが、現在はなく、紙に人の顔と数字を書いた「お札」があるだけだ。一九七一年までは純金のご神体は米国の総本山にあると説明してきた。ところが総本山のニクソン法王がご開帳をやって「この通り総本山にもご神体はない、戦争屋の軍産複合体が盗み出してベトナムで売り飛ばした」と声明を出してしまった。末寺、末社はあわてたが、紙は神に昇格し相変わらず霊験あらたかで全人類はこの紙=ペーパーマネーを崇拝する信者となっている。
 一九七一年八月一五日、ニクソン米大統領は金・ドル交換停止を発表し、世界基軸通貨であるドルは裏づけのないペーパーマネーとなった。以降三〇年以上にわたりマネー危機は顕在化していた。石油=ドル本位制という金に代わる変則兌換化で真の危機は先送りされていたが、サブプライム問題の噴出でいよいよ清算が迫られてきたのである。
▼貨幣は貝殻や石、農具武具のミニチュア、銅、銀、金などと変遷し、米やたばこが貨幣として流通したこともあった。最後に現在のような数字に印刷した銀行券という紙切れになった。貨幣という物品は時代と共に変わる。
 昔から貨幣は価値の尺度、価値貯蔵手段、交換媒介、支払い手段、などといわれてきた。その価値とは主観的なものである。売手と買手、双方の主観的価値観の葛藤、相違の妥協点において成立するもので、客観的価値などというものはない。すなわち貨幣はこの精神現象に用いられる数概念の表象であり、数字で表される。原価十数円の紙切れを一万円だといって渡されても喜んで受け取るのは、紙自体に金や銀のような価値がなくとも構わないことを知っているからである。
 毎日為替相場が乱高下し、浮動する不換紙幣である貨幣が、価値の尺度になることができるのだろうか。現在の貨幣は一国貨幣主権の下、国家の権威に裏付けられた中央銀行券が強制通用させられているものである。事実上基軸通貨であるドルやユーロと連動する各国通貨は、価値なき無限に変動するドルやユーロと無理心中させられているようなものである。
▼このような「価値」のあやふやな貨幣現象=数字現象は、神様の有り難さの感度と似たようなもので、本来なら経済現象の基準や基礎にはならない。
 経済現象を基礎づける基準は何か。 経世済民、つまり人類の衣・食・住の充足が経済現象の本質である。真の経済原理、経済現象とは国家の問題ではなく、全人類の生態系の問題であり、衣・食・住という物理量の問題であり、物理的には全地球的な有効エネルギーの問題であり、それを保証するものは新しい物理学によるエクセルギー量の問題である。
 すなわち、一年間に世界全体で消費される総エクセルギー量こそが、経済現象を基礎づける真の基準である。
 世界総エクセルギー量を限度額(準備保証)として全人類共通の「貨幣」ICカードを発行、そこに算定された数字を入れて六十数億の人類すべてに分配する。その数字には利子も返済も税金もなく分配するだけで、実体なき一神教の神様だった貨幣は消え去り、エクセルギーの物理量を表わす数記号のカードに転化することとなる。これにより税の徴収は不要となり、政府の財政事務は大幅に簡略化される。
 サブプライム問題はマネー一神教の舞台裏を覗かせ、そのご神体は空虚であることが明らかとなった。今こそ、真昼の妖怪=マネーを退治する絶好の機会なのである。   (青不動)