常夜燈索引

                    

  御結婚五〇周年の御言葉 
    (世界戦略情報「みち」平成21年(2669)4月15日第292号) 

▼平成二一年四月一〇日は天皇皇后両陛下御結婚満五〇周年の記念日だった。二日前の陛下の記者会見から皇室の伝統と戦後の歩みに関するお答えの一部を、正確を期して長い引用だが、「宮内庁ホームページ」より転載して以下に記したい。

 問:両陛下にお尋ねいたします。ご成婚の日から五十年の月日が流れ、高度成長期からバブル崩壊、いくつもの自然災害や景気悪化など、世相、人の価値観も大きく変わる中、両陛下も皇室に新しい風を吹き込まれてきました。皇太子同妃両殿下として、天皇皇后両陛下として夫婦二人三脚で歩んできたこの五十年を振り返り、お二人で築きあげてきた時代にふさわしい新たな皇室のありよう、一方で守ってこられた皇室の伝統についてお聞かせいただくとともに、それを次世代にどう引き継いでいかれるのかもお聞かせください。

 天皇陛下:私どもの結婚五十年を迎える日も近づき、多くの人々からお祝いの気持ちを示されていることを誠にうれしく、深く感謝しています。ただ国民生活に大きく影響を与えている厳しい経済情勢のさなかのことであり、祝っていただくことを心苦しくも感じています。
 顧みますと、私どもの結婚したころは、日本が、多大な戦禍を受け、三百十万人の命が失われた先の戦争から、日本国憲法の下、自由と平和を大切にする国として立ち上がり、国際連合に加盟し、産業を発展させて、国民生活が向上し始めた時期でありました。その後の日本は、更なる産業の発展に伴って豊かになりましたが、一方、公害が深刻化し、人々の健康に重大な影響を与えるようになりました。また都市化や海、川の汚染により、古くから人々に親しまれてきた自然は、人々の生活から離れた存在となりました。結婚後に起こったことで、日本にとって極めて重要な出来事としては、昭和四十三年の小笠原村の復帰と昭和四十七年の沖縄県の復帰が挙げられます。両地域とも先の厳しい戦争で日米双方で多数の人々が亡くなり、特に沖縄県では多数の島民が戦争に巻き込まれて亡くなりました。返す返すも残念なことでした。一方、国外では平成になってからですが、ソビエト連邦が崩壊し、より透明な平和な世界ができるとの期待が持たれましたが、その後、紛争が世界の各地に起こり、現在もなお多くの犠牲者が生じています。今日、日本では人々の努力によって、都市などの環境は著しく改善し、また自然環境もコウノトリやトキを放鳥することができるほど改善されてきましたが、各地で高齢化が進み、厳しい状況になっています。ますます人々が協力し合って社会を支えていくことが重要になってきています。私どもはこのように変化してきた日本の姿と共に過ごしてきました。様々なことが起こった五十年であったことを改めて感じます。(中略)
 時代にふさわしい新たな皇室のありようについての質問ですが、私は即位以来、昭和天皇を始め、過去の天皇の歩んできた道に度々に思いを致し、また、日本国憲法にある「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるという規定に心を致しつつ、国民の期待にこたえられるよう願ってきました。象徴とはどうあるべきかということはいつも私の念頭を離れず、その望ましい在り方を求めて今日に至っています。なお大日本帝国憲法下の天皇の在り方と日本国憲法下の天皇の在り方を比べれば、日本国憲法下の天皇の在り方の方が天皇の長い歴史で見た場合、伝統的な天皇の在り方に沿うものと思います。
 守ってきた皇室の伝統についての質問ですが、私は昭和天皇から伝わってきたものはほとんど受け継ぎ、これを守ってきました。この中には新嘗祭のように古くから伝えられてきた伝統的祭祀もありますが、田植えのように昭和天皇から始められた行事もあります。新嘗祭のように古い伝統のあるものはそのままの形を残していくことが大切と考えますが、田植えのように新しく始められた行事は、形よりはそれを行う意義を重視していくことが望ましいと考えます。したがって現在私は田植え、稲刈りに加え、前年に収穫した種籾を播くことから始めています。(中略)
 皇室の伝統をどう引き継いでいくかという質問ですが、先ほど天皇の在り方としてその望ましい在り方を常に求めていくという話をしましたが、次世代にとってもその心持ちを持つことが大切であり、個々の行事をどうするかということは次世代の考えに譲りたいと考えます。

▼陛下の戦後に対するご感慨がにじみ出たお答えであり、賢しらな論評は控えるべきだろう。ただ、陛下が戦後の日本国と日本人の歩みを、日本国憲法をも含めてご嘉納になっていることは重要なことではないか。
 米づくりについての神勅「わが高天原にきこしめす齋庭の穂をもて、わが御子によさせまつるべし」そのままに、新嘗祭と田植えの伝統を今の世に伝える陛下のお言葉に日本のすべてが込められていることを噛みしめたい。
(青不動)