常夜燈索引

                    

  活路は対米戦も辞さずの覚悟から 
         (世界戦略情報「みち」平成21年(2669)5月15日第294号) 

▼冷戦終結後、日米「同盟」関係は変質した。いや、米国が変わったことを永く日本人は気づきたくなかったのだ。
 ソ連邦崩壊後、経済における米国の主敵は日本になった。当時のベーカー米国務長官は「冷戦最大の受益者は日本だ、溜め込んだ利益をそろそろ吐き出してもらおうじゃないか」と述べている。だが、わが国は朝野を挙げて冷戦終結の意味を解することなく、冷戦時代の幻想の中にまどろんでいた。冷戦時代のわが国は、政界、官界、労働界、財界が箱庭のような自社馴れ合い対立を演じて見せることで、国際的に巨額の利益を享受した、よき時代だった。
 米国はソ連と対峙する中、日本に対して朝鮮戦争やベトナム戦争への出兵や軍事協力を求めた。日本政府は憲法第九条が謳う軽武装経済発展第一という国是を元にこれに応ずることなく、経済的利益を貪ることに専念した。米国は日本を追い詰めることで共産化することを懸念し、大目に見たのだ。
 主敵のソ連は崩壊し、共産主義支那は国家資本主義国に変貌した。冷戦の終わりは日本独立への好機だったが、政府も国民をこの好機を無為に過ごし、失われた十年を過ごした。
▼そもそも大東亜戦争の敗北に伴い、日本に進駐した米軍は日本人にとっては敵占領軍だった。それが朝鮮戦争以降、建前上日本を共産主義ソ連・中共の脅威から守る同盟国軍に変貌した。日本政府は米占領政策が円滑に進むよう、米国は友邦であり、米軍や米軍人は日本の安全に貢献する存在である、という擬制を国民に植えつけた。
 戦時中にわが国の都市への無差別戦略爆撃を立案、特に昭和二〇年三月九日の東京大空襲を行なったカーチス・ルメイ米空軍大将に、日本政府は昭和三九年源田実参議院議員(元航空幕僚長)と小泉純也防衛庁長官の推薦で「航空自衛隊創設時の戦術指導に対する功績」により勲一等旭日大綬章を授与したことはその象徴的出来事である。米軍は日本を守ってくれる頼もしい同盟国軍であり、その最高位の軍人はわが国最高の勲章を受けるに値するという演出だった。
 ソ連邦崩壊、共産主義の脅威がなくなり、在日米軍は日本の同盟国軍から再び「日本占領軍」という本来の姿にもどった。しかし、冷戦後も日本政府は擬制にしがみつき、同盟国軍という倒錯を信奉したままだった。
 米国政府が冷戦後の九〇年代、日米安保条約の内実を再定義し変えてきたのは主敵が消滅した新たな国際環境下で当然のことであった。日本列島は極東地域におけるロシア、北朝鮮、中共、ベトナムなどの共産主義勢力に対する橋頭堡という位置づけ、前提が崩れたのだから、誰が敵であり、何のために戦うのかを定義しなおすのは、論理的必然である。
 米軍が日本に駐留しつづけるには、新たな脅威や意義を示す必要が生じて来た中で、イラン、イラク、北朝鮮が悪の枢軸と名指しされ、北朝鮮は期待通りテポドンやノドンを発射して、この役割を見事に果たしている。
▼一九六一年一月一七日、離任を三日後に控えたアイゼンハワー米大統領が「われわれは産軍共同体が不当な影響力を持つことに警戒しなければならない。不当な力が拡大する悲劇の危険性は現在存在し、将来も存在し続けるであろう。産軍共同体が民主的動向を危険にさらすようにさせてはならない」と、巨大化した産軍共同体が米国と世界を彼らの利益となる方向に持っていく危険性に警鐘を鳴らした。
「二一世紀の真珠湾攻撃」である九・一一事件が「新たな脅威」として産軍共同体を裨益していることは、巨額の米国防予算を見ても明らかだ。
 ドイツ軍の猛攻の下、瀕死の状態にあった英国を救ったのは日本の真珠湾攻撃だったとチャーチル英首相は述べている。チャーチルは米国の南北戦争を研究し、欧州戦線に不干渉・中立を決意していた米国民の多数世論をいかにして対独参戦に誘導するかを考えた。リンカーンは南部が独立する動きを見せている趨勢で、米国の統一には戦争が必要だと考え、南部から先に攻撃させる状況を作り出し、攻撃を受けた国民の怒りを沸騰させ、望み通り戦争に突入した。
 チャーチルが対日最後通牒といわれるハル・ノートに至る日米交渉の裏面に深く関与し、日米戦不可避の状況を作り出した経緯は近年の研究が明らかにしているが、九・一一事件もまた、同断であろう。
 陰謀・謀略・奸計は国際政治の常套手段であり、これに引っかかった者が馬鹿なのだというのも国際的「常識」なのである。
▼「米軍占領下の日本」という現実から逃避し、やれ中国、やれヨーロッパ、やれロシアと、連携する国を物色して裏口から対米自立を唱えても、それでは日本の真の独立は勝ち取れない。
 平和と繁栄は欲しい。でも、危険と犠牲はいやだ。そんな半植民地状態のぬるま湯にわれわれは永く浸ってきた。だが日本の活路は、米国と一戦交える覚悟で正面から独立の談判をするとき、はじめて見出せるのだ。
(青不動)