常夜燈索引

                    

  皇太子殿下摂政化の頓挫 
    (世界戦略情報「みち」平成21年(2669)7月15日第298号) 

▼麻生太郎首相は去る七月一三日に、九月一〇日の任期満了前の七月二一日に衆議院を解散し、八月三〇日に投開票を行なうことを決めた。
 当初首相はイタリアでのG8サミットから帰国直後の七月一四日に解散する意向だったといわれていたが、一二日の東京都議会議員選挙での敗北を受け、自民党、公明党幹部の先延ばし論に歩調を合わせたと報じられている。七月一四日の解散と、その一週間後の解散にどれほどの違いがあるのだろうか。
 天皇・皇后両陛下は以下の日程(宮内庁ホームページによる)でカナダ、アメリカ(ハワイ)を御訪問されている。
「カナダ国総督閣下から,天皇皇后両陛下に対し同国を御訪問願いたい旨の招請があり,また,アメリカ合衆国ハワイ州における皇太子明仁親王奨学金財団五〇周年記念行事に際し,同国政府から両陛下の御訪問を歓迎する旨の申出があった」のが御訪問の理由である。

七月三日(金)東京御発 オタワ(カナダ国オンタリオ州)御着、ポンティアック(ケベック州)御着
七月四日(土)同地御滞在
七月五日(日)オタワ御着
七月六日(月)同地御滞在
七月七日(火)同地御滞在
七月八日(水)トロント(オンタリオ州)御着
七月九日(木)同地御滞在
七月一〇日(金)バンクーバー(ブリティッシュ・コロンビア州)御着、ビクトリア(同州)御着
七月一一日(土)同地御滞在
七月一二日(日)バンクーバー御着
七月一三日(月)同地御滞在
七月一四日(火)同地御発、ホノルル(アメリカ合衆国ハワイ州オアフ島)御着
七月一五日(水)同地御滞在
七月一六日(木)コナ(ハワイ州ハワイ島)御着、同地御発
七月一七日(金)東京御着

 七月一四日に解散した場合、天皇陛下はご不在であり、解散詔書への署名は七月二日に「国事行為臨時代行に関する勅書」を伝達された皇太子殿下が行なうこととなっていた。
 七月二一日の衆議院解散を主張したグループは今上陛下による解散を望んでいたのであろうか。それとは逆に、麻生総理は国事行為臨時代行たる皇太子殿下による解散を意図していたのであろうか。
▼天皇の国事行為は憲法六条、七条に一二項目列挙されているが、特に重要なのは内閣総理大臣の任命、最高裁判所長官の任命、憲法改正、法律、政令及び条約の公布、国会の召集、衆議院の解散、総選挙の施行の公示などである。
 衆議院の解散は衆議院議員全員の首を切る、適法なクーデターとも呼ぶべきもので、首相が持つ、もっとも強い権限であり、解散詔書への署名は重い意味が込められているといえよう。
 西園寺公望は「日本の歴史にときどき繰り返されたやうに、弟が兄を殺して帝位につくといふやうな場面が相当に数多く見えてゐる。かくの如き不吉なことは無論ないと思ふけれども、また今の秩父宮とか高松宮とかいふ方々にかれこれいふことはないけれども、或は皇族の中に変な者に担がれて何をしでかすか判らないやうな分子が出てくる情勢にも、平素から相当に注意してみてゐてもらはないと……」と皇室内の確執に触れて、深く憂慮していたという。
▼水俣病未認定患者を救済する特別措置法が七月八日に成立して、原因企業チッソの分社化が決まった。大日本帝国の残置国家といわれる北朝鮮では、金王朝の三代目相続をめぐり「壬申の乱」的な状況が現出している。
 世界的な金融危機勃発以降、英国型金融支配構造が崩れ、世界の支配構造は大きく転換している。わが国皇室がその影響を受けないはずはなく、麻生総理の解散権行使に当たって垣間見えた皇太子殿下「摂政化」の頓挫が意味するものも、そうした文脈で捉えるべきであろう。 (青不動)