常夜燈索引

                    

  「利子無き通貨」の創設を! 
    (世界戦略情報「みち」平成22年(2670)5月1日第315号) 

▼「利息」なるものを明快に説明したシルビオ・ゲゼル(一八六二~一九三〇)というドイツ人の商人がいた。
 ゲゼルは南米のブエノスアイレスで商人として成功したが、自分は努力以上に成功しているということに気づき、経済の中におかしなものがあるということに着目、ドイツに帰って経済学の勉強を始めた。
 ゲゼルが到達した結論は「金を貸した者が利息を取るのは間違っている」というものだった。経済財すなわち人の力が加わったものが経済財だが、経済財は時間が経つと価値が下がる。いかなる経済財も時間が経てば値打ちは下がるのである。
 ところが、これを買うときに支払った通貨は日と共に利息を吸収して太っていく。これでは物と通貨のバランスが取れるはずがない。物と通貨の調和が取れて初めて公正なる経済秩序が成り立ち、経済は安定する。
 一方が肥え太り他方が痩せ細るようでは、カネと物のバランスが崩れ経済は不安定となる。努力不相応に儲ける者が出ると同時に、努力不相応に何代にもわたって困窮する者も出てくるという、不公正な経済秩序が生まれることになる。
 ここからゲゼルは消滅貨幣論と正の利子に対する負の利子論を着想した。
 ケインズとその一派は当初ゲゼルの貨幣論はインチキだと攻撃したが、後に『雇用、利子及び貨幣の一般理論』の中でケインズは「ゲゼルの理論の半分だけ分かった」と白状している。
▼わが国でも寛永五年、淀屋辰五郎の闕所事件という講談本の題材になった利息にまつわる実話がある。
 大名や公家に貸した金が一億二千万両にも登った大阪の豪商・淀屋辰五郎が絹の着物を着て贅沢をしたという廉で全財産を没収された事件である。
 寛永五年ごろの公定利息は二割で、淀屋の受取利息は二千万両、米に換算すると四千万石に相当する。当時の日本の米生産高は二千六百万石だったので、淀屋の利息は日本全体の米生産量を以てしても千四百万石不足する事態となっていた。
 これでは、大名や公家はもちろんのこと、国民全部の生活が成り立たない、ということになり、幕府権力は淀屋を捕らえ、すべてを帳消しにした。
 今日でも世界人類の生血を吸う利息の恐ろしさに変わりはない。この誤りを抹殺しない限り、世界の経済秩序が成り立たないことは明らかである。
 戦争をすると物資の消耗速度が非常に速くなる。何百億円もかかった航空機が何日かで海の藻屑となる、何千億円もの軍艦がわずか数時間で役立たずとなる。そのほか様々な物資が猛烈な速度で消耗されていく。その一方、これを買うために支払った通貨は依然として民間に滞留して利息を吸収し膨張していく。物と通貨の不均衡が大きくなる。
 金融資本が戦争をやりたがるのは、こうしたカネの急膨張のマジックを知っているからである。
 ゲゼルが気づいたように、「利子無き貨幣」を創設することこそが、金融資本の暴力を抑えつける唯一の手段である。
▼利子を生まない通貨の基礎は何なのか。つまり、金本位制、銀本位制、石油本位制における金銀や石油に代わるべき貨幣の購買力量を保証する物理量は何なのか。
 抽象的な概念になるが、人間にとって必要な経済的に有効なエネルギー、これを「エクセルギー」と呼ぶ。地球上の全人類が必要とする、衣食住に必要な総有効エネルギー量・エクセルギーを計算し、これを限度額(準備保証)にして通貨を発券し、ICカードなどで世界七〇億の人類すべてに分配する。そこには利子も、返済も、税金も、何もなく、ただ分配され配給されてくるだけとなる。
 エクセルギーという物理量を通貨の基礎におくことで、通貨は中立化し、交換手段そのものとなる。
 中央政府=世界政府が分配するほか、一部を保留して公共事業や政府費用に使用するので、税金の徴収は不要となる。
 世界全体で見れば生産物は余っており、各国の大統領や首相は「物を買ってくれ!」と他国に押しかけて行商に勤しむ毎日だ。同時に、物を欲しがっている人にもこと欠かず、これを「需給ギャップ」などと尤もらしい用語で呼んでいるが、これを均衡させることは簡単である。経済現象でなく、数字現象に囚われているからできないだけだ。
 貨幣とは人間の頭の中にだけあって、人間だけが崇める一神教の神のようなもので、つまるところ実体はない。猫も犬も小判や紙幣に鼻も引っかけない。ある物を象徴する数記号に過ぎない。
 エクセルギー通貨は、地球上の有効エネルギーという生態系上の物理量を現わす数記号である。コンピューターが発達した今日、これをカードやネット上で全人類に配ることは簡単な作業であり、税金や年金の徴収などの煩雑な事務作業も不要となるので、中央政府の財政事務などは今より遙かに少ない人員で間に合うことになる。
▼一九二〇年に、国家社会主義ドイツ労働者党は二五ヶ条の党綱領で「利子奴隷制の打破」を唱えたが、今度は「利子無き通貨」創設の声をわが日本から上げようではないか。 (青不動)