常夜燈索引 

                 

 世界覇権=金融寄生の終焉
   (世界戦略情報「みち」平成23年(皇紀2671)6月15日第340号)

▼一九九七年九月、わが国の一〇年物国債の金利が二・〇%を下回って以来、一度も二%を上回ることなく一四年にもわたって「超低金利」が継続し現在にいたっている。
 金利の記録は紀元前およそ三千年のシュメル国家の時代から残っているが、中世イタリアの都市国家ジェノバで一六一一年から一六二一年にかけ一一年間、金 利(四、五年物国庫貸付金利)が一%台で推移したのが過去最長の「超低金利」時代だった。わが国の超低金利はその記録を四百年ぶりに塗り替えて更新し続け ている。
 一四世紀末から一六世紀にかけ、経済的にもっとも繁栄したのがイタリア都市国家のジェノバ、フィレンツェ、ベネチアなどで、レバント地方(現在のシリ ア、レバノン、パレスチナ等)で集荷された東方の絹、胡椒、香辛料、象牙を買い付け、これを欧州圏に売る地中海貿易を独占し、巨利を博した。
 ジェノバは為替手形の裏書や船舶保険などの金融技術を発達させ、商品取引から信用貸制度、金融取引制度を整備し、一大金融王国を築いた。だが、ジェノバ では一五七一年から金利が恒常的に五%を下回り始め、「一六世紀の利子率革命」と称されるほどの低金利となった。富を多く蓄積した国ほど貯蓄が過剰とな り、相対的に投資機会が減少し、金利が低下する。
 当時「日の没することなき」世界帝国だったスペインの財政はジェノバの銀行家や金融貴族によって管理されていた。スペインが戦費調達のため発行した国債の引受と管理、スペイン貨幣の輸送、税金の徴収までもジェノバの銀行家が行なっていたのだ。
 スペイン王室は一五五七年、フェリペ二世即位の翌年、破産宣言をした。前国王カール五世が、この先五年分の王室収入のすべてをドイツのフッガー家をはじ めとした銀行家に担保として差し出していたことにフェリペ二世は驚き、自己破産したのだ。カール五世は神聖ローマ皇帝選挙に勝利したが、その際多額の選挙 資金を要して借金が嵩んだ。
 その後、ジェノバの銀行家が過剰貯蓄を原資にスペイン王室財政を支えたが、一五七五年、一五九六年、一六〇七年、一六二七年、一六四七年と相次いで王室 は財政破綻宣言を行ない、ジェノバの銀行家たちはスペイン王室の信用低下に応じて金利を上げ、ここに歴史上最長の超低金利時代は閉幕する。
 このイタリア都市国家の超低金利時代は、同時にジェノバやベネチアが握っていた世界金融覇権がオランダに移った時代でもあり、金利の推移に覇権の交代が伴う現象は以降も繰り返す。
 金利は長期的にいわゆる資本利潤率と同価になるといわれている。実物経済の利潤率が下がれば金利も下がり、利潤率を上げるため金融経済化するとされている。
 交易国家ジェノバは実物経済・商業で利潤を確保できなくなり、蓄えた富をスペイン王室に貸すことで金融経済化した。スペインの破綻とともに増殖したその 金融資本はオランダに投資されて実物経済を拡大させるが、やがて実物経済での利潤が確保できなくなると金融経済化して英国に移動し、同様に、それがまた米 国に、という覇権の交代と金利=資本利潤率の高低は同時進行する。
▼覇権の交代という言葉は、寄生先の交代と換言できよう。イタリア都市国家のはるか以前から、フェニキア、カルタゴなどを経て寄生先を次々に変えてきた古 代からの勢力の別名を現代風にいえば「金融資本」と称すことができる。わが国が四〇〇年来の超低金利の水準をあっさり突破して、前人未到のゼロ金利を一〇 年以上も続けていることが意味するものは一体何か。
 世界帝国スペインの財政破綻をファイナンスしたジェノバの立場に、借金大国米国に上納を続ける日本の立場は酷似している。つまり米国覇権の終焉が、日本 の超低金利現象にはっきりと表れているのだ。寄生先米国の終焉は、新たな寄生先として支那、インドなど、いわゆるBRICsの登場という、いわば過去の覇 権交代劇の再現になろう。
▼わが国は無意識の内にいわゆる近代資本主義経済やグローバリズムからの離脱を試みており、その顕われが不可解な超低金利の継続であり、このたびの大震災ではないか。
 出口王仁三郎は『大本神諭』の中で、「金銀を用いないでも、結構にお土から上がりたもので、国々の人民がいける様に、気楽な世になるぞよ。衣類、食物、 家倉までも変へさして、贅沢な事は致させんぞよ」「金銀を余り大切に致すと、世はいつまでも治まらんから、艮の金神の天晴れ守護になりたら、お土から上が りたもの(天産物)、その国々のものでいける(自給自活)ように致して、天地へお目にかける仕組が致してあるぞよ」「日本の国が是(こ)れ丈(だ)け乱れ たのは交易からじゃぞよ」と記している。
 覇権=寄生の転移はいつか地球上での寄生先を失い破綻するハルマゲドンでしかない。日本人自身が自らの力で試練を克服し、目を覚ましたとき、世界の破綻は霧消する。(青不動)