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  破綻した予言と新たな予言体系 
        (世界戦略情報「みち」平成25年(2673)9月15日第389号) 

▼長雨と冷夏の果てに起きた享保大飢饉は甚大な被害を齎し(もたら)『徳川実記』には九七万人の飢死者が出たと記録される。八代将軍吉宗がこの霊を弔う法会「川施餓鬼」を行なったのは享保一七年(一七三二)のこと。翌年幕府は慰霊と悪病退散を祈願し隅田川で水神祭を開き花火を打上げた。これが記録上では日本最古の花火大会とされる。その後維新時の混乱、大東亜戦争、更には昭和三六年以降一六年間の中断を経て隅田川花火大会は復活し、現在では毎年一〇〇万人近い観客を集めることで知られる。
 目前に仕掛け花火も観覧できる隅田川脇の協賛者会場は応募者が殺到するが、幸運にも当選した娘夫婦に誘われ、料理冷酒等々取り揃えて臨席し、待ち焦がれた初弾花火で乾杯。夜空を派手に彩る花火に合わせて盃を重ねて二〇分、大粒の雨がぽつぽつと顔に当たり、慌てて物置小屋に避難。雷鳴轟き傘など全く意味をなさぬ滝の如き豪雨の中、浴衣が水着と化した少女達の艶美姿を花火観賞代わりと付替え帰路に就く。隅田川花火の中止は史上初めての事だという。
 同日、埼玉県越谷市で行なわれた花火も豪雨のため僅か七分で終了。葛飾柴又も直前の豪雨で中止。八月一五日に諏訪湖で行なわれた湖上花火大会も開始三〇分後に豪雨のため中止。悲惨だったのは福知山市花火大会で、打上開始直前に露店で爆発事故が発生し花火大会が中止に追い込まれている。花火大会の中止は珍しい事ではないが、今年の中止数は異常な多さ。これでは厄払いができないと不安が襲い来る。
▼傍輩からの慮外の招請に応じて栃木の大田原に出掛け、帰路の昼過ぎ矢板界隈を通過中に、晴天俄かに掻き曇るや車体を揺るがす突風、そして前車の尾灯すら見えない土砂降りに出くわす。前々日に埼玉県越谷で竜巻が発生したとの情報を得ており、もしやと思ったが、帰宅後に竜巻の正に直近を通り抜けた事を知る。竜巻は日本国内では殆ど発生しないものと勝手に思い込んでいたが、過去五〇年を見る限り年平均一五回も起きている。最近では平成二二年の三七回、二〇年の二九回、昨年の二八回が目立って多かった年だが、増加傾向にある訳ではない。
 今年は猛暑も凄まじく四国四万十市では国内最高値を更新し摂氏四一・〇度を記録した。何故暑いのかという問いに気温が高いからと答える笑い話がある。竜巻が発生した日の晩「冷たい下降気流と温かく湿った上昇気流が衝突し、極端な風速差や気流の乱れが発生、これが発達して今回の竜巻となった」と気象予報士がしたり顔で解説していたが、これも笑い話同様の言葉の言い換えに過ぎず、今回の竜巻発生の真因は解明されていない。これら総てを異常気象が原因と決め込むのも余りに短絡過ぎる。
▼地球温暖化問題に取り組んだアル・ゴアは『不都合な真実』で平成一九年にノーベル平和賞を受賞したが、同時にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も受賞している。IPCCは国連環境計画と世界気象機関が共同で設立した温暖化に関する科学的知見を報告する組織で、国際政治及び各国政策に強い影響力を発揮する。ゴアの『不都合な真実』に関しては数多くの疑問が提示され、二酸化炭素濃度と地球温暖化の関係も不慥(ふたし)かな情報。多くが首を傾げるなか力づくでノーベル平和賞を捥(も)ぎ取ったと陰口を叩かれるが、IPCCこそ力づくの最大要因。そのIPCCが今秋六年ぶりに報告書を提出するという。
 前回の報告書では、二酸化炭素濃度増加により温暖化が加速し海面が上昇する可能性を指摘したが、氷床の融解と海面上昇の構図を説明しきれず、海面上昇予測数字は記載されなかった。九月末に提出される第五次報告書ではこれを乗り越え、今世紀末に一・五~二メートルの海面上昇予測数値が記載される可能性が高い。IPCCの基本姿勢は初回報告から一貫している。「温暖化は決定的であり、その主因は化石燃料使用にある。温暖化を遅らせ更には正常に戻す事はわれわれ世代の義務である」
 自然と対決し支配してきた欧米人の根源的な姿勢が斯くの如き人類の驕りを生み出し、更には全地球規模で起きている異常現象を全て人間が制圧できるかのような誤解を誘起している。
▼強引な科学主義が先行すると必然の如く対極の神秘思想が擡頭する。殊に多いのは新約聖書『ヨハネの黙示録』や出口王仁三郎の霊界通信や、霊言の類。東北大震災、福島原発事故に今年世界を襲った異常気象と続けば、予言解読者は多忙を極めているだろうが、記録の有る限り予言が的中した例は皆無である。では予言は絶対に的中しないのか。あるいはまた、何故今日なお予言が注目されるのか、その本質への接近が重要だ。予言が構造的に数世紀以上も前に崩壊している事は理の当然。天変地異が続く今日、必然として全く新たな予言体系が出現しているはず。それが世界の何処で如何なる形で存在しているのか。それを探してみるのも一興かもしれない。(黄不動)