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  関東大震災火災旋風の怪 
      (世界戦略情報「みち」平成26年(2674)2月1日第397号) 

▼平成二三年の東日本大震災は人工地震によって引き起こされたとする説がある。三連発だった地震は海底に設置された核とHAARPの組み合わせにより誘起されたもので、地震波が高周波であったこと、核爆発に伴う空気振動が観測されたこと等々、人工地震の証拠が幾つも存在するという主張だ。一方ではこれを似非科学的陰謀論と決め付け、人工地震説が根拠とする地震波や映像を解釈の基本的過誤あるいは捏造と嘲弄する。互いに譲らず、何れが真実か一般人は判断に苦しむ。中国政府発表経済統計の数値が怪しいことは誰の目にも明らかだが、政府以外に統計数値を持たぬ以上糾弾することができない。三・一一人工地震説論もこれに似て、最終的な鍵は誰にも入手できない。
 平成七年一月の阪神淡路大震災にも人工地震説がある。最初に口にしたのは村井秀夫オウム真理教科技庁長官で「事前に巧妙な準備がなされ、天体の状況にタイミングを合わせた攻撃だった」と分析した。阪神淡路大震災を人工地震と主張することはオウムに同調すると思われたためか、一般には語られることが少ない。このときは数キロ離れた断層がほぼ同時に激震したが、二〇〇八年の四川大地震、二〇一〇年のハイチ大地震でも同時揺動が観察され、以てこれらを人工地震と主張する説もあるが、これは根拠とは言い難い。
▼翻って、大正一二年九月の関東大震災を人工地震とする説は極めて少ない。一部には根拠を提示せず御託宣の如く人工地震だと主張する妄想陰謀論もあるが、これは論外。小説『帝都物語』に東京壊滅を狙う加藤保憲が大陸に渡り大連の地脈を揺さぶることで共鳴作用を起こそうとする話があるが、妄想陰謀論よりこちらの方に余程分がある。
人工地震は手段であり目的が存在する。東日本大震災にも阪神淡路にも壮大な目的があったと陰謀論者は解説するが、関東大震災における邪悪な籌策の存在を提唱する者は少ない。明治維新以降欧州金融資本と密着していた日本が、米国石油資本と協働する契機となった関東大震災にこそ重大な詭謀を感じても不思議ではない。転換点となった事件はこれを如何に利用したかで歴史が変わる。陰謀論の多くは歴史の後付け解説に過ぎない。
▼東日本大震災では地震そのものの被害は僅少で、その後の津波と福島原発事故が甚大な被害の主因となった。地震は自然災害で、その瞬時を逃さず一定方向に向け人工津波を誘起したとの説もあるが、論拠に乏しいものの人工地震説より説得力がある。大地震による直接被害は微少で二次災害が劇甚となることは疑うべきもない。
 相模湾沖を震源とするM七・九の関東大震災による死者行方不明者は、東日本大震災の約六倍にあたる一〇万五〇〇〇名に上るが、建物倒壊による圧死等は極めて尠少。直後の津波は熱海で六m、千葉館山で九・三mに達し三〇〇余名の死者を記録。神奈川の根府川駅では列車が海中に転落し一〇〇余名が死亡する等土石流被害で四〇〇余名が死亡。震災直後には朝鮮人が暴徒化した云々といった流言が乱れ飛び、相当数が殺害される事態となった。現実に棍棒で武装した朝鮮人が警備中の騎兵中尉を取り囲む事件は起きたが、混乱した大衆や自警団が朝鮮人や被差別集落を襲い夥しい数の殺戮を行なっている。内務省警保局調査では朝鮮人二三一人、中国人三人、日本人五九人が暴徒に殺されたとされるが、現実はこの数字を遥かに超えたと推測される。
▼関東大震災に於ける最大の被害は火災で、東京市内だけで焼死者数五万二〇〇○名余。地震直後に一三四ヶ所から出火、即時消火五七ヶ所、延焼七七ヶ所。地震勃発が午前一一時五八分で昼食の煮炊時刻と重なったこと、能登半島付近に台風が接近していたため関東地方に強風が吹いていたことが出火、延焼拡大に繋がったとされる。この時の火災延焼動態図はネット上にも公開されており、想像を絶する火災旋風が下町を中心に吹き荒れた状況が分かる。火災旋風とは一〇〇〇度を超える炎を伴った旋風で、秒速一〇〇mにも達するとされるが、発生条件、機構等は未解明。この火災旋風により当時公園建設中の本所陸軍被服廠跡(現墨田区横網)だけで四万人超の焼死者が出た。東京市の火災は四六時間続き、日本橋区、浅草区、本所区といった下町のほぼ全てを焼失した。
▼竈や七輪からの出火、断水による最新消火設備の機能不全、火災旋風の発生……大被害の理由は調べ尽くされているように思えるが、不明な面が異常に多い。越中島の糧秣廠を初めとして人気も火種もない倉庫、空家、小学校等からの爆発的出火発生が確認されている。本所の陸軍被服廠跡を襲った火災旋風の説明も推測に推測を重ねたもので、実体を確認したものではない。出火および火災旋風の真因として南関東ガス田が視野に入れられたことは一度もないが、素人目にもその可能性が極めて高いと推察できる。この推察の先に、悪魔の仮説に辿り着き利用した勢力・組織が存在したに違いない、との確信が湧いてくる。 (黄不動)