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  進行する日本全域米軍基地化 
       (世界戦略情報「みち」平成26年(2674)4月1日第401号) 

▼北朝鮮経済は三九号室、第二経済委そして一般経済という三部から成る。三九号室とは金日成一族の王室経済、第二経済委とは朝鮮人民軍が管理する軍経済、最後に残るのが疲弊し建て直しの目途もない一般経済である。国民は飢餓に苦しむが、軍はなお潤沢な資金を持つ。朝鮮人民軍は支那の人民解放軍と同様に国家に先んじて存在し、武力で経済活動を接収、以て存続してきた組織である。龍井茶や紹興酒が支那軍の管轄下にあることを訝る諸兄もいるが、これらを接収することで軍の財政が成立し、国家はその後に誕生した。朝鮮人民軍も同様で、当初は軍団、師団が各々財源を所有。分散した財源を一元化したのは趙明禄(二〇一〇年死去)で、それを張成沢が継承したといわれる。
 元NSAのスノーデンは北朝鮮情報はどの国の機関も全く把握していないと断言する。彼が述べる通り北朝鮮分析は至難の業だが、現状が尋常ではないことは理解できる。脱北者の証言からも北朝鮮における金日成主席崇拝の念は今なお燃え盛り、一方では賄賂汚職塗れの党、軍幹部への批判は強いという。飢えた人民を背景に若手将校が北朝鮮版二・二六蹶起に成功、これが張成沢処刑に繋がったとの説には頷ける面もある。北朝鮮公式メディアに金正恩第一書記が登場した回数は一昨年に比して昨年は三八%増の二〇九回。軍事分野での回数は減り、農業、経済視察が七一件とほぼ倍増している。容貌も金日成主席に似た第一書記が、党創設、南北分断七〇周年となる来年に、祖父の遺訓を継いで南進政策を採る可能性は棄て切れない。軍事費削減に喘ぐ米軍が在韓米軍を増強し一個大隊を追加したのは、これに備えてのものと考えられる。
▼北朝鮮が弾道ミサイル、核兵器を所有しサイバー戦に強いことは多くが認めるが、一九〇万人とされる兵士の戦闘能力は精神以外に頼るものが少ない。旧式兵器で武装した北朝鮮兵士の暴発を在韓米軍や韓国軍が怖れることは重々理解できるが、米韓が守る最前線に武器の備蓄はない。二〇一五年度に在韓米軍完全撤退が予定される中、韓国内に武器弾薬の貯蔵がない理由は数々挙げられるが、根源は韓国に対する米側の不信感に由来する。半島用に限らず極東における米軍最大の武器弾薬貯蔵庫は江田島町にある秋月弾薬廠だ。他に東広島市川上、呉市広の弾薬廠があるが、何れも旧日本軍の施設で、米軍は三ヶ所に一一万九〇〇〇トンの武器弾薬を貯蔵する。これはわが国陸海空自衛隊一年分一一万六〇〇〇トンを上回る量で、広島県が米軍最大の武器貯蔵庫と呼ばれる所以である。
 武器弾薬に限ったものではない。米国防総省が管理する軍事用燃料の最大備蓄は米本土ではなく日本の本州にある。神奈川県の鶴見貯油施設に五七〇万トン、横須賀吾妻倉庫地区に五三〇万トン、青森県八戸貯油施設に七万トン。以上三施設だけで一一〇七万トンに達し、これはわが海自の二年分の燃料に匹敵する。米軍は他に横浜や佐世保、西海に燃料基地を持つがその備蓄量は微少である。
▼八戸貯油施設からパイプラインが直結する三沢飛行場は空自と米空軍、民間が使用する。三沢の駐留米軍は防空網制圧を目的とする米第五空軍指揮下の第三五戦闘航空団だが、有名なものは基地に隣接する姉沼通信所に設置された通称「象の檻」である。世界最大級の直径四五〇メートルのレーダードームはNASの通信傍受システム「エシュロン」が使用とされるが、米国はエシュロンの存在そのものを否定する。象の檻は無線、有線、インターネット回線、FAX等あらゆる通信を全て取得し分析したとされるが、その任務は終了し近年取り壊される。象の檻に代わるのが、東京青山の地下に隠された強大な傍受システムである。青山墓地と六本木ヒルズの間には「星条旗新聞社」周辺に麻布ヘリポート等を抱える在日米軍地区が存在し、この広大な地下では象の檻を遥かに超えるとされる傍受システムが活躍し、その扱うデータ量は全米を超えると分析される。
 環太平洋地域を統括する米第一軍団司令部は座間に置かれるが、これにより米軍の頭脳、情報、燃料、武器弾薬の最大が結集し、本州は米軍の最大基地と化している。
▼在日米軍に関する話題は、普天間基地移設問題と絡み沖縄が中心となる。米軍基地の七四%は沖縄県に集中し、全国一三五ヶ所の米軍基地の二七%三七基地が沖縄に集中する。当然ながら左翼系の基地反対運動も沖縄が中心となる。この数字は米軍専用基地であり地位協定に基づく共同使用基地は含まれていない。ソ連崩壊後北海道の一部基地は自衛隊に返還されたが、未だ米軍が使用可能な基地面積は北海道が最大で、共同使用の千歳航空基地では嘉手納同様の訓練が繰り返されている。穿った見方をすると、意図的に沖縄に目を釘付けにする一方で、日本全域の米軍基地化、陸海空自衛隊の米軍隷属化が進められていると読める。集団的自衛権の行使容認問題は全くの処その延長上にある。    (黄不動)