みょうがの旅    索引 

                    

         天孫降臨は今に継続する
  ─ 相曽曽立体史観の文明論的意義 1

          (世界戦略情報「みち」平成20年(2667)11月15日第261号)

●神人「言向命」として特別の使命をもって人間に生まれた相曽誠治氏は、大嘗祭のもう一つの大きな意義について正しくそれが「天孫降臨」の再現にほかならないことを語っている。
 歴代の天皇陛下は霜月(旧一一月)卯の日に始まって午の日に終わる四日間の大嘗祭で、とりわけ卯の日の夜の儀式において天照大御神からの直接の指導を受け、その御子におなりになるという。すると、天照大御神の御孫に当たる邇々杵命が大御神の神勅を携え豊葦原乃瑞穂之国に降臨されたという天孫降臨の物語は、遙かなる遠つ世の神話の世界の話ではなくして、現代にまで代々次々に繰返し行なわれてきて、そしてさらに今後も続く現実の行事であることが分かる。
 もちろん、大嘗祭の秘儀の確かな点について我々下々の者が推測するのは畏れ多いことであるが、「天孫降臨は歴代に行なわれ、今に継続している」と確信を持って語る相曽氏の言葉だけで充分である。
●大嘗祭に現われているわが国の国体の在り方には、衝突・軋轢を繰り返す現代世界に向けた文明の未来への指針が示されていると思われる。
 本号の「世界情報分析」欄でトルコ文明に対する期待感について書かれているように、天啓宗教とくにユダヤ教とキリスト教にはその根幹に終末思想があり、「邪悪かつ人為的」な策謀を俟つまでもなく、栗原茂さんが本誌の「歴史の闇を禊祓う」において批判して止まない「ご破算に願いまする」という他律的な救済の思想がその本質にある。ユダヤ教ラビのマルクスとユダヤ人富豪エンゲルスによって案出された「階級闘争史観」もまた、この未来の一点に向けて直線的に収束する「ご破算に願いまする」終末思想の変形と称すべきであろう。とすれば、たとえ共産主義が破綻し、階級闘争史観に皆が踊らなくなり、イスラエルでその建国を大義成就への一里塚として捉えたシオニズムに対する反省が起きたとしても、ハルマゲドン幻想ともいうべき他律的な救済思想の亜種変形は形を変え品を替えて出現する。現に、「文明の衝突」と称するハルマゲドン幻想が装いも新たに世界を席巻しているではないか。
●「競わず争わず」という考えがわが御皇室のモットーであると教えられている。「ご破算に願いまする」の思想からもっとも遠いのが御皇室の在り方である。そうしたお考えの拠って来たる究極のところは、大嘗祭で代々次々に更新されてきた天照大御神の御神勅にあるのではなかろうか。
 三大神勅に表わされた天照大御神の御意志は極まるところ、地上に神国を建設せよという使命を託すことにある。相曽氏の確言に照らし考えると、この使命もまた歴代の天皇陛下に継承されていると考えるべきである。
 天孫降臨に託された使命が今に生きているとすれば、それを「立体史観」と呼ぶことにより、神との契約が未来の一点において果たされるとする終末論的救済思想との違いが鮮明になる。齋庭の稲穂を与え宝鏡をもたせ防護の神を添えて至れり尽くせりに降された大御神の御子を戴いているのがわれら日本人である。その使命は歴代に不断に更新される。現在只今、すでに神の意志は実現され、託された使命も生きている。その使命を果たすか否か、それは一に神の御子たる陛下に導かれる我々にかかっているのである。(つづく)