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 孫崎享「親米従属路線の終焉」 
      (世界戦略情報「みち」平成21年(2669)12月1日第328号) 

●去る一一月一七日、NHKラジオの夕方のニュース番組に孫崎享氏が出演され、先の米国オバマ大統領の訪日に際して行なわれた日米首脳会談を踏まえて、「日米首脳会談から見る今後の日米同盟の行方」をテーマに語られた。大統領に先だって訪日したゲーツ国防長官の圧力などから「日米首脳会談は厳しいものになる」との事前の予測があったにもかかわらず、首脳会談は成功だった。なぜなら、成功を演出する必要が双方にあったからだ、というのが孫崎氏の話の切り出しである。
 政治から経済・文化などあらゆる分野において親米従属路線が世の大勢を占める現下のわが国において、かかる路線の危うさに警鐘を鳴らす孫崎享氏が公共放送たるNHKのラジオ番組に出演されたことそのものが、大いなる変化の象徴と言ってよいのではないか。しかも、大勢の出演者が一堂に会し、ほんの申し訳程度の短いコメントすらズタズタに寸断されて文句も言えないテレビと違って、ラジオではかなり纏まった話ができる。今回の孫崎氏の話も、解説委員による質問に答える形式を取りつつ、間に交通情報など挟みながら前後併せて約三〇分くらい時間が割かれていた。
●「チェンジ」を叫んで大統領に当選したオバマの考え方と政治環境が日米首脳会談の成功を必要としたと同時に、わが国の方も永年の自民党政権に替わり政権の座に就いた民主党として従来の路線からの「チェンジ」を演出する必要があった。それで首脳会談は成功との運びになったのだが、さて問題はこれからだと孫崎氏は言う。これからも米国は当然のように米国の戦略との一体化を日本に迫ってくる。一方日本は米国の戦略との完全な一体化から脱しようとする。すると、米国からものすごい圧力が日本にはかかってくる。どのようにこの圧力を凌いでいくかが問題だ、と。
●米国の対中政策は、理論的には協調と対峙という二つの選択肢があるが、現実問題としてイラクとアフガニスタンで戦争している米国に対中対峙政策は採りえない。つまり、米国としては対中協調路線しかない。米中が軍事戦略で互いに手を握る時代に入っている。
 そこで、孫崎氏は言う。
「こうした中で、日本が米国の注文を何でも聞いていれば米国が日本を大切にしてくれた時代は過ぎ去りました。日本は厳しい日米関係、進化する米中関係、この中にあって何をすべきかを真剣に考える時期に入っています」 
 すなわち、もはや「親米従属路線」は日本の選択として決して有効ではないと孫崎氏は断ずるのである。
●これからの日本は、何事においてもはじめに「親米従属路線」ありきという考えではやっていけないということだ。すべて、是々非々でやるしかなく、どうしてもその根幹には日本独自の戦略が不可欠となるのである。その戦略を如何にして構築するか、それが喫緊のわが国の課題なのである。そのためには、「親米」などという生ぬるい美辞を隠蓑にして独自の国家戦略を採ることから逃げてきた従来の在り方から一日も早く脱却しなければならない。しかも、日本がこの道を進むならば、米国から激甚の圧力がのしかかってくることは必定である。だが、かんがえてみれば、そんな事態は国際関係の場裏では当たり前なのである。われわれは孫崎享氏と共にしっかりと腹に刻んでおこう。さらば親米従属路線、さらば形だけの「平和国家日本」と。