みょうがの旅    索引 

                    

  トヨタ問題と日米同盟の行方 
      (世界戦略情報「みち」平成22年(2670)3月1日第311号) 

●トヨタ自動車の製品に欠陥があるのではと疑われ、米国議会下院の公聴会に豊田社長が招致されて二月二四日に証言を行なった。すでにこれに先立ち、トヨタは問題とされた数車種について大規模リコールを日米で実施しているが、問題は今日に至るも具体的な欠陥が何ら指摘されていないにも拘らず、いわば「トヨタ叩き」のような現象が突然噴出したことである。トヨタ車に欠陥があり、その欠陥が原因で事故が起こったのであれば、製造責任を問われるのは当然である。だが、まだ欠陥は見つかっていないのだ。
●原因がはっきり特定できない内からトヨタを悪玉と決めつけ囂々たる非難を浴びせるという遣口は、長い間友好支援関係を続けてきたイラクのサダム・フセイン大統領をある日突然悪者に仕立て上げた手口とそっくりである。なぜサダム・フセインは悪者とされたのか、今日に至るもその口実となった「大量破壊兵器」は見つかっていない。「悪の枢軸によるテロとの戦い」なる世界戦略の下に、米国はイラクに軍隊を派遣することを各国に求めて多国籍軍を編成して、イラクに攻め込んだ。
 イラク戦争を仕掛けた意図が喧伝されたような「大量破壊兵器拡散防止」などになかったことは今日では明らかだ。イラク戦争を強引に仕掛けたネオコンの狙いが「大イスラエル主義成就」と「中東大混乱」にあったことは本誌の「世界情報分析」で何度も指摘してきた。
●つまり、マスコミを通じて喧伝する大義名分と米国の意図はまったく別物であることを警戒しなければならないのである。これまでの米国の過去の手口がそう教えているの。その意味で、「田中宇の国際ニュース解説」(会員制電子メールマガジン)二月二七日号が「東芝機械ココム事件」(一九八七年)を引き合いに出しながら、米国の外交戦略策定の奥の院とされる外交問題評議会(CFR)の発行する機関誌「フォーリン・アフェアーズ」最新号に掲載された「(日米同盟は)いまだに得策なのか?」に注目しているのは、非常に示唆に富んでいる。同誌には、「日本企業が米国で製品を売らせてもらうことが、一九五二年のサンフランシスコ条約以来の日米同盟の経済面として存在する」と指摘しているというのだ。
●今回の「トヨタ叩き」の本質は、この論文を参考にすると、かなり明確になってくる。すなわち、トヨタ車に欠陥があろうが無かろうが、問題ではないのだ。
 トヨタ問題は、「これからは米国で日本製品を売らせないぞ」という米国のシグナルだと見るべきなのだ。そして、こうした経済面での米国の態度の変化は、米国が日米同盟をもはや必要としないというシグナルでもある。経済問題は軍事同盟の一環だというのが米国の本音であって、自由主義経済や市場原理を高唱するのは他国の市場を喰いものにする時の、いわば綺麗事に過ぎない。日米同盟を必要としない米国の関心はもっぱら支那に向けられているが、およそ歴史に鑑みる限り、支那に対する米国の熱い恋慕が報われた験しはない。
●もはや米国が日米同盟を必要としないのであれば、米軍沖縄基地をどこに持っていくかで議論錯綜しているわが政界などは見当外れも甚だしいと言うべきである。また、「これからは日本製品を米国で売らせない」というのであれば、買って頂かなくても結構だ、という経済体制を一日も早く築き上げることが何よりの急務となる。