みょうがの旅    索引 

                    

    「原発マフィア」の構図  
      (世界戦略情報「みち」平成23年(2671)7月1日第341号) 

●イタリアのトリノに行ったことがある。冬季オリンピックが開かれて荒川静香がフィギュアスケート競技で金メダルを取ってから五年経つが、それよりもだいぶ前の話だ。郊外のスポーツ施設の壁に「NO MORE HIROSHIMA」とペンキで大書落書きされていたことを憶えている。被曝国日本はイタリアでも懸念されていた。
 原発が原子爆弾の被曝国の日本で陽の目を見るということになれば、世界中で原発ビジネスは一挙に伸びることになるだろう。われわれ日本人がまったく与り知らぬところで、世界で唯一の被曝国である日本の利用価値は、大いにあったのである。そういう悪魔の笛に踊らされ、率先して原発推進の旗を振ったのが読売新聞だった。
 先に紹介した昭和三〇年正月元旦号の読売新聞の社説は、まさに象徴的である。

 原子力は……輝くばかりの未来性を暗示する時代に来ている。広島、長崎、そしてビキニと、爆弾としての原子力の洗礼を最初にうけたわれわれ日本人は、困難を押し切ってもこの善意により革命達成の悲願に燃えるのは当然だ。

 原発利権の甘い香りに気もそぞろ、何としても国民に白を黒と言いくるめなければと、欲望に駆られた焦りさえ滲み出る下司の文章である。
 悪魔に自ら進んで迎合するような、この文章を書かせたのは読売グループの総帥正力松太郎と柴田秀利であろうが、正力が原子力委員会の初代委員長に就くのは当然として、柴田秀利は「ニュース解説者」なる日本初の職掌を与えられ、NHKでも「輝くばかりの未来性を暗示する」原子力の安全性について御託宣を垂れ流すのである。その功あってか、柴田は「日本テレビ放送網株式会社」の創設にも参画し取締役に就任することになる。
 政治家では世界権力の番頭役であるヘンリー・キッシンジャーによる洗脳を受けた中曽根康弘が原子力利権の元締めとなる。因みに、キッシンジャーは主に米国を舞台に活躍したが、「英国の女王陛下こそご主人さま」であると自ら公言していた。タヴィストック人間関係研究所で世界権力の使徒としての洗脳訓練を受けたプロである。
●こういう輩が旗を振り音頭を取って出来たのが原発なのである。「あなたはそれでも福島原発のニュースを読売新聞で読み、日テレで観るのか」と、巨人ファンには問い糾したいのだが、原理主義を振りかざせば、朝日も毎日も罪は同じで、詰るところ、読むに価する新聞も観るべきテレビもわれわれにはないと諦めるしかない。
 それでもテレビを観ていたら、東電の新しい社長西澤俊男が福島県の村長さんたちに頭を下げている光景が流れていた。東電の当事者責任はもちろんある。
 そもそも日本で原発を推進した正力も柴田も中曽根も、まさしく天誅に価する。だが、しばし待て! 問題の本質はこんなところにはないのだ。彼らは日本側の積極的協力者であり、すべては海外でセットアップされて、日本に持ちこまれたものであるということを忘れてはいけない。
 東電の社長という役職など、「原発利権」という世界規模の構図の中では、せいぜいでも下っ端の実務担当者という役どころであろう。米国は原発のお古を日本に押し付け小遣い稼ぎをした。フランスは日本の原発から出る使用済燃料の再処理を受け持ち、おこぼれに与っている。
 しかし、三・一一事件のどこにも登場しない英国こそが「世界原発マフィア」の総元締めであり、元凶なのだ。