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 佐々木良昭「世界はトルコを中心に回る」
            (世界戦略情報「みち」平成24年(2672)4月1日第357号) 

●尊敬する佐々木良昭氏の本が出た。『これから50年、世界はトルコを中心に回る』という本である。副題に「トルコ大躍進7つの理由」とある。著者は本書でトルコがすでに中東の盟主として揺るぎない地位を確立し、まもなく世界の盟主になるだろうと大胆な予測を述べる。
●人口が七五〇〇万人のトルコは二九歳以下の若者が何と全人口の約半分を占めるというから驚きである。昨年七月時点の失業率は九・一%、二〇一七年までのGDP成長率予測は六・七%、しかも「ボスポラス海峡横断トンネル」の開通や「第二ボスポラス海峡」(二〇一二~二三)の開鑿によるインフラの大幅な改善と整備が見込まれ、トルコは今まさに一大飛躍を遂げようとする前夜にある、と著者は説く。
●トルコはかつて欧亜に跨る大帝国として現在の共産主義支那を上回る民族を六〇〇年以上にわたって統治した経験をもつ。オスマン帝国は覇権大国として珍しく比較的に公正な統治を行なったという評価が高いが、著者によれば、その統治を支えた「公正」と「奉仕」のイスラムの教えは現代トルコを率いる四人の指導者にも骨の髄まで染み込んでいるはずだ、という。エルドアン首相、ギュル大統領、ダウトゥール外相についての紹介は簡潔で分かりやすい。それに「ギュレン・ムーブメント」(ギュレン運動)を創始したフェットーラ・ギュレン(一九四一~)の思想・業績が、本人と著者が会見した時のエピソードも含め紹介されているが、これは本邦初の貴重な報告ではないかと思われる。
●トルコと日本の親密さには何か台灣の親日ぶりに匹敵するような特別のものがあり、明治二三年のエルトゥールル号遭難事件や、イラン・イラク戦争中の一九八五年にイラン在住の邦人二百数十名を救出してくれたトルコ航空機の例を挙げるまでもなく多くの人々が経験するところ。
 著者はその理由を祖先が同じだからではないか、と述べている。その共通の祖先とは、六世紀中葉に支配民族柔然を倒して建国し八世紀にかけて歴代支那王朝に対峙したトルコ系遊牧騎馬民族「突厥」である。突厥が日本の祖先だと聞けば、唐突の感を抱く人もいようが、建築家渡辺豊和『扶桑国王蘇我一族の真実』や栗本慎一郎氏などの所説を踏まえると、興味深い提言である。さらには、トルコ系諸民族やモンゴル系民族を包摂する「ツラン民族」「ツラン語族」というより広範な考えを授用すると、トルコと日本の親密さの理由が腑に落ちる感じがする。著者は「ツラン」についてはさらりとごく簡単に触れているだけだが、現代と将来のトルコを語ってツランに触れた点を高く評価したい。
●先の三・一一東日本大震災に際してトルコがいち早く援助に駆けつけてくれたことも著者は忘れていない。早くも震災翌々日の三月一三日午前中に成田に到着、翌一四日に被災地に入り何が必要とされているか実地調査して、一七日にはトルコに帰国、募金を呼掛けると数日間で二〇〇〇万円近い義援金が集まった。それで毛布・米・油・卵・菓子・粉ミルク・紙おむつなどすぐにも必要な物資を買いそろえてトルコは被災地に届けてくれた、と紹介されている。