みょうがの旅    索引 

                      

 落合莞爾「貯蓄は株式と土地に振り分けよ」 
               (世界戦略情報「みち」平成24年(2672)4月15日第358号) 

●落合莞爾著『金融ワンワールド──地球経済の管理者たち』(四月三〇日、成甲書房刊)という本がまもなく書店に並ぶ。成甲書房の田中亮介氏のご厚意で出来たての一冊を配本前に頂戴した。忝いことである。
 総頁数二六〇頁という一冊に凝縮されたこの本の内容をそれぞれのテーマ毎にさらに敷衍(ふえん)するとしたら、一〇冊を以てしてもなお足りないかも知れない。本書の随所に「本稿では立ち入りません」とか「本書では割愛します」と断り書きがあるのはこのためで、いわば本書はこれから展開されるであろう落合莞爾著作集の総論に相当する著作なのである。
 巻頭言の限られた紙幅でまとめて紹介するのはどだい無理な話である。そこで、本書第Ⅲ部「通貨経済の終焉」から抜き出して、その結論の部分だけを紹介しよう。
 第Ⅲ部の扉書き(一九四頁)には、こう書いてある。

 金融ワンワールドにとって、国家から金利をタダ取りするところに信用通貨システムの存在意義がある。したがって、これから到来するゼロ金利社会では、信用通貨システムは形は残してもその方向が変わる。企業・財団における経営無責任化の進行が、あらゆる経営行為に保険利用を要求し、それを受ける胴元業が金融資本の中心業務となる。バクチと保険は裏表だから金融市場はまさにカジノとなるのである。第Ⅲ部では、一般国民の貯蓄は株式と土地に振り向けられるべきことを明らかにする。

 一般国民はちょっとした土地を買えるくらいの貯金があるのが普通だから、落合氏の助言に素直に従った方が賢明だと思われる。一般国民ではあるが貯金がないという特殊事情にある私としては、せっかくの金言も活かしようのないのが残念だ。
●落合氏は本来ならば、あちら側、すなわち本書にいう「地球経済の管理者たち」の側に迎えられるはずの人だった。それがほんのちょっとしたはずみというか、きっかけというか、違和感というか、何らかの理由でこちら側、すなわち彼らに管理される一般大衆の側に止まった。栗原茂の引き合わせにより御厚誼を忝くするようになり何度か親しくお話を聞く機会に恵まれた私としては、それこそが落合氏の天命であると思われる。
 いま、落合完爾氏は『月刊日本』誌に「疑史」を『ニューリーダー』誌に「日本近代史の真相──陸軍の裏側を見た吉園周蔵の手記」を毎号連載しているが、ゆくゆくは野村證券の社長に予定されていたにも拘わらず、落合流に言えば、近代日本の在り方の中に「コスモポリタン」の匂いを嗅ぎとってその研究を以て自らの天命と自覚された節がある。その真摯な学究の姿勢は常日頃敬仰措く能わざるところである。
●あるとき、連載中の「吉園周蔵手記」をまとめた暁には、周蔵手記原本を公刊して欲しいとお願いしたところ、「もとよりそのつもりだが、原本校訂と刊行には金が掛る。公刊できれば、周蔵遺族に印税が行くようにしたい」と言われた。実に落合氏は公正の人でもあるのだ。本稿を読んで少しでも興味をもたれるならば、ぜひ書店で購入して頂きたいものである。
 最後に私事ながら、本書の八八頁に拙著『憎悪の呪縛──一神教とユダヤ人の起源』を紹介して頂いた。敬仰する落合氏の著書の中で採り上げられたことは大へん名誉なことであり、心から感謝する次第である。